2〜館の使用人s〜

「みなさん、この主人が犯人かもしれません。」

館の主人だけが探偵ではないと聞き、すぐにそう言ったのは中太太郎だった。

彼は冷静に見えるが、やはり、助手が殺されたことに怒りを感じ、一刻も早く犯人を見つけようとしているのだろう。

「ひっ! わ、私はこの田中様は殺していません……。それに、」

「主人さまは私ともう1人の使用人と、3人でいました。離れていたのは風呂の時間だけですし、違うと考えられます。」

主人の話を遮って話し出したのはどうやらこの館の使用人らしい。館の主人はアリバイを話してもらったことにほっとしているようだ。

「まってください。この館の主人、えっと、お名前をお聞きしても?」

「わ、私は先程も言いましたが、中松太郎と申します。」

中田太郎の質問に、主人は困った様子を見せたものの、しっかり名前を教えた。

「では、中松太郎さん、この館には他に使用人はいますか?いるのならば、全員ここに呼んでください。」

「あっ!ずるいー!うちもそれ言おうと思ってたんだけどー!」

御坂倉撫子も同じことを言おうとしていたようだ。やはり探偵同士、考えることは同じということなのだろう。

ただ、今のやり方だと迷惑なだけだが。

「それで、使用人を全員連れてきてください。」

「わ、わかりまs」

「承知いたしました。ではお客様、少々お待ちください。」

主人が言うのを遮って1人の使用人が他の使用人を呼びに行くために部屋を出ようとした。

そのとき超有名な名探偵が言った。

「待ってください!この館には犯人がまだいるかもしれません。ですので、私もついていきます。」

「……確かに危険ですね。ではついてきてください。」

「はい、まずはどちらに行きますか?」

「まずは風呂場からですので右から……」

そうして超有名な名探偵と使用人が部屋から出て行った。

中に残された彼らは気まずそうだ。主人はオロオロしている。

ガタッ

中田太郎が音を立てて椅子を引き、座った。

「……状況を整理しましょう。まだ死体については何も触れていないですよね。」

中田太郎は冷静に、冷静に怒っている。最初からこの表情だった気もするし、今急にこの表情になった気もする。

「まずこいつの死体は……頭を鈍器で殴られて死んだみたいだ。見てわかる通りだ。」

中田太郎が言った通り、田中太郎の頭からは血が出ており、辺り一面が赤黒かった。

(生臭い、だがどこか懐かしさを感じてしまう自分が嫌になる。田中……許してくれ、不甲斐ないこの中田を……。)

この部屋にいる皆の顔を見回しながら中田太郎は話す。だが怒りを隠し切れていないせいか探偵らしくない、素人が品定めをするように見ている。

「……死体は本当に鈍器で殴られただけのようですね。鈍器……といっても5、6Kgといったところでしょうか。今まで見てきた死体の中であればそれが一番近いです。」

鍋田太郎が言う。彼は30前半の見た目をしているが、どうやら殺人事件の経験は豊富なようだ。

「それと……すいません、彼の体に触らせてもらいますね。…………まだ少し温かいです。死んでから1時間は経っていないでしょう。」

また経験からか鍋田太郎が教える。

「中松さん、もう一度聞きます。1時間前から今まで何をしていましたか?」

中田太郎の質問に主人の体がビクッと震える。そして主人は

「私は1時間と少し前から風呂に入っておりました。その間は使用人が2人ほど入口の前で待っていました。その後は……たしか30分ほど前に出てきて、部屋に戻りました。そこからは部屋で軽く仕事をしていたのですが、ここに呼ばれて来ました……。そうしたら田中様が……。」

探偵たちはメモをしながら聞いていた。中田太郎を除いてだが。中田太郎は主人の顔を見続けていた。主人が嘘をついているかを見定めているのだろう。

ふう、と溜息をついて中田太郎は腰を上げる。

「どうやら嘘はついていないようですね。まあ、使用人に尋ねなければまだ完全には信じられませんけれどね。」

中田太郎は当たり前のことを淡々と述べる。

怒りを表に出さないためかはわからない。淡々と述べるだけ、そこには一種の恐怖を感じた。

「そうなると次は探偵の皆さんのアリバイですが……私も含めてありませんよね?全員自室に1人でいたはずです。」

中田太郎が絶対にそうだとでも言うかのように尋ねる。

「そうですね、部屋に1人でいましたよ。」

「わしも1人だったな。」

「うちも1人だったけど?」

「僕も1人でしたね。」

「わっちも1人じゃったぞ。」

鍋田太郎、田辺一郎、御坂倉撫子、田辺一太郎、田杉次三郎の順で1人だったことを明かしていく。

「皆さま、戻りました。」

そこまで話が進んだところで超有名な探偵と使用人が10人ほど増えて戻ってきた。

「私たち使用人は、髪の色で区別されています。ですので、髪の色でお呼びください。私はRed、隣の彼女はBlue、といった具合です。何か質問があればどうぞ。基本私たちは2人以上で行動しており、ここに来るまでのアリバイも2時間ほど前からあります。」

「僕らもアリバイは確認した、と言っておこうか。」

ここに来るまでに既にアリバイは聞き終わったようだ。超有名な名探偵がついていただけある。

「それで、僕たちが行っている間に何かわかりましたか?」

「ああ、今は死体の状況を整理していた。死んでから1時間経っていないこと、鈍器で頭を殴られて死んだこと、主人にアリバイはあるみたいだが探偵には何もないこと、ってところだ。」

慣れているように中田太郎が言う。

「わかったよ、ありがとう中田くん。じゃあ、ここからは解答を見つけるだけだね。」

簡単なことだとばかりに言い放つ。

「その前に、ここの館の使用人たちのアリバイを聞いてもらおうかな。まずRedさんはGreenさんと一緒に主人の護衛をしていたようだね。次はBlueさんと…………」


アリバイは20分程度話し続けられた。

長いな……皆がそう思ったときだった。


<続け!>


【次回予告】

館にいる全員のアリバイは聞き終わったみたいだな。さて、超有名探偵の実力が今披露させられる!さあ、解答編に移ろうか……。


3〜あっという間の解答編〜

次が出るまでに作者が失踪しないといいね!

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ドキッ(犯人が)!探偵だらけの殺人事件!〜ポロリもあるよ(大事なこと)〜 石水 灰 @ca_oh21

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