第21話 逆転の狼煙

 風切り音が聞こえたかと思うと、隣にいた仲間は声を上げずバタリと倒れる。

 はっ、はっと息を吐きながら魔力弾を撃つも相手には当たらない。全身が半透明になっている修道女は、四方から撃たれる魔力弾が体から通過するのを気にせず仕込み杖で次々と峰打ちしていく。


 修道女が峰ではないほうを使うのは術者が魔力弾に当たりそうになるか、『獅子団』の戦力を無力化するために改造魔導具を破壊する時だけ。それでも彼らにとっては十分厄介な敵であるのは確実だ。

 魔物は基本物理攻撃も魔法攻撃も効かない生命体。彼ら自身の体を非物質化することで攻撃を通さない仕組みになっているだけだ。心菜を主とする修道女の魔物・リリウムは、その非物質化することで攻撃を受けず、主が望むままに敵を倒している。


 本来のリリウムの実力はこんなものではないのだが、場所が自然多い森の中ということもあり、無闇に魔法を使うと環境破壊や災害が起きてしまう可能性がある。

 そのせいで島民に被害を及んでしまうのは避けたいため、こうして普段の半分の力しか出していないが、それでも『獅子団』を相手にするならそれだけで十分らしい。


 心菜は自身の後ろで倍の体重があるはずの男の襟首を掴んで『獅子団』の方へ投げる樹を横目に見る。

 樹が嵌めている黒い手袋は、彼自身が作製した専用魔導具だ。市販の布に自身の血を滲ませた糸を使って縫い合わせて作っただけだが、専用魔導具作製に必要不可欠である魔導士の血が使われているのだから、ただの布が魔導具に早変わりするのは当然である。


 指輪型の魔導具と同じで装着することで魔法を行使することができる仕組みになっており、今の樹は強化魔法で自身の腕力を強化している。

 得意な火の魔法を使わないところ見ると、この森が山火事になるのは彼自身も望んでいない。現に魔力弾に当たって火が出始めた場所をきちんと消火している。


 心菜がパートナーの無事に安堵すると、横から棍棒を持った男が殴りかかろうとしていた。だがその前にリリウムが男の後ろに現れ、そのまま首筋に峰を落とす。

「ぶへぇっ」と呻きながら顔から地面に落ちた男に心の中で謝罪していると、リリウムは飛んで来た魔力弾を切り捨てて行く。


 黒い修道服の裾を揺らし、仕込み杖を華麗に操る美しい魔物。主である心菜の目は、その姿がとても綺麗で頼もしい存在として映っている。



☆★☆★☆



 神藤心菜は、魔導医療シェア世界三位に入る魔導医療企業『神藤メディカルコーポレーション』の社長令嬢だ。幼稚園から中学までの学生生活をエスカレーター式の一貫教育女子校・聖マリー学園で過ごした、純粋培養のお嬢様だ。

 家族構成は厳格だが芯の強い祖父、穏やかな笑みを浮かべる祖母、優しくしっかり者な父、そして時に厳しく接する男勝りは母。そして幼い頃から雇っているお手伝いさんと共に都内の高級住宅街の中では一番大きい家で何不自由ない生活を送っている。


 相手の身分など問わず平等に治療を施すことを絶対とする神藤家は、選民思想を持つ魔導士には医療に携わるべきではないと切り捨て、そうでない者には当家の技術を教えるという、聞くだけだと差別的なやり方をしている。

 しかし、人の命を預かる立場にいる者にとって、看るべき相手を身分などで分別して治療を受けるか受けさせないかを考える相手にその資格がないことくらい、心菜自身も理解している。


 だが他の企業はその考え方や高度な技術を有していることから神藤家は常に嫉妬の的で、心菜は幼少期の頃から何度も誘拐未遂もしくは誘拐を経験していた。

 何度も怪しい連中に何処かへ連れて行かれかけたり、何度も無理矢理車に乗せられて薄暗い部屋で閉じ込められた。その度に泣きじゃくる心菜に胸を痛めた家族は、護身として彼女に魔法を学ばせることにした。


