第2話 王子様がいらっしゃった。私は誘拐された。
そんなことを考えてからでしょうか。それから数日後いらっしゃいました。
「最近隣国の悪魔が頻繁に出没すると噂になっている。それも全てお前のせいだろう!それにマーリンとの会話にお前の話が出てくる度に仲違いをする!いい加減にしろ!」
見目麗しい王子様。
今の顔はちょっと怖い感じですけど。悪魔出没とか噂になってたんですか。ビックリですね。
私の話を会話に出さなきゃ良いのでは?と思うけど冷静じゃない彼に何を言っても無駄だろう。
教会にわざわざ怒鳴り込んできてくださったわけですから子供たちが怯えてしまっている。一部気の強い子は睨んでいるが。
静かに話を聞いて誠心誠意謝って終わろう。私に出来ることはそのくらい。このストレス社会ですからまぁお話を聞くくらい昔の誼よしみでタダで行いましょうかね。
「本当に申し訳ございません。私が至らないばかりに...。すぐに改善いたします。」
その返事に少しタジタジになった王子は今度は小さくブツクサと文句を言ってきた。私はそれに葡萄酒を勧める。彼はまずいまずいと言いながら飲んでいく。
飲んで飲んで酔いつぶれていく。愚痴をこぼす彼に適当に同意しながら相手をする。
後日また来た彼に頓珍漢な口走る。
「君は聖女だ」
違くないですかね。
この世界確かに魔法ありますけど、私別に魔法使ってあなたのこと癒したわけじゃないですよ。
魔法使うの隣国の専売特許ですし。私たち使えないじゃないですか。
私がクレーム処理得意かもなんて馬鹿なことを考えてしまうほどには、チョロイですね。
「恐らくどちらも愛を乞うタイプだったんだろ。似たもの同士は傷の舐め合いがせいぜいだ。持たざる者同士が結託して持つ者に反発し倒してしちまったんだろ。持ってねぇから怖えぇんだよ。周りを攻撃したくなるんだ。不安で不安で。持つ者を倒したくなるんだよ。だから結果的に、反対勢力のいなくなった状態であいつら自身を満たすことは出来ねぇんだ。」
いつの間にか私の隣では知らない人が立っていました。どちら様でしょう。あいつって誰のことでしょう。
「俺はヨーゼフに引っ張られてここに来た。マーシャルだ。俺を連れてきた本人はガキ共と一緒にどっかいったけどな。」
私には少し難しい話でした。
でも分からないなんて言える雰囲気でもないので分かった振りをします。
きっとマーシャルさんの中にはちゃんと答えがあるのでしょう。
素敵だなあなんて、彼の褒めたい場所を見つけてしまい、思わず頭を撫でたくなってしまいました。
しかし急にそんなことをされてみてください。頭おかしいんじゃないかと思われてしまうかもしれません。
いや確かに修道院に入ってからだいぶ変わったけど、流石に常識は既に理解出来ております。なので動きそうになった右腕を左手でがっちり掴んで阻止しました。
変な動きをした私に訝しげな顔を向けてきた彼に誤魔化すようににっこり笑いかけました。
それに対してとってもびっくりしたような顔をしたマーシャルさんにちょっと申し訳なくなっちゃいました。
ものすごいアホヅラだったんですもの。ふふ。
「お前俺のところに来いよ。つっても俺はヨーゼフと違ってお前の意見なんて聞かねぇけどな。」
吸血鬼とは誘いたい生き物なのでしょうかね?
そう言って私を肩に乗っけて飛びました。
飛びました?え?
高いところを無邪気に楽しめるような童心なんて持ち合わせていない私は死と隣り合わせの気分で彼が飛び終わるまでひたすら無我夢中で彼に抱きついて口を開けることなく硬直したようになっていました。
お姫様抱っこでうふふアハハ綺麗な景色♡
なんてよくあるやつとは天と地ほどの差がある、誘拐の仕方だ。というかあははで誘拐してたら怖い。
やっとゴウゴウと感じる風が止み、到着したようだ。そこはまさしく混沌の吸血鬼の城だったわけだが。とりあえずボサボサの髪を直します。
愛に飢えた世界で教会に幽閉された悪役令嬢に愛を乞う 同画数 @doukakusu-
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