第87話 恐怖の時間は巻き戻る

 先ほどまで女装コンテストをしていたステージでは、次の出し物である『ミスター&ミセスコンテスト』が開催した。

 ステージ上ではイケメンと美少女と名高い生徒達が並び、衣装もスーツやドレスと煌びやかなものだ。


 女装コンテストとはまた違う賑わいの端で、日向達は女装コンテストの優勝トロフィーを誇らしげに持つギルベルトと合流していた。

 ギルベルトはすでに制服姿に戻っており、彼の女装姿を見た者達は『あれ? あの袴美女はあの人だっけ?』と首を傾げている。


「ふふん、どうだ。一位だぞ」

「そうだな、一位だな」

「なんだその反応は。ここはもっと褒めるところだろ?」

「いやこれが今やってるミスコンなら褒めてもいいけどよ、お前が出たの女装コンテストだぞ? これをどうやって褒めろっつーんだろ、つかなんであっちでなかったんだよ」


 悠護の反応は至極当然のものだ。

 ギルベルトは王子の名に相応しい風格と容姿を併せ持っており、実際問題ステージにいるイケメン達よりも遥か上を行く結果を得られたはずだ。


「ふん、あんなものすでに結果が見えているただの児戯だ。ならば結果が分からぬこっちに出た方が面白いと思ったんだ」

「あー、確かにあの女装コンテスト結構レベル高かったしなー」


 実際見た女装コンテストでは、各々が持てる力を使って女と間違うほどの姿を見せていた。

 たとえ樹がどんなに手を尽くしても、それより上を行く参加者がいる可能性があったのも事実。


 だからこそ、ギルベルトは女装コンテストに出場したのだ。

 顔だけで結果が決まるミスコンではなく、容姿全てを使う予測不能な女装コンテストに。

 同い年なのに自分達より大人な考えを持つギルベルトには、いつもながら感心してしまう。


「なあ、このあとどうする? まだ時間あるし、今体育館でやったるお化け屋敷にでも――」

「きゃあああああああああっ!!」


 樹がパンフレット片手に行き先を提案した直後、悲鳴が上がる。

 破壊音とガシャガシャと耳障りな音が木霊し、恐怖が周囲に伝染する。

 京子と亮は突然の騒ぎに戸惑うが、日向達の反応は素早かった。


「京子、亮くん! 二人は校舎の方に走って! そこにいけば陽兄達がなんとかしてくれるから!」

「え、ちょっと日向!?」


 戸惑う親友の声を聞きながら、日向は悠護達と共に騒ぎの中心へと走る。

 屋台があった場所で、紅いローブを着た魔導人形達が屋台を破壊したり、魔法を使って生徒や一般客に攻撃していた。

 もちろん生徒や教師の中には魔法で応戦したり、怪我をした一般客を救助したりと手を尽くしている。


「あいつら……まさか『レベリス』の仕業か!?」

「十中八九そうだろう! 奴ら、本格的に活動を始めるつもりらしいな!」


 ギルベルトが全身に雷電を纏わせた直後、曇り空一つない空から雷が落ちる。

 落ちた雷は全て魔導人形達に直撃し、煙を出しながら倒れて行く。その間に救助のスピードを速めるが、どこからともなく魔導人形が現れる。

 再び攻撃を始める魔導人形だが、その内の一体が後ろからの攻撃で倒れた。


「くっそ、何がどうなってやがんだ!?」

「さあね。……でも、倒しがいのある敵が来たってことは確かだね」


 日本刀型の魔導具を持つ怜哉が、身に覚えのないオレンジ髪の青年と一緒に魔導人形を斬り倒す。

 その間に紺色の髪をした男性が、空中に水弾すいだんを生み出し、そのまま魔導人形の眉間に向けて発射させる。

 手際のいい魔法に思わず見惚れていると、悠護が目を見開いていた。


「紺野さん! それに橙田も来ていたのか!」

「え、もしかしてあの人達七色家関係者なの?」