 当時七歳だった心菜はすでに生魔法は人並み以上にそつなくこなしたのだが、肝心の攻撃系の魔法はからっきしだった。

 原因は父の優しい性格を受け継いだ心菜は、魔法や不慮の事故で怪我した患者の姿を長年見続けていたことだった。


 魔法は、自分の心を映す鏡だ。相手に怪我をさせることに迷いがない者は周囲への被害を考えない攻撃が出来、逆にそうでない者は守るために防御に徹する。そんな魔導士の内側が顕著に出てしまのだ。

 心菜もその例に漏れず、一向に攻撃系の魔法を使えない彼女を見て母親はある決心をした。

 それは、魔物を使うことだった。


 魔物の召喚は小説やテレビで見る怪しげな魔法陣や生贄を使う方法ではなく、媒体となるものを三位一体になるよう用意することで召喚される。

 召喚魔法と得意とする母親が魔物を召喚する時に用意した媒体は、祖母が好きな百合、ロザリオ、そしてサーベル型の魔導具であった。


 最初は魔物を使役することを渋った心菜だったが、それではいつまで経っても自分の身が守れないままでいることは痛感しているため、母親の言う通り召喚魔法を使った。

 そして召喚された魔物こそが、あの美しい百合の修道女・リリウムなのだ。


 最初リリウムを見た時、この世のものとは思えない美しさをした魔物に目を奪われたことを今でも覚えている。

 そんな記憶に残る鮮烈な出会いを果たした心菜は母親の指導の元、魔物を使役するために日々訓練に明け暮れた。


 だがリリウムは、心菜に従ってくれなかった。

 魔物が主の命令を聞かないのはたまにあることなのだが、何度母親に改善してもらってもリリウムは心菜の言ったことを聞かなかった。


 何度挑戦してもリリウムを従わせることが出来ず落ち込んでいたある日、心菜はまた誘拐された。

 もう何人目なのか分からない誘拐犯は、新しい魔導医療を発表した際に祖父に酷評されたことに対する逆恨みによるものだった。


 当時の心菜は知らなかったが、発表されたそれは五時間以内に難病を治す優れものだが、その代わりに借金をしなければならない高額な治療費を払わなくてはいけない上に、体や生殖機能に後遺症を残してしまうものだったらしい。

 誘拐犯が荒げた声で身代金を用意しているのを聞きながら、心菜はずっと震えながら目を瞑っていた。


 何度誘拐されても、慣れるわけではない。無理矢理車に乗せられ、薄暗い室うちに閉じ込められて、いつ助けがくるのか分からない。

 分厚い鉄のドアの向こうで、誘拐犯が苛立った声が聞こえてくる。同時に何かを蹴り上げる音も聞こえ、心菜はさらに体を震わせる。


(……お願い、誰か助けて……!)


 もう何度したのか分からない祈り。そんなものがすぐ叶わないものだってくらい知っている。

 またこうして助けがくるまで、恐怖に耐えながらじっと待つ。いつも通りだと思っていた瞬間、自分の手首を縛る縄と目を覆っていた布が縦に斬れた。

 驚いて目の前を見ると、呼んでいないはずのリリウム。彼女は仕込み杖を手に持っており、無感動で心菜を見つめていた。


『な、なんだぁ!?』


 ちょうど見張りの交代時間なのか、様子を見に来た誘拐犯の一人がリリウムの姿を見て叫びをあげた直後、彼女は剣の峰で相手の意識を奪った。

 地面に倒れる男を気にしないままリリウムは顔を心菜の方へ向ける。彼女のアーモンド形の金色の瞳には呆然とする自分を映しており、何を考えているのか分からなかった。


 だけど、この時に心菜は気づいたのだ。このリリウムが、何故自分に従ってくれなかったのか。


(……そっか、私怖かったんだ)


