第69話 距離を取ろう

 高らかに戦闘宣言をするギルベルトの姿が一瞬ブレたかと思うと、一〇メートル以上も離れていた彼の姿が目の前に現れる。


「くっ……!?」


 咄嗟に《ノクティス》を交差させて防御態勢を取った直後、刃に向かって拳が振り下ろされる。

 上半分は黄金の鱗を纏い、下半分は白人特有の白から絵具のような真っ白に変わった腕。ドラゴンの腕力は常人よりも強く、受け止めているだけなのにズルズルと足が後ろへ下がっていく。


 悠護の上半身が徐々に後ろに傾いてくるのを見計らって、ギルベルドは拳を《ノクティス》から離れると自身の体も数歩後ろへ下がる。


「……ほう、今のを受け止めてかつ倒れんとはな。貴様、意外と根性があるな」

「っはぁ……そりゃ、どうも……」


 実を言ったと受け止めるだけでもかなり体力を奪われているが、それを目の前の相手に悟らせるわけにはいかない。

 乱れる呼吸を整えながら、《ノクティス》を握る手を片方だけそっと開く。

 柄を握っていた場所は赤く爛れており、肉が焦げる嫌な臭いもする。火傷を負っているかなんて聞くのは野暮と思えるほどだ。


 悠護はズボンのポケットから二〇本のネジを取り出し、それを宙に放る。

 魔法で細い針の形状に姿を変えた金属達は、カカカッと音を立てて地面に突き刺さる。


「……なるほど、避雷針か。器用な真似をする」


 悠護が生み出した金属物の正体を見破り、竜の王子は小さく笑う。

 確かに魔法で作られた避雷針ならば、どんな雷魔法が来ても威力を分散するだろう。

 だがそれは、あくまでただの雷魔法ならばの話だ。


 ギルベルトが鼻を鳴らした直後、全身から雷電が迸り、雷電は悠護が設置した避雷針へと集まる。

 最初はただ雷を受け止めていた避雷針だが、一分も経たない内にヒビ割れていく。

 甲高い音を立てて無残な破片へと姿になり、赤い粒子となって霧散する。


「……さすがドラゴン、この程度じゃたいして足止め出来ねぇか」

「ふん、甘くみるな。オレの力を貴様のちゃちな魔法で止められるわけがないだろう」


 苦々しい表情を浮かべる悠護と、不敵かつ余裕に笑うギルベルト。

 対照的な笑みを浮かべる両者だが、ふとギルベルトは真剣な面立ちで悠護を見る。


「……ところで、貴様。何を苛立っている?」

「はあ? 何言って――」

「誤魔化すな。今朝、教室で見た時の貴様は怒りと悲しみ、それから罪悪感が入り混じった顔をしていた。その理由はなんとなく察するが……」


 チラッとギルベルトの目が観客席――自分達の模擬戦を見る日向に向けられる。

 だがすぐに目を悠護に戻すと、さっきとは打って変わって強い眼力で目の前の一番の恋敵を睨む。


「もし貴様がこの戦いに敗れたら、あいつはオレが本気で貰うぞ」

「――ッ!」


 それは、挑発を交えた宣言。悠護にしか聞こえない距離で言わられた言葉。

 だが、その言葉は悠護の心を大きく揺さぶった。


 ――日向が、大切なパートナーが、初めて好きになった女が、目の前にいるぽっと出の王子に奪われる?


 頭の中でその言葉が何度も繰り返される。何度も何度も何度も繰り返され、そして単純で子供じみた感情が心の中から出てくる。


(嫌だ! それだけは、絶対に嫌だ!! あいつが他の男のモノにさせたくないっ!!)