「ああ、青島家と黄倉家の分家出身者だ。今は魔導犯罪課にいるって話は聞いてたが、まさかここに来ていたとはな……」


 そう呟きながらも投擲剣を生み出した悠護は、魔導人形の心臓部分に向かって投げる。

 投擲剣は心臓部分に直撃する。動力源となる魔石が埋め込まれた装置は、コードが引きちぎられ、剣先に突き刺さった状態で体内から出てきた。


 日向は《アウローラ》の引き金を引いて魔力弾を放つと、琥珀色の光弾は魔導人形の体に穴を作る。

 その間にも樹が殴り倒し、心菜がリリウムの仕込み杖で一刀両断させていくも、魔導人形は増えるばかりだ。


「ああくそっ、これじゃあキリがねぇぞ!」

「でも、一体どこから――……!?」


 樹の苛立った声に心菜が何か言いかける前に、彼女の視界の端で赤い何かが入った。

 すぐさまリリウムはそちらに呼び寄せた直後、金属同士がぶつかり合う音が響く。


「なんだっ!?」


 近くでその音を聴いた樹が振り返ると、そこにはリリウムが赤い魔物の剣を仕込み杖で受け止めていた。

 真紅の鎧姿の女性型の魔物だ。白銀の髪を靡かせ、額から生える二本の角が目を引く。鎧の間から火の粉が舞い、アーモンド形の赤い瞳が無機質にリリウムを見つめる。


「――あら、インフェルノの攻撃を止めるなんて。この時代の魔物使いも中々ね」


 カツン、カツンと靴音を立てながら一人の少女が近づいて来る。

 黒いダブルコートの上に紅いローブを羽織り、氷のように冷たく整った顔の右目は白い縫い目があるだけのシンプルな黒い眼帯で覆われている。

 キャラメル色の髪を靡かせた少女は、コバルトブルーの瞳に敵意を宿しながら日向達を睨みつける。


「……貴様、『レベリス』の幹部か」


 ギルベルトがローブにあしらわれた白いレースを睨みつけると、少女はローブの裾をつまむとお辞儀をする。


「初めまして。私は『レベリス』の幹部が一人、ルキアと申します。この度、私達が表舞台に出ることをお伝えすべく参上いたしました」


 ルキアはまるで事前に書かれていた台詞を一言一句漏らさず伝え、お辞儀を解く。

 解いたタイミングでインフェルノと呼んだ魔物がルキアのそばに戻る。夕暮れに染まる空と相まって儚げな雰囲気を纏わせる彼女を見ていたが、橙田がぎょっと目を見開く。


「『レベリス』だと!? あの『レベリス』か!? 数百年前の『落陽の血戦』を引き起こしたっていう噂の!? ヤベェ、マジで捕まえねーと!」

「はいはい落ち着きなよ、君一人であいつら捕まえられると思ってんの? これだから単細胞は嫌いだよ」

「はぁあ!?」


 日本刀を構えて捕まえる気満々だった橙田を怜哉が冷たい口調で諫めると、彼は顔を真っ赤にしながら睨みつけた。

 紺野はルキアの一挙手一投足に注目しており、たとえ小さな動きでさえも見逃さないように目を凝らす。


「随分と丁寧なご挨拶だな。……一つ聞きたいけどよ、五月の合宿と七月の事件、あれはお前らも関わってんのか?」

「ああ、あの事件ね。そうね、確かに私達は少し関わったわ」

「はっきりと答えるんだな」

「隠すことではないからね」


 悠護の質問にあっさりと答えたルキアは自身の毛先を指先で弄る。

 あまりにも余裕かつ堂々とした態度を見て、橙田は苛立たしげに日本刀をルキアに向けた。


「けっ、スカした態度しやがって。テメェ、自分が汚ねぇ犯罪者だって分かってんのか?」


 吐き捨てるように言った橙田の言葉に、ルキアの顔から表情が消える。

 喜怒哀楽全てが無に帰したその顔は、日向の目には泣くのを我慢する子供のように見えた。


「……私だって、好きで犯罪者になったわけじゃないわよ」