 心の奥底ではずっと恐れていた。人間でも魔導士でもない、異次元の存在である魔物が、いつか心菜の意思と反して誰かを傷つけてしまうのではないのかと。

 リリウムはそれに気づいていたからこそ、自分が心菜の嫌がることは絶対にしないと伝えるまでずっと命令に従うのに耐えていたのだ。


 そのことに気づいた時には、心菜はおかしそうに笑っていた。誰よりも人間らしいこの魔物の、優しくもどこかズレた気遣いに。

 突然笑い出した主にリリウムがオロオロとし始めると、心菜は真っ直ぐな目でリリウムを見つめ、そして本当の意味で初めての命令を下した。


『リリウム、私を助けてくれる?』


 答えが分かりきっている命令を聞いて、リリウムは主を抱き上げると片腕に乗せるように抱っこする。そしてドアの向こうの窓と壁を切り、そのまま空を飛びながら建物を脱出した。

 ネオンの光で包まれた街が足元にある、眩しすぎない場所で新鮮な空気が肺一杯に入ってくる。目の前に広がる夜空に思わず目を輝かせる。


『あははっ、すごい! すごいわ、リリウム! あなたは最高の魔物ね! 私を助けてくれてありがとう!』


 初めて空を飛んだことに感動を覚えた心菜は無邪気な笑顔を浮かべる。あれだけ怖がっていたのにこんなことを言ったのは都合がいいと分かっていても、この言葉は心菜の純粋な気持ちだ。

 主からの感謝の言葉を聞いたリリウムは能面のような顔で変化はなかったが、だけどあの瞳だけは嬉しそうに輝かせていたことは、心菜は一生忘れないだろう。



 それから心菜は、リリウムに絶対に破っていけない『完全命令』を二つ出した。

 一つ目は、相手を傷つけないで倒すこと。二つ目は、武器は他に被害が及ぶ前に全部切ること。他の召喚魔法を使う魔導士から聞けば甘いと言っただろうが、これだけは絶対に譲れなかった。


 そして今、心菜の気持ちを汲み取った魔物は今も忠実に命令を果たしている。

 相手を傷つけず意識を奪い、あらゆる生命を奪う武器を切る。そして時には心菜を守ってくれる魔物は、主の前に現れた敵を倒す。最後の敵が奇声を上げながら突撃して来るも、リリウムは即座に意識を根こそぎ奪う。それが戦闘終了の合図となった。


 意識もなくぐったりと倒れる『獅子団』を見て、心菜は深く息をつく。ここまで激しい戦闘は心菜にとっては初めての経験で、いつの間にか緊張で体が強張っていた。

 リリウムが心配そうに見下ろしてきたことに気づくと、安心させるようにすぐに笑顔を向ける。すると右肩の筋肉をほぐすように回していた樹もこっちに来ていた。


 頬にかすり傷があったり、服の所々に泥がついてるも、あまり目立った怪我はないと知ると心菜は安堵感からほっとする。


「……よお、そっちも無事みたいだな」

「うん。樹くんは大丈夫?」

「ああ、この通りピンピンしてんぜ」


 ニカッと太陽のように笑うパートナーにくすりと笑みをこぼすと、心菜はパーカーのポケットからハンカチを取り出す。そのまま樹の顔を拭うと、彼は驚いたように目を見開く。

 試しに拭かれている頬とは別の頬に触れると、指先に泥がついていたことに気づくも、必死に自分の頬を拭いてくれる心菜の一生懸命な姿が可愛らしく映り、しばらく見ていたくてそのままにしてやった。


