進む物語と〝原典〟

つづき

 物語は進んでいく。

 チクタク、チクタクと鳴る時計のように。無情に、静かに進んでいく。

 パラパラと捲られるページは、物語を進めた七人の痕跡を残した。



 唯一無二の力を持った魔導士として目覚めた少女。

 同じ魔導士なのに同族を嫌うも、冷たい孤独の中から救い出した同族の少女に恋する少年。

 心優しく己の恋に向き合おうとする親友。

 夢を目指しながらも、恋をするための一歩に踏み出せないもう一人の親友。

 雷竜の力を宿し、己が想いを貫こうとする気高い王子。

 彼らの行方に付き添い、己の抱く感情に戸惑う白き剣士。

 そして、そんな彼らを優しく見守る最強の一角として君臨する教師。



 彼らは時に笑い、時に悲しみ、時に怒り、時に戸惑い、時に悩み、時に涙を流した。

 多種多様な感情を乗せた足跡は、白紙の物語を着々と彩らせていく。



 だが、どんな物語にも〝原典〟がある。

 何がきっかけでこの物語が始まったのか、何によってこの物語が綴られるのか。

 誰も、その本当の『はじまり』を知らない。



 それでもこれだけは断言しよう。

 〝原典〟は存在する、と。



 確かに〝原典〟は存在している。

 けれど誰もその内容を知らない。



 それは当然だ。

 何故なら〝原典〟は、本当なら明かされることのない秘密の物語なのだから。



 だけど、その〝原典〟が暴かれようとしている。

 他の誰でもない、紅き叛逆者の手によって。



 そこから先に書かれているものは、一体どんなものなのだろうか?

 それはまだ、誰一人として知らない。



 それでも尚、彼らは足を止めない。


 たとえその先に想像絶する絶望と希望が待ち受けていようとも、自ら望んで進んでいく。


 己の揺るがない信念と想いを持ち、『物語』という名の道を歩き続けるのだ――――。



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