 初めて生まれた嫉妬心が大声で喚き散らしながら叫ぶ。その叫びに呼応するかのように、悠護の体から魔力が溢れ出す。

 真紅の瞳がわずかに発光するのを見て、ギルベルトが息を呑んだ直後、悠護は《ノクティス》を振るう。


 ギルベルトは反射的に腕でガードを取ると、《ノクティス》の刃が左右上下と不規則な動きで何度も斬りつけてきた。

 もちろんドラゴンの鱗は世界中に存在するどんな生き物よりも異常に硬い。簡単に鱗の下の肌を傷つけることはできない。

 だが、振り下ろされる《ノクティス》の刃から黄金に輝く粒子を見た途端、ギルベルトは初めて焦りで顔を歪ませる。


「っ!? クソッ!!」

「!!」


 すぐさま体に纏う雷電を放出させると、すぐさま悠護がステップを踏みながら後退する。

 相手が引き下がったのを見ないまま、ギルベルトは自身の腕に刻まれたを見て瞠目する。

 本来ならどんな魔法でも武器でも傷がつかないはずの鱗。だが今目の前に鱗には、確かに刃物による傷が残っている。


(あの双剣……もしや何かの魔法を付与しているのか? いくら暴走し始めたとはいえ、この威力は明らかにおかしいからな。それにしても……やはり身に覚えがある……)


 自身を傷つけた双剣と、悠護の顔。ギルベルトの中ではそのどちらもどこかに身に覚えがあった。

 それを見たのは一体どこだったかと首を傾げるが、今はそんな些細なことを気にしている余裕はなかった。


 ただ純粋に、心が躍る。

 あってまだ一日しか会っていない相手に自慢の鱗を傷つけられたが、それ以上に自身と互角に戦える強敵との出会いに全身が歓喜で震える。


 再び悠護が双剣を振るう。しかし今度はギルベルトが鋭く伸びた黒い爪を使って対抗する。

 ダイヤモンドと同じ硬度を持つ爪は、刃を受け止め、腕を振るうと剣が腕ごと弾かれる。

 その間にも悠護がもう一つの剣を振るい、ギルベルトがもう片方の爪で弾く。今度はギルベルドが爪で突き刺そうとすると、反対に悠護が剣で受け流す。


 剣を振るう。爪で弾く。爪で突き刺す。剣で受け流す。両者の動きはたったそれだけ。

 ゲームでいう『なぐる』『ける』のコマンドを押し続け、そのバリエーションを増やしているだけの行為。

 だがそんなシンプルな攻防戦ですら、今目の前の光景を目にしている者達――審判役である最強の魔導士の一人は除く――には目では追えなかった。


 速過ぎたのだ。

 その攻撃一つ一つが、よほどの動体視力の持ち主でなければ残像しか目に捉えらないほど。

 一瞬だけ黒と金色が曲線を描くのが見えるだけ、それ以外は何も見えない。

 一人は嫉妬心に駆られ、もう一人はかつてない高揚感に当てられ、互いの瞳が発光していた。


 同じ系統色だがまったく別の赤をした両者の瞳。魔導士にとって瞳の発光魔力の暴走の前兆であるが、それでも目の前の敵を倒すためにさらに魔力を生み出す。

 もはや『死闘』と言っても過言ではない、苛烈に苛烈を極めた戦い。今持っている全ての力を目の前の敵に叩きつけるために、再び最初の位置に戻った二人は息を荒くしながらも、構える。