 すると突然、ドゴッと音と共に樹の後頭部を何かでど突かれた。


「いってぇっ!?」


 思わず悲鳴をあげて後ろを振り返ると、心菜の魔物であるリリウムは鞘にしまった状態の仕込み杖を中途半端に降ろした状態――まるで何かを殴った後のポーズになっている。

 アーモンド形の金眼からは『主に鼻の下伸ばすな』と言わんばかりに刺々しい視線を向けており、樹は思わず顔を引きつらせる。


 どうやらこの魔物は、主に対して下心を持つ相手にはこうして撃退してきたのだろう。

 そんな風に考えていると、リリウムは心菜の後ろに来るとそのままぎゅっと抱きしめる。その姿はまるでお気に入りのぬいぐるみを取られたくない子供のようだ。


「り、リリウム、どうしたの?」


 魔物の突拍子もない行動に心菜が戸惑うも、リリウムは反応を示さない。ただ樹に対して鋭い視線を向けるばかりだ。

 オロオロする心菜を余所に火花を散らす一人と一体の間に入ったのは、野太い男の声。


「おい、いたぞ! 全員やられてる!」

「ちくしょう、クソったれな魔導士共め!」


 東の方角から現れたのは数人の男。その男達の上着とシャツには獅子のエンブレムが縫いつけられている。

 あの戦闘の最中に誰かが陽動にいた『獅子団』を応援と呼んだことくらい、さすがに樹も心菜も理解出来た。


「クソッ、援軍か!」

「っ、ダメ!」


 樹が拳を構えると同時に『獅子団』がミニガン型の魔導具の銃口を向ける。

 危険を察した心菜が止めようとするも、樹に向けられた銃口から火花を出す。リリウムに武器を切るにも時間があまりにも足りない。


 魔力弾で樹の体がボロボロになる未来を想像した心菜が、その光景から目を逸らすように瞼を固く閉じ、手で耳を覆ってしまう。

 鼓膜が破れると思うくらいの派手な発砲音が森中に木霊する。その音の先にあるものが心菜が最も恐ろしいと思っているものだと思い、その音が止むまでずっと耳を塞いでいた。


「……?」


 だが、その発砲音に一つの矛盾が生じた。それは悲鳴だ。銃口を向けられたら誰だって悲鳴をあげるが、樹からそんな声が出ない。心菜が何故と考える間もなく、その答えは出た。


「――まったく、人の生徒になんちゅーモン向けとるんや」


 この島では聞かないはずの声。恐る恐る目を開け俯いていた顔をあげると、そこにいたのは心菜と樹にとっては頼りになる担任であり友達の兄、そして世界で指折りの魔導士――【五星】豊崎陽がそこにいた。

 彼の後ろには不思議な文字で囲まれた赤紫色の円――魔法陣が二〇個あり、それらは翼のように広がり妖しい光を放っている。


「な、こ、こいつは……」

「【五星】だ! こんな大物が来るとか聞いてねぇよちくしょうッ!!」


 現れた大物に悲壮感を漂わせる『獅子団』。彼らにとっては『絶望』と呼べる魔導士は、一つの魔法陣から金属の棒を取り出す。自分の身丈より少し高いそれを、バトンのようにくるくると回した後にカンッと地面に叩きつける。


「……さて、ワイの教え子に手ぇ出したんや。それなりの覚悟、出来とるよな?」


 陽の体から可視化した赤紫色の魔力が溢れ出す。その光が『獅子団』には自分達を断罪のする光に見えた。



☆★☆★☆



「オラオラァ!! どうしたぁ!? 逃げてばっかりじゃ俺を倒せねぇぜ!?」


 乱雑に打たれる黄金色の魔力弾が滅茶苦茶な軌道に乗って日向に襲い掛かる。

 弾は時に壁や天井を破壊していき、大きくも小さくもない、けれど当たるだけで大怪我をする瓦礫があちらこちらで飛び交う。


「『クリペウス』ッ!」


 降ってくる瓦礫を防御魔法で防ぎ、魔力弾で穴が空いた場所はなるべく助走をつけて跳躍する。

 そうしている間も堂島は魔力弾をバカみたいに撃ちマークる。発狂した笑いを上げる彼を見て苦い顔で舌打ちする。


(なんて戦い方……! そりゃ過激派とか言われてもおかしくないよ!)


