第179話4.42 閑話 アズキの願い

「カリン先生にアズキ、他のみんなもありがとう。おかげで助かったわ」

 カリン先生、アズキ、マリ教授、ツバメ師匠、コハクにカーチャ王女を前にしてヤヨイが頭を下げていた。

「いえ、ヤヨイ様。本当に頑張ったのはトモマサ様です。そのお気持ちは、トモマサ様にお伝えください」

「そうですよ。ヤヨイ様。私達がしたことは、所詮は時間稼ぎです。最終的には、トモマサ君がいなければ、どうにもなりませんでしたからね」

 ヤヨイの謝罪に言葉を返すアズキとカリン先生。

 これは、ヤヨイが若返った翌日に皆で様子を見に行った時の話である。


「それで父さんは、まだ寝てるの?」

「はい、ヤヨイ様に魔法をかけられて気を失われてから、まだ、目を覚ましておりません」

 ヤヨイの問いに心配そうに話アズキであるが、マリ教授が優しく諭していく。

「アズキさん、大丈夫。少し限界を超えて魔素を出し過ぎただけだから。私は、実家の治療院でこれまでにも、ああ言った症状を見て来ている。すぐに目を覚ます。だから、心配しなくても良い。ヤヨイ様もね」

 アズキの話を聞き同じように暗い顔をしていたヤヨイを見たのだろう。

 マリ教授がヤヨイにも優しい言葉をかける。

「な、私は何も父さんがこのまま目を覚まさなかったらどうしようなんて心配していないわ!」

 慌てて反論するヤヨイだが、語るに落ちるとはこの事だろう。

 自然と周りの人達も笑顔になる。


「大体、魔素量、100万って何なのよ。昨年目覚めた時は、25万ぐらいだったはずでしょ?」

 照れ隠しなのだろう、赤い顔をしながら捲し立てるヤヨイ。

 そこに、冷静にカリン先生が説明を返す。

「そうなんです。元々は25万ぐらいだったんです。ですけど、その、私達と、ナニをして、興奮して……」

 言ってて恥ずかしくなったのか、言葉に詰まるカリン先生。

 その後をアズキが話す。

「トモマサ様は、たくさんエッチな事をして興奮して魔素量を増やしました」


 アズキのストレートな良いように顔を赤らめるマリ教授にカリン先生、ベッドでは積極的でもまだまだ恥ずかしい年頃のようだ。

 そんな3人を見ながら溜息を吐くヤヨイだったが、トモマサの異常な魔素量の上がり方はやはり気になるようだった。

「しかし、そんな魔素量の上がり方は今ままで聞いた事無いのだけど、本当にそれが原因なの?」

「はい、ヤヨイ様。詳しくは、今データ収集中ですが、ほぼ間違い無いかと」

「私もそう思います。これ迄のトモマサ君の魔素量の上がり方を纏めてみましたが、その、トモマサ君が激しく興奮した翌日には上がっている傾向が顕著に見られました」

 ヤヨイの疑問に返事をするマリ教授とカリン先生、言い方が段々研究者ちっくに変わっていている。


「例をあげます」

 そう言って、話を進めていくカリン先生。

1.アズキと初めてのナニ 25万 ー>32万

2.カリン先生と初めてのナニ  ー> 35万(推定)

3.アズキとカリン先生と3人でナニ ー>60万(推定)

4.アズキとカリン先生の下着攻撃 ー>75万(推定)