 ぽつりと小さく呟いた言葉は日向達には微かにだが届くも、橙田には一ミリも届いていなかった。


「まあいい、テメェの目論見もここで終わりだ。俺が直々に引導を渡してやらあ!」

「っ! 待ちなさい、灯くん!」


 強化魔法で身体能力を向上させた橙田が跳躍し一気に距離を詰めるが、焦った表情を浮かべた紺野が制止をかける。だが、一足遅かった。

 瞬間、橙田の体は横から襲い掛かる力で呆気なく吹っ飛んだ。


 受け身もロクに取れないまま枝みたいに転がっていく橙田。

 呻き声を上げながらも立ち上がれず蹲る彼の体には、火傷や焦げた跡が出来ていた。微かに煙を上げる姿を見て、日向の視線がルキアに行く。

 

 日向の予想通り、ルキアのそばにいたはずのインフェルノは橙田がいた場所に移動していた。

 恐らく非物質化で姿を消した後、物質化して彼を殴り飛ばしたのだろうが、それにしては切り替えが早すぎる。


「あまり私を甘く見ないでちょうだい。私の力は、現代の魔導士よりも上おいっている」


 そう言ったと、ルキアはおもむろに自身の右目を覆っていた眼帯を外した。

 するりと白い頬から流れる眼帯を大切そうに握りしめながら、ルキアは眼帯の下でも閉じていた右目の瞼をゆっくりと持ち上げる。


 露わになる彼女の右目を見て、日向だけでなくその場にいた全員が言葉を失う。

 左のコバルトブルーの瞳とは反対に、彼女の右目は白目だけでなく黒目部分も真っ白になっていた。ただ虹彩の中心だけは――血よりも禍々しい赤い光を宿す六芒星の形をしていた。



☆★☆★☆



「その目……まさか、自身の肉体の一部を『召喚具』にしたのですか!? それは二〇三条約違反ですよ!!」


 紺野が信じられないと言わんばかりに叫んだが、ルキアは何も言わず失笑するだけ。

 禍々しい光を放つ瞳を見て、日向は授業で習ったことを思い出す。


 魔物との契約には、魔物のベースに必要な媒介と召喚の鍵となる召喚具が必要となる。

 だが数百年前――まだ魔法が世界に浸透する以前は召喚具というものは存在しなかった。召喚具が確約したのは第一次世界大戦に入った頃で、それ以前は自身の肉体の一部を〝楔〟として刻み、魔物を使役していた。


 だが魔物との契約のため肉体に〝楔〟を刻むには、〝楔〟を刻み切るまで長時間の苦痛に耐えなければならず、仮に刻めたとしても〝楔〟の位置を把握すれば簡単に破壊できるという魔物使いにとっては大きなデメリットしかなかった。

 このデメリットをなくすべく、第一次世界大戦では魔物使いは試行錯誤の末、現代にも伝わる方法を生み出したと言われている。

 その結果、肉体の一部を召喚具にすることは二〇三条約によって禁止にされた。


「確かに今は禁止されてるみたいだけど、昔はこんなの違法じゃなかった。それに〝楔〟の方が召喚具よりも強大の力を手に入れられる。当然よね、〝楔〟は直接魔核マギアと接続されているし、魔力の分配もそっちよりも効率的だわ」

「そうだとしても! 〝楔〟はこの世に存在してはならないもの……あなたのしたことは、法では許されないことだ!」


 紺野の言葉に、ルキアの顔が憤怒で歪む。

 その怒りは紺野だけではなく、別の何かにも向けられていた。


「そんなの、悪事を働いたことのない人間が言った綺麗事だわ。そもそも、私は自分の意志で〝楔〟を手に入れたわけじゃない。魔法という叡智に魅了され狂った人間どもに無理矢理刻まれた。

 辺鄙だけど平穏で小さな村で暮らしていた魔法とは無縁の村娘だった私を……連中は村ごと焼き払い、家族と村人を殺し、幼かった私を含めた子供を強引に連れ去った! 魔法への探求心のためだけに、仲のいい友達が実験体になって無残な死体になるところを、冷たい檻の中から何度も見た! 

