Epilogue 外国の略奪者

 ぺら、ぺら。

 ローテーブルに広がる紙の資料を捲る。

 一〇を超える枚数の資料が束として床に散らばり、黒い文字がシャンデリアの光に照らされている。


「ふむ……今年は意外と多いな」


『レベリス』の主はカウチに寝ころびながら、ため息を吐く。

 この資料に書かれている内容は、日本に進出しているもしくはする予定の魔導犯罪組織に関するものばかりだ。

 狙いは様々だが、とりわけ日向の無魔法を狙う組織にはこうして自らの目を通してチェックしている。


『レベリス』にとって、日向は誰にも奪われてはいけない大切な存在。

 もし他の組織の手に落ちてしまえば、その時点で自分達が掲げ続けた『目的』が成就しない。

 そうなる前に、可能性の芽を潰さなければならない。


「だが……あいつの危機管理のなさはどうにかならないのか……」


 いくら狭間とはいえ、敵である自分の前に現れては、多少の警戒心を持つも呑気にお茶を楽しむ姿を見るたびに頭痛がしてしまう。

 もちろんそんなのを出した自分が原因なのだが、それでももう少し危機感を持てと小一時間ほど説教したくなる。


 もう一度深いため息を吐きながら、手に持っていた資料を放り投げる。

 バサッと床に落ちた音を聞きながら、手探りで新しい資料に目を通す。

 ぺら、ぺらと再び紙を捲る。


 いくら必要なこととは言え、同じ作業を数時間も繰り返していると、さすがに飽きてしまう。

 これが終わったら一息つこうと考えた直後、あるページで紙を捲っていた手を止める。

 そのままバネの要領で起き上がると、主は忌々しそうに舌打ちをする。


「あの女……とうとう動きだしたな……」


 自分の中にある記憶の中では、この資料に書かれている女性が率いる魔導犯罪組織は厄介だ。

 ボスである女性が生んだ実子は全員幹部な上に、どれもIMFで一級魔導犯罪者として認定されており、組織の危険度も自分達の次に危険。


「……これは私も出張らないといけないかもしれないな」


 資料を片手に呟く主の身体から、白色の魔力が放出される。

 わずかにしわを作ったその資料には、『世界唯一の無魔法使い・豊崎日向の確保』と確かに記されていた。

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