 これだけ周囲の被害を考えない戦い方はある意味自滅行為だ。それでも、そんな真似しなければ彼らは勝利をもぎ取ることすら難しかったのだろうか。

 そんな風に考えをしていたのが悪かったのか、突然右に曲がった魔力弾を見て思わず《アウローラ》を持っていない手をかざす。


 無魔法の自動発動オートモードを利用したそれは、パァンッと軽い破裂音と共に消える。


(あ、危なかった……。陽兄に教わってなかったら多分怪我してた)


 これはどんな防御魔法より役に立つと言われ、陽が特訓のメニューに加えたのだ。当時の訓練のスパルタさを思い出して身を震わせると、軽い口笛が聞こえてきた。


「ヒュー、さすがだな。これだけの代物があればきっと簡単に天下を取れるだろうな」

「……そんな真似、あたしがすると思う?」

「いいや、しないさ。テメェみたいに善人の鏡には出来ねぇだろうな。――だから、俺がテメェを使ってやるのさ。他の誰でもねぇ、悪人の鏡である俺がな」


 直後、堂島の魔力が可視化する。黄金色のそれを見て、本能が告げる。


 ――あれはマズい! 逃げろ! 逃げろ! 遠いところまで!


 本能の叫びに従い急いで逃げようとするも、遅かった。

 堂島は詠唱を唱える。これまで多くのIMFの人間を薙ぎ払ってきた魔法で。


「『千里星矢ミッレ・パッスウム・ステラ』ッ!!」


 その瞬間、星の光を凝縮したような輝きを持つ矢が日向の視界を真っ白に染めた。

 凄まじい破壊音が椿島を揺らす。天井や壁から瓦礫がガラガラと零れ、砂塵が舞う中、堂島は咳き込む様子を見せずに悠然とした態度で歩く。


「……ちっとやり過ぎたか。まあいい、獲物が手に入れれば解決か」


 彼の視線の先には、奇跡的に瓦礫の埋もれず、さっきの衝撃で琥珀色の髪を乱し、体中に粉塵がついた日向が地面の上でぐったりと横たわっていた。



 ――冷たい。まるで氷みたいだ。


 沈む体が体温を奪っていく感覚に悠護は瞼を震わせる。一刻も早く上に向かって泳がなければ自分の命はこのまま終わってしまう。

 そんなこと分かっているのに、この腕は、この足はピクリとも動かない。まるで海底にいる何かに体を囚われているようだ。


(俺は……ここで死ぬのか? 大事なパートナーを守れず、このままこの海の中で?)


 そう思うと心の中に悔しさで埋め尽くされてしまう。最後の抵抗として必死に開けていた瞼さえも閉じかけようとした瞬間、悠護の首から重力に従い黒い紐が浮かんで来た。

 黒い紐の先には小さな巾着袋があり、見た目はたまに神社で見かけるお守り袋に近い。その袋の口から何かが出て来た。


 その何かの正体は、琥珀色の石――正確に言ったならば日向の無魔法を宿した魔石ラピスだ。

 暗い海の中でも強い輝きを放つそれを見て、ほとんど閉じかけていた悠護の目が完全に開いた。


(……なに諦めようとしてんだよ、俺は!?)


 彼女を守ると言ったのは誰だ? 彼女のパートナーでいることを誓ったのは誰だ? 他でもない、悠護自身ではないか。

 それらはこんな簡単に諦めていいものだったのか? 答えは――否だ!


 口を開くと海水が入ってくるのも気にせず、魔石ラピスを歯に挟むように噛む。ガリッと音を立てながら悠護はまだ残る生命エネルギーを魔核マギアに通し魔力を生産する。


(これが失敗したら多分後はない。――チャンスは、一度きりだッ!!)


 直後、魔石ラピスに魔力を注ぎ入れると同じタイミングで、悠護はそれを強く噛み砕いた。

 石の中に入っていた魔法は、持ち主の魔力に反応して琥珀色に輝いた。


 その輝きは、まるで穢れを知らない神聖な手を伸ばす神が見せた救済の光に似ていた――。

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