 不味いご飯を無理矢理口に突っ込まされて苦しくて……言ったことを聞かなきゃ骨が折れるほど殴られて蹴られて……中には初潮すら来ていない女の子や子供を産めないはずの男の子を凌辱して愉しんで……いつ自分の番が来るのか怯える日々がどんなに恐ろしかったか!!」


 ルキアの口から吐き出される言葉は、全て彼女自身が己の目で見てきた過去の光景。

 凄惨の言葉が陳腐に思えてしまうほどの話に、心菜は真っ青な顔を両手で口元を覆い、ギルベルトは嫌悪感で顔を歪ませる。


「実験体の順番が私に来た日はとてもよく覚えている……。〝楔〟を刻むために全身を拘束されて、右目を意識があるまま無理矢理引っこ抜かれた。あの時は血が吐くほど泣き叫んだわ……麻酔すらかけてもらないままだったんだから。その右目を〝楔〟にできた途端、あいつらはその目を私に植えつけた。

 最初は雷と針が同時に全身を襲う痛みで何度も発狂して……暴れないように両方の手首と足首に枷をつけられたまま、二ヶ月も牢の中で過ごした……。右目が体に馴染むと今度は魔物を……インフェルノを完全に使役させるための特訓をさせられた。

 私が生きるために、こんな目に遭わせた連中に復讐するために従順なフリをして……連中に一人前の魔導士として認められた日に、私は外道共も実験体になった子達も全員焼き殺し、私はようやく自由になったわ。……自由になるのに、何年かかったと思う? たったの一年よ? 地獄のように時間が遅く流れたのを感じたのは、きっとあの頃だけよ」


 五年。普通に生活している人にとって、長くも短くもないはずの時間を、彼女は文字通りの地獄で過ごした。

 語られる過去を想像しただけでも吐きそうな気持を抑えるに必死で、慰めの言葉さえ出てこない。

 紺野もルキアの言葉に何も言えず、ただただ口を噤んで黙ることしか出来なかった。


「……だから私は誓ったの。魔法によって歪められた世界を壊すって。そのためなら、神にさえも叛逆してみせるって! だから――まずは、この学園を私の力で破壊する!! 私達『レベリス』が動き出すことだけではなく、この世界がどれだけ間違いだらけで歪んでいるのかを証明するために――!!」


