第182話5.2 魔導車開発の進捗
風呂上がり俺は、またダラけていた。横ではルリとツバメ師匠が俺の膝の上争奪戦をしている。
今日も夕方まで稽古をつけて貰って来て風呂に入るまではフラフラだったのに、元気な事だ。数分後、どっちとも決着が付かず、俺の片膝づつに其々頭を置いて寛いでいた。今日は、膝枕が人気のようだった。
アズキは元気に夕食の後片付けをしていた。
とは言っても、惣菜を購入して来たので直ぐに済んで今は、お茶を入れているようだったが。
『ピンポーン』
そんなのんびりしている所にチャイムの魔道具が鳴る。来客が来たようだ。俺は動けないのでアズキが見に行った。
やって来たのは、ヤヨイとマリ教授だった。
「よう、調子はどうだ?」
「すっかり寛いでいるところ、悪いわね。解析の進捗と今後の予定を知らせに来たわ」
疲れた顔で話をするヤヨイ。少しは動きがあったらしい。
「では、あの宝石の解析について、私から報告するわ」
そう言って、こちらも疲れた顔したマリ教授が話し始めた。あのコハクを操っていた宝石は、これまで見た事も聞いた事も無い特殊な技術で作られた魔道具であったらしい。
使われていた魔法も現代では禁忌とされている魔法の発展系ようで、これもまた危ない技術らしかった。
「魔石では無く宝石を魔道具にしている。それに使われている禁忌魔法。一体、何処の技術なのかしらね。これも関東で調べる必要があるわね」
こう締めくくったマリ教授にヤヨイも大きく肯いていた。
「分かった? 父さん。これも関東で調べるから宜しくね」
さも当然とばかりに話をするヤヨイに俺は、首肯するしか出来なかった。
「それで、今後の予定ね。出発は明後日朝、スワの町に集合よ。シンゴ王子とカーチャ王女は私が連れて行くから、父さんは他の女の子達を連れて来て。頼んだわよ。あ、マリ教授は、まだ、調べ物があるから今回は留守番で。よろしく」
そこまで言って、ヤヨイは転移で帰って行った。本当に疲れていたようだ。残されたマリ教授も、軽く食事を取った後、風呂に入って一緒に寝室に向かった。
本当に疲れているようだったが、ナニを求められたので1回だけしたら眠ってしまった。結構早い時間なのだが、眠気の方が強かったらしい。
おかげで時間が余ってしまった。なので俺は本でも読もうかと思っていたら次は、あの小豆色のメイド服を着たアズキがやって来て求めてきたので、たくさんご奉仕されてしまった。
普段と違うメイド服を着るアズキとするナニはとても新鮮で、またまたハッスルしてしまった。アズキも、よく昼寝したからか、やたらと元気で途中で何処のファミレスだと言わんばかりの服に着替えてくるから大変だった。
何がって俺のナニが!
最終的には、マリ教授、よく起きないな? と思うぐらい夜を楽しんだ。
そして、この
翌朝、遅くに起きた俺は、同じく遅くに起きたマリ教授と共に研究棟へと向かっていた。
「ソウイチロウ先生来てますかね?」
「どうだろう? 他の先生方については良く分からないのだ。すまないね。それより、この後、移動するんだって? 気を付けてね。私を置いて先に行かないでくれよ。今回、結婚を逃したら一生独身になりそうなのだからな」
「分かりました。必ず帰ります」
そんな冗談を2人で話しながら着いた研究棟で、キスをしてマリ教授と別れる。
1人でソウイチロウ先生の研究室へと向かった。
研究室の前に行くと、中が明るかった。どうやら来ているらしい。
数日前に来た時には、誰もいなかったからずっと休んでるのかと思ったけど違うらしかった。
ノックして「どうぞ」と言う返事を待ってからドアを開けると、そこには、ソウイチロウ先生とサチさんがいた。
「おお、トモマサ君、久し振りだな。イチジマに帰っていたのか」
「はい、また直ぐ旅に出ますけど。それで、少し魔導車改良の進捗を聞きにきました」
俺の顔を見て、和やかな笑顔で話す、ソウイチロウ先生。サチさんも軽く会釈してくれたので返しておいた。
ソウイチロウ先生が現状について教えてくれる。