「まさかここまでやるとはな……。先の言葉は撤回しよう。貴様は弱くない」

「そうかよ……お褒めに預かり光栄だぜ」


 たった二言言葉を交わし、沈黙する。静まり返り、両者の額から頬へと流れる大粒の汗がゆっくりと、同じタイミングで地面に落ちる。

 そしてまた同じタイミングで地面を蹴り、悠護が《ノクティス》の刃を、ギルベルドが黒い爪を突き出した――


「――――そこまでや!!」

「なっ!?」

「くっ!?」


 直後、審判の口から終了の掛け声が発せられる。

 訓練場全体に響いた直後、二人の足元に幾何学模様の魔法陣が出現したかと思うと、そこから鎖の形をした光が悠護とギルベルトの体を縛る。

 鎖で体を縛られると、悠護の持っている《ノクティス》が粒子となって消え、ギルベルトの体を覆っていた鱗が肌に溶けるように消えていく。


禁戒の鎖ヴェティトゥム・トルクエ』。

 上級呪魔法の一つで、鎖に縛られている間はあらゆる魔法を強制的に発動解除させる魔法を行使させた陽は、戦いを中断させて苛立つ生徒二人の視線を睨み返しながら告げる。


「これ以上の戦いは魔力の暴走による被害を生み出すと判断したため、この模擬戦は引き分けや。文句があるなら、そっから自力で出れたら考えてやるけど……どないする?」


 陽は本気か嘘か分からない声色で告げるが、『禁戒の鎖ヴェティトゥム・トルクエ』の解除は悠護だけでなく先の戦いで予想より魔力を消費したギルベルトでさえも難しい。

 向こうの魔力が万全で、しかも実力の差が圧倒的な相手に敵うはずがなく、悠護とギルベルドは渋々とその結果を受け入れることしかできなかった。



 陽の横槍によって、模擬戦は強制的に終了する。

 固唾を呑んでいたクラスメイト達が嘆息を漏らす中、日向はすぐさま観客席から立つとそのままフィールドに向かって走り出す。

 いくら陽によって模擬戦が中断させたかといって、二人は軽傷とも重傷とも言えないほどの傷だ。


 特に悠護はギルベルトの攻撃を受けて、遠目から見ても火傷を負っているのは明らかだ。

 だからこそ急いで彼の元へ駆け寄って、容態を確かめたかった。そうしないととても安心出来なかったから。


「悠護!!」


 荒い息を吐きながら駆け寄る日向に、陽の魔法から解放された悠護がギョッと目を見開く。

 そんな彼に気にすることなく、日向は赤くなっている両手を取る。


「大丈夫!? すごく赤い……これ早く冷やさないとダメだよね!? ちょ、ちょっと待っててすぐ氷水持ってくるから!」

「お、おい落ち着けって! こんなの病院で診りゃすぐ治るからッ!」

「すぐ治るって……ここまでひどい火傷なのになんでそんな呑気なこと言えるの!? 悠護はもうちょっと自分を大切にしてよ!」

「――っ」


 日向の台詞に悠護が肩をピクリと震わせると、乱暴に日向の手を振り払う。


「うっせぇな! 俺はお前にそこまでしてもらうほど弱い人間じゃねぇ!! いつまでも同情すんじゃねぇよ!!」


 訓練場全体に響いた声は、クラスメイト達は一斉に黙り込み、心菜は戸惑った表情を浮かべ、樹は「あのバカ」と呟きながら額に手を当て、陽とギルベルトは無表情で聞いていた。

 だが、目の前にいる日向はひどく傷つき、涙を流しそうな顔で悠護を見ていた。


「ち……違う……あたしは、ただ本当に心配で……」

「……ぁ……」


 その顔を見て、嫉妬心の勢いで吐き出したことが後悔として押し寄せてくる。

 悠護が何かを言った前に日向が「余計なことして、ごめん」と小さく呟くと、そのままフィールドから走り去る。

 琥珀色の髪が揺れるその後ろ姿を目で追うことしか出来ずにいる悠護に、全身に軽い切り傷を残すギルベルトは非難の目で彼を見つめる。


「確かに、貴様は強い。だがそれはただ魔法や戦闘力の面だけのようだ」

「なん、だと……?」

「貴様は人としての精神が弱すぎる。まるで、今まで何かに逃げてきたツケが全部回ってしまったようにな」

「………………っ!!」


 無意識だが的確な言葉に、悠護は言葉を詰まらせる。

 その反応を見て、ギルベルトは悠護の真横に立つと小さく告げる。


「――もし、貴様が永遠にそのままならば、誰かを幸せにすることなど一生不可能だ。そうなる前に彼女をオレに渡すというのも一つの手段だ」

「!」

「それが嫌ならば、抗え。どれだけ惨めで無様でも、死ぬ気で身も心も強くなれ。オレは横恋慕など無粋な真似は好まない。正々堂々、己の命を賭けるほどの覚悟でオレはオレの欲するモノを手に入れる。貴様も男ならば、それくらいの覚悟を見せてみろ」