 ルキアの右目の虹彩の光が強くなる。

 禍々しい赤い六芒星の輝きは、インフェルノの鎧の間から溢れていた火の粉が増加していく。

 インフェルノの持っていた剣が弓へと形を変え、火の粉は赤い矢へと変わる。その矢が頭上へと向けられているのを見て、悪寒が全身を走る。


「インフェルノ! あなたのその力で、この土地の全てを焼き尽くしなさい!!」

「っ! 待――!!」


 ルキアの命令を聞いて日向はすぐに制止をかけるが、インフェルノの方が動きが早かった。

 バシンッ!! と弓の弦の音が響く。弓から発射された矢は空へ向かうにつれて輝きを増し、やがて光となって砕け散る。

 光として砕け散った矢は百を超える火の玉となり、地上へと降り注ごうとする。


 日向の脳裏に学園が火の海になる光景が浮かぶ。無魔法で無効化しようとするが、その間に火の玉が地上に落ちるのは時間の問題だ。

 近くで悠護達が火の玉を消そうと水魔法をかけようとした瞬間、火の玉が空中で停止した。


「何!?」


 急に動きを止めたことにルキアはすぐさま周りを見渡す。

 ここで動いているのは、日向、悠護、心菜、樹、ギルベルト、怜哉だけ。紺野と橙田だけでなく聖天学園にいる者全てがまるでテレビのように停止していた。


「まったく、僕がいるのに学園を火の海にしようなんてバカなこと考えるねー」


 誰もが状況を読み込めない中、呑気な声が静止した世界で大した声量でもないのにしっかりと耳に届く。

 声をした方を向くと、そこにはダボダボの白衣姿の管理者がニヤニヤと真意が読めない顔で立っていた。そのそばには陽も槍型専用魔導具銀翼を持って待機している。


「やはり……貴様の仕業ね、【時間の支配者テムプス・プリンケプス】!」

「そうだよ。この聖天学園は僕の領域。ここでおいたをする子を放っておくわけないでしょ?」


 睨みつけるルキアを管理者はクスクスと笑う。

 管理者はダボダボの裾から手を出すと、パチンッと指を鳴らす。鳴らした直後顔が時計になっている紳士姿の魔物が出現し、それと同時に陽が《銀翼》を地面に突き刺す。


「君らが戦うのはいいけど、さすがに学園敷地内はダメだよ。戦うならでやってよ」

「裏……? まさか――!?」


 ルキアが何かを察した直後、陽がパンッと両手を合わせる。


「学園のコピー完了。対象の設定を完了。――構築せよ、『異界アリア・テッルレ』!」


異界アリア・テッルレ』。それは空間干渉魔法の中では上級に入る魔法だ。

 現実の世界の一部を構築し、切り離すことで生み出される結界術。『神隠し』と呼ばれる現象を基にして生み出されたこの魔法は、術者が設定した対象を強制的に構築した別世界に飛ばす。


「うわわっ!」

「くっ――!」


 対象と設定されたのは、この場で動いている日向達とルキア、それから術者である陽。

 日向達は体が引きずられるを味わいながら、別世界へと飛ばされていった。



 強制的に別世界へ飛ばされた日向達を見送った管理者は、恐怖に怯えて逃げる生徒や一般客、それから攻撃をしかける魔導人形を見つめる。


「やれやれ、これじゃあせっかくの学園祭が台無しだ」


 そう言ったと管理者は首から金色のチェーンを通した懐中時計を取り出し、その場でくるくると回る。


「くるくる、くるくる。逆に回れ、時計の針よ。恐怖に彩られた時間を、笑顔溢れる時間に戻しておくれ。クロノス、僕の誇り高き魔物よ。我が願いを聞き届け――」


 歌うように紡がれる詠唱に合わせて、クロノスの顔の時計の針が逆回転する。

 針が逆に回るにつれて、制止した世界が時間を巻き戻していく。人々を襲い、恐怖へ陥れた魔導人形が消え、破壊された屋台やステージは元に戻り、怪我を負った人間は無傷になる。


 管理者がクロノスの召喚のために用意した召喚具は、父の形見である懐中時計。そして、彼のベースに使った媒介は、

 世界が滅亡するまで存在し続ける時間を媒介にした彼は、契約の対価として自身が決めた領域から一歩も出れなくなった。


 だが、この世界の時間が無くならない限り、世界は管理者が望む時間に進み、戻ることができる。

 魔導士の枠すら超えるほどの強大な力。誰もが思いつかなかったものを媒介にし、力を行使する彼を、いつからか畏怖を込めて【時間の支配者テムプス・プリンケプス】という二つ名をつけられた。


 管理者の魔法によって、魔導人形が襲撃を起こす前の時間に戻り、世界の時間は再び動きだす。

 動き出した世界は時間が巻き戻った事実を知らず、巻き戻る前の時間のことを忘れ、学園は楽しみと賑わいに溢れた時間を進む。


 その中で、唯一巻き戻る前の時間を覚えている紺野と橙田は、目の前の管理者の姿を見て微かに畏怖を込めた目で睨みつける。

 二人の視線を受けながら、管理者はクロノスをそばに従えたまま命令を下す。


「……さて、君達は覚えてるから言ったけど……。『レベリス』が表舞台に出てきた。至急、支部に戻り黒宮支部長にこのことを伝えてきてよ。そのためだけに君らを呼んだんだからさ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る