「今、車輪周りの軽量化を進めているところだよ。ただ、中々難しい。やはり小手先の改良では、燃費の改善は難しいかもしれないな」
難しい顔になるソウイチロウ先生。予想通り燃費の改善は難しいようだ。
そこに俺は、新しい提案をする。
「実は、新しい魔法がありまして、これを用いると燃費の悪さの改善ができると思います」
「本当か!」
俺の言葉に飛び付いてくるソウイチロウ先生。目が新しいおもちゃを買ってもらった少年のように物凄く輝いていた。
「はい、一方通行と言う遺失魔法で重力魔法の進化系の魔法なのですが、既に試作機で試して確認済みです。直ぐに教えますので、また試してください」
「そうか、流石、トモマサ君……いや、『建国の父』トモマサ様ですね」
「え、な、何で、それ、あ、え、うぉっほん」
不意打ちだった。
突然、とんでも無い言葉を返すソウイチロウ先生。その言葉に、俺は上手く返せなかった。
「ははは、やっぱりそうだったんですね」
「……」
「いや、すみません。確信は無かったのです。こうも立て続けに遺失魔法を復活させなければ」
「……」
「大丈夫ですよ。誰にも言いませんから。ただ、少し目立ち過ぎですね。復元魔法だけなら天才マリ教授の成果として受け入れられたでしょう。でも、重力魔法に続いて一方通行魔法ですか? そんな物まで復活となると、誰でも気付きますよ。帰狭者がいるとね。それで、アシダ トモマサと言う名前となると……ね」
絶句している俺に、話を続けるソウイチロウ先生。その先生の話が途切れたところで、ようやく俺はおずおずと口を開いた。
「この事は、内密にお願いします」
「はい、大丈夫です。今日も、他に誰もいないから言いましたけど、ヤタロウ達を含めた生徒達はもちろん、他の先生達にも言いませんので。な、サチ。お前も本社では言うなよ」
そんなソウイチロウ先生の言葉に、サチさんは耳を塞ぎながら答えた。
「ああー、何も聞こえない。何にも聞いてない。ここにいるのは、ただの学生のトモマサ君。それだけ。目の前の人が、宗教で聖人扱いされているとか、神社で神として祀られているとか、ありえないから!」
「ははは……やっぱりそう思いますよねぇ」
サチさんの言い様に俺は、乾いた笑いとともにつぶやいた。目の前の若造が、聖人でかつ神である。それって、どんな詐欺師だ。と思わず突っ込みたくなる存在である。俺でもそうツッコむ自信がある程だ。
そんな事を考えているところにソウイチロウ先生が口を開いた。
「あー、すみません。不用意でしたね。2人の時に話すべきでした。もう言いませんので、ご容赦願います。サチも済まんな。てっきりサチも気付いてると思ってたんだがな」
「気付くわけないでしょう。貴方程、関わっていないのだから。私のこと見てれば気付くでしょう?」
「ははは、済まん済まん」
ソウイチロウ先生の言葉に懸命に抗議するサチさんだったが、いつの間にか2人はいい感じになっていた。話をしながら2人の距離は近づき、そして、抱き合いそうになる……だが、今はそんな時では無い。一方通行魔法を教えないといけないのだから。
だから、俺は雰囲気を壊して話を始める。
「すみません。あまり時間が無いので、一方通行魔法の話を進めますね。確か、ソウイチロウ先生は、重力魔法使えるようになってましたね。その前提で進めます。良いですか?」
「あ、ああ」
いい雰囲気を壊されてか、若干顔が赤いソウイチロウ先生。サチさんに至っては、真っ赤な顔を両手で覆い隠している。俺の存在を忘れていたかのようだ。
でも先生から了承を得られたので、俺はさっさと魔法の説明を進めた。
あんな雰囲気を見せられた2人を前に長居をするほど、俺は根性座っていないので。説明終了後は、「それでは、帰ります」とだけ言って、そそくさと退散した。
部屋を出た後、2人は盛り上がるのだろうかと少し考えたが、流石にいい歳した大人だし、それは無いかと考え直して寮へと帰った。
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