閑話 戦闘狂だって拗ねます
黒宮悠護、一六歳。今の彼はかつてない危機に瀕している。
理由は目の前にいる怜哉だ。事件からしばらくして、日直を終えて帰ろうとした途端に目の前の男に捕まった。
そして現在、悠護は屋上の芝生の上で正座しながらこちらを見下ろす怜哉と対峙しているのだ。
「えっと……どうしたんだよ、怜哉。なんかあったか?」
「なんかあった、はそっちでしょ? 君さ、なんであの『レベリス』と戦ったこと僕に教えてくれなかったの?」
普段より機嫌の悪い怜哉が、アイスブルー色の瞳をさらに冷たくさせながら吐き捨てるように言った。
IMFどころか政府機関にとっても機密情報が出てきてギョッとするが、そういえば白石家にはお家独自の情報網があることを思い出した。
どうやら彼は次期当主の権限を使って、事件の全容を知ったみたいだ。
(でもコイツの場合、俺の身を案じるとか、『危険な真似をするな』とかいう性格じゃないよな……)
大変失礼なことを言っているが、あながち間違いではない。
むしろこの戦闘狂は、魔導犯罪組織のトップに君臨する連中と戦いたいと思うはずだ。
そこでようやく気づいた。この男の機嫌が悪い原因が。
「…………お前、もしかして『レベリス』と戦えなくて拗ねてんのか?」
ありえないといわんばかりの顔で告げると、怜哉の身体はピシリと固まる。
悠護もああ言ったが、内心ありえないだろと思った。
いくら『レベリス』と戦えなかったからって、拗ねるなんて怜哉らしくない。
そもそも彼の人格上、拗ねるよりも自分の番が来てもいいように戦った時のことを聞きにいくはずだ。
だか悠護の予想に反して、怜哉は目を明後日の方向を向いていた。まるで嘘がバレた子供みたいに。
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………違うけど」
「嘘つけぇ!! 絶対拗ねてんだろ!? つーかお前も拗ねるの? むしろそっちの方が驚きだわッ!!」
あからさますぎる反応に悠護が激しくツッコむが、本人が頑何認めない。
「拗ねてる」「拗ねてない」とまるで子供のように押し問答を繰り返す。
最終的に逆ギレした怜哉が、愛用の日本刀型魔導具《白鷹》を取り出して悠護に斬りかかり、彼の八つ当たり(武器あり)から逃れるために三時間ほど悠護が学園中走り回ったのは別の話。
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