 そう言って迷いのない足取りでフィールドを降りて行くギルベルト。

 あまりにも格が違い過ぎる王子を見て、自身の矮小さに嫌気がする。


「クソったれが……!!」


 吐き出されるように呟かれたその言葉は、日向でもギルベルトではない己自身に向けたものだった。



☆★☆★☆



 あれからしばらくして、魔法実技が再開された。

 模擬戦のせいで時間が押していたため、急ぎ足で進んだがなんとか全員及第点を取ることはできた。

 悠護とギルベルトはあの模擬戦自体を魔法実技の一環として扱われたため、彼らにも点数はついた。


 日向もあの時の悠護の言葉にショックを受けてしばらく女子トイレに篭っていたが、心配で探しにきてくてた心菜のおかげで無事に魔法実技を受けた。

 悠護とギルベルトは病院におり、今は樹と陽がその様子を見に行っている。

 最初、日向も行こうとしたがあんなことがあった後では会うのは気まずくて、今は寮の自身のベッドの上にうつ伏せになっている。


「日向、大丈夫?」

「……うん、ちょっと大丈夫……」


 本当なら今日の昼食担当である日向の代わりに、キッチンで昼食を作ってくれている心菜の質問を覇気のない声で答えた。

 出汁の匂いが部屋中に充満していて、元気がなくてもお腹が刺激される。

 しばらくしてテーブルの上に置かれた丼を見て、日向はベッドから起き上がると、のそのそとした動きでテーブルの前に座る。


 今日の昼食はうどんだ。

 具はほうれん草、油揚げ、ネギ、蒸した鶏肉、それから桜型の生麩。出汁はカツオと昆布から取る出汁で、それをめんつゆで合わせている。

 出汁は一から作る手の込んだもので、冷蔵・冷凍と二種類の保存法を利用して使っている。


「いただきます」と手を合わせた後、ゆっくりと箸を持ちちゅるちゅると食べる。

 出汁の匂いとうどんのコシのある食感、それから一緒に煮込まれた具とつゆの味がじんわりとお腹の中に落ちていく。

 味は違うのに、かつて元気がなかった自分に母が作ってくれたうどんと同じくらい落ち着く。


「美味しい……」

「よかった」


 ほっと息を吐く日向を見て、心菜も安心したように肩を撫で下ろした。

 たまに言葉を交わしながら昼食を終えて、食器を洗う日向の横で洗った食器を拭く心菜が言った。


「……ねぇ日向、今はそんなに焦らなくて大丈夫だよ」

「え?」

「悠護くんはちゃんと日向のことを知ってるし、さっきのは……多分本人の気持ちがイライラしてあんなこと言っただけだと思うの。だからね、今はちょっとだけ距離を取って、気持ちが落ち着いたらちゃんと話し合えば仲直りできるよ」

「……そう、だよね」


 心菜の言う通り、あの時は互いに気持ちの整理が出来ていなかった。

 ちゃんと気持ちを整理し、話したいことを話せるようになるには時間が必要だ。


(ちゃんと謝ろう。そして伝えよう、あたしの気持ちを。あたしの話したいことを)