5.マリ教授とナニ ー>増加量不明

6.アズキとカリン先生とマリ教授と4人でナニ ー>100万越え


 極めてわかりやすい説明だった。5のところでマリ教授が「私だけだとあまり興奮しないのか。使い古しはダメなのか」と若干凹んでいたけど。


「何なの? 父さん、エロザルなの?」

 ずっと説明を聞いたいたヤヨイ、額に手を当てようやく絞り出した言葉がこれだった。

 その言葉に苦笑するカリン先生達。

 誰も反論はしなかった、ある意味認めているからだろう。


 だがそこで、アズキが放った言葉がヤヨイに更なる苦悩を与えた。

「ヤヨイ様、トモマサ様の魔素量の更なる向上に知恵をお貸しください」

「え? もう十分でしょう、これ以上、人間離れしなくても……」

 顔を顰めながら答えるヤヨイにカリン先生が、言葉を重ねる。

「しかし、今回は、この100万を超える魔素量でもギリギリでした。何が起こるかわからないこの世界、鍛えられるなら鍛えておいた方が良いかと思います」

 その言葉に、考え込むヤヨイ。

 そこにまた、アズキが声を上げる。


「それに、これは、魔素のためだけでは、無いのです」

「魔素量の増量のためだけでは無い?」

 またまた顔を顰めるヤヨイにアズキが顔を真っ赤にしてモジモジしながら答える。

「はい、実は、あの、トモマサ様の、魔素量が増えると、あの……とっても気持ちが良いのです」

 益々、顔を顰めるヤヨイ。そこに、マリ教授が声を上げる。

「そうなのか! それでか! 道理で前の男の時とは、比べ物にならんと思っていたのだ!」

 その声に、場の全員の視線が集まる。

 声が大きくてちょっとびっくりしたようだ。

 話したマリ教授ですら声の大きさに驚きながら、恥ずかしそうに話を続ける。


「す、すみません。私も気持ち良さが段違いだと思っていたんです。でも、それはトモマサ君のテクニックだと思っていたのですが、違ったんですね。しかし、この事象も同時に研究が必要ですね」

 その言葉に「え?」と言う顔をするヤヨイ。そんな研究が何の役に立つのかと言わんばかりの表情だ。

「いやいや、重要な研究ですよ。魔素量が多ければ気持ち良い。気持ち良ければ魔素量が上がる。相乗効果ですよ。その上、回数が増えれば出生率も上がりますよ。世の中の為にこれほど役立つ研究は無いと思います」

 とっても為になる研究だと主張するマリ教授であるが、ヤヨイの表情はまだ変わらない。

 そこにカリン先生のフォローが入る。


「そうですね。魔素量が増えると貧困からの脱出に繋がりますよ」

 その言葉に大きく頷く、マリ教授。

 それでも、まだまだ変わらないヤヨイの表情。

 まるで、「貴方達が気持ち良くなりたいだけでは無いのか?」と言っているかのようだ。

 そこに、アズキがまだ赤い顔で意を決したように話し出す。


「あの、私が気持ち良くなると、トモマサ様も喜んでくれます。もっとトモマサ様を喜ばしたいのです。お願いします。ヤヨイ様、知恵をお貸しください」

 言い終えて、頭を下げるアズキに、ヤヨイは溜息をついて話し出した。

「はぁー、アズキには負けるわ。分かったわ。助けてもらった恩もあるし、少しの助言と参考資料を貸すわ。でも、その後の相談は、私のいないところでやってね」

 言い終えて、アイテムボックスから何かの本を出してくるヤヨイ。

 そして説明を始める。


「話を聞く限り、父さんは、創作世界でしかあり得なかったシチュエーションを実体験して興奮しているわね。先ずケモミミ巨乳メイド、これは21世紀には絶対に存在しなかったものなのよ。次に、16歳の女教師、これも絶対とは言わないけど無い存在ね。で、美人教授は、いないにしても美人講師ぐらいなら、まぁ、存在はしていたわ。この辺を鑑みるて、行き着く先は、『コスプレ』よ」

 途中までウンウンと肯いていた3人であるが、『コスプレ』と聞いて頭に『?』を浮かべていた。

「『コスプレ』知らないの? コスチュームプレイ。普段と違う格好して遊ぶ事よ。貴方達もいろんな下着で迫ったのでしょう? そう言う事よ」

 ヤヨイの話を聞いて少し納得したのか。首肯する3人にヤヨイは、話を続ける。


「そこで、この本たちよ。これはね、昔、大変革の後に出てきた本なの。大昔はね、王城の図書館に保存してたの。でも、ある時の王子が嵌まってしまって、引きこもりになってしまってね。仕方なく、私が保管していた本なの。その中の代表的なやつよ」

 そう言って、押し出してきた本は、いわゆる、薄い本だった。しかも、かなり成人向けのやつだ。

「これを、貸すわ。後は、自分達で考えて。私は、父さんの様子でも見てくるわ」

 言い終えると同時に、ヤヨイは席を立って部屋を出て言った。


 その後、部屋でどんな会話が成されたかは分からない。

 だが、

「この女の人、何でエプロンだけなの?」

 とか、

 「学生服で!?」

 とか、

「尻尾でそんな事出来ません!」

 とか、

「そんな体勢で!?」

 とかだけは、トモマサの様子を見に隣の部屋に行ったヤヨイにも聞こえたのだった。


 ちなみに、この話をずっと聞いていたツバメ師匠が

「私も早くナニして欲しいのだ」

 とつぶやいていたり、カーチャ王女が

「愛する人と他の人のプレイを聞くなんて興奮します」

 とつぶやいていたが、興奮した3人の耳には届かなかったようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る