第3章 こわれかけのヒーロー

***

 小さいころ、おれが夢中になっていたのは、金色のスーツを着たヒーローだった。

 レッドでもブルーでもない。ゴールドだ。

 ヒーローのレッドがピンチになったときに現れる、ヒーローのヒーローなんだ。


「ええっ、永遠ってば、六年生にもなって、まだこんなの好きなの?」


 蝶子がおれのことを笑う。


「もうすぐ中学生なんだからさぁ、いい加減こういうの、卒業したら?」


 うるさい。黙れ。そんなことはわかってる。

 こんなおれがヒーローになんかなれないってこと、もうとっくにわかってる。


「ねぇ、永遠……」

「うるせぇな。うぜぇんだよ、蝶子。死ねっ」


 そのときの、目をまん丸くした蝶子の顔、おれはいまでも忘れられない。

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