 今はまだ無理かもしれないが、それでもちゃんと顔を見て話したい。

 父も言っていた。『自分が謝りたい、話したい気持ちが生まれるのは時間がかかる。そんな時こそ落ちついて、話したいことを話すように準備しなくてはならない』と。


 それが今、その準備している真っ最中なのだ。そう考えると鉛のように重かった心が軽やかになっていく。

 無意識だが徐々に元の元気と明るさを取り戻す自分を見て、親友は嬉しそうに微笑んだ。



「お前バカだろ?」


 病室にいる悠護を見て、樹が開口一番にそう言った。


「ほんとバカだろ? バカだよな? 信じられないほどのバカ。二一世紀史上最大のバカ」

「あああああもううるせぇな!! 何度バカって言えば気が済むんだよ!?」


 さすがに我慢の限界なのか、ベッドの上で両腕が指の先まで包帯を巻かれ、頬に大きなガーゼが貼られた患者服姿の悠護は、目の前で両腕を組んで心底呆れた顔をする樹に向かって枕を投げながら叫ぶ。

 樹と付き添いで病院に来た悠護は、すぐさま医者からの治療を受けさせた。


 診断の結果、両手はⅢ度熱傷、両腕と頬は深達性Ⅱ度熱傷。さらに全身が軽度の麻痺状態。

 普通の病院ならば数年も入院しなければならない重傷だが、魔導医療によって三日間の入院だけで済んだ。

 だがいくら治療したからといってすぐに治るわけではない。今でも悠護の体は麻痺でロクに腕が上がらず、足も指先からビリビリとした痛みが走っている。


 かなり重症なのにあそこまでの戦いを繰り広げた親友の意地に半分呆れ、半分感心しながらも投げつけられた枕をキャッチした樹は、その枕を悠護に返しながら来客用の椅子に座り再び両腕を組む。


「いくらあの金ピカ王子に嫉妬してたからって、何も日向に当たることはないだろ。あいつが同情でお前のこと心配してないくらい分かってんだろ?」

「………………ああ……」

「なのにお前ときたらそこまで意固地になりやがって……正直に言うと、もし俺ら以外の奴らだったらこの辺りで縁切ろうか考えてたぞ」

「そ、そこまで……!?」

「いやさすがにこれは冗談だが、少なくとも嫌気が差すだろうな」


 はっきりと言った親友にさすがの悠護も顔色を悪くする。

 彼にとって本当の意味で『友』と呼べるべき存在は、自分を含む日向達だけなのだ。

 自分の行動一つであっという間に失われると言われ、オロオロする姿は誰の目から見てもかわいそうに見えてくる。


「……ま、幸い今日から土曜までお前は入院だろ? これを機に退院するまで日向と少し距離取った方がいいんじゃねぇのか?」

「……そう、なのか? こういう時って普通、なるべく早く話した方がいいんじゃないのか?」

「普通のケンカならな。でも、今してるケンカは色恋沙汰絡み。そういった類のケンカは早く済ませたいって思うほど、気持ちが急いていらないことまで言っちまう。なら少し頭を冷やしてから話した方が一番いいんだよ」


 さすが樹というべきか。兄貴肌で男女問わず相談されることが多く、色んなことを客観的視点で見る目を持っている彼の言葉は他とは違って重みがある。

 思えば何は話したいこと、聞きたいことはすぐにどちらかが話していた。

 そういった経緯でなんでも話してくれると思い込んでいたからこそ、今回のような事態を引き起こした。


(頭を冷やす、か……)


 今まで諦めることばかりだった人生だが、今は諦めたくないモノもできた。

 日向と仲直りしたい。だが未だギルベルトに嫉妬している状態ではまた何かひどいことを言ったかもしれない。

 これ以上彼女が傷つけたくないならば、樹の言う通り入院している間は距離を取った方がいいかもしれない。


「……分かった、そうするわ」

「そうかよ。んじゃ、俺は一回帰るけど後で着替え持って来るわ」

「ああ、頼む。……樹」

「なんだ?」

「ありがと」

「……おう」


 悠護の感謝の言葉を聞いて、樹が何か察したかのような顔で笑う。

 自分の頭をくしゃりと軽く撫で、出て行く親友の姿を見送った悠護は、包帯を巻かれた自分の手を見つめ、そのままぎゅっと握りしめた。

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