第172話4.35 対戦準備
イクノの街から帰った俺達は、新調した武器防具に慣れるためにもスワの町で、狩に勤しんでいた。
「婿殿、この大太刀は良いものだ。切れ味が違う」
「こちらの小太刀も違いますね。これなら、ジャイアントウルフも一刀両断できそうです」
「この杖も素晴らしい。魔素の扱いが極めてスムーズに行える」
ミツヨリお義父さん達は、新しい装備に満足のようだ。
防具の方は、今の所攻撃を受けていないので評価のしようが無いのだろうが、動きに支障がないところを見ると概ね良好なのだろう。
俺は、そんな事を考えながらコハクを見ると、コハクもコハクで、笑顔で魔物に鎚矛を振るっていた。
「それ」
『ドゴーン』
「そこ」
『ドゴーン』
「楽しー」
盛大な音とともに、無邪気な声まで聞こえて来る。
見るとジャイアントビーでもデビルシープでも関係無く、一撃で潰している。
まるでゲームセンターにあるモグラ叩きのように。
「恐ろしい光景だな」
ボソリと声が聞こえたので見てみると、ミツナガさんが引き攣った顔でコハクを眺めていた。
魔法使いで力が弱いミツナガさんから見たら信じられない光景なのだろう。
そんな風に魔物を倒しながらスワの町を進んでいくと、先に進んで魔物を狩っていたアズキ達と合流することが出来た。
「お疲れ様。アズキ、調子はどう?」
ジャイアントウルフ相手にシンゴ王子とツバメ師匠が連携の確認をしている後ろで、暇そうにしているアズキに声をかける。
「トモマサ様。お帰りなさいませ。明日に向けての確認は順調です。今は対ドラゴンへの対応確認をしておりますが、先程までは私が風魔法を乗せた弓での連射で、カリン先生が土魔法で作った礫を風魔法での連射で、殲滅戦への確認を行いました。特に問題はございません」
「魔素不足に陥ったりはしないかい?」
「私は魔物が数千匹を超えない限りは大丈夫です。カリン先生なら数万引きは大丈夫だと」
おお、そんなに行けるのか。それならこの街中の魔物を相手しても足りそうだ。
俺がそんなことを考えていたらカリン先生がツッコミを入れてきた。
「私とアズキさんの魔素量は、トモマサ君ほどでは無いにしても十分に人外です。ついでに言うならツバメさんも鬼人族を超える程の魔素量を持ってます。おかげでトモマサ君がロリに目覚めたかと心配にまりましたよ。ですから心配なら他の人にしてあげてください」
俺のロリ疑惑、そんなものが影で起こっていたのか。
知らなかった……。
そんな俺の心配をよそに討伐は進み、昼からは2チームに分かれて別行動となった。
俺のチームは、対ドラゴン組。
シンゴ王子、カーチャ王女、俺、ツバメ師匠、コハクである。
また、ジャイアントウルフで連携のチェックをしているが、弱すぎて相手にならない。
結局、追跡魔法で魔物まくって街の端っこまで行き、転移で帰って来ることになった。
残りの広域殲滅組も手当たり次第に弓と魔法で殲滅したらしい。
ミツヨリお義父さんが、
翌朝、俺達が、朝食を食べている所に1人の武者がやって来た。
「お屋形様、食事時に申し訳ございません。ノブシゲで御座います」
「おお、ノブシゲ。ご苦労。お主が来たという事は、動きがあったか?」
「は! ドラゴン徘徊の兆候が見られます。本日は、討伐は控えられた方が宜しいかと」
「いや、今日は打って出る。婿殿の力を借りてドラゴンを倒す!」
「婿殿? ドラゴンを倒す?」
力強く宣言するミツヨリお義父さんにノブシゲさんは、驚いた顔をしてつぶやいていた。
「おお、そうだ。お主には、紹介していなかったな。こちらが、カリンの婚約者のトモマサ殿だ。そしてその隣が、連合王国第5王子のシンゴ様だ。そしてその傭兵仲間達だ。こっちは、スワ家家老のスワ ノブシゲだ」
「初めまして、アシダ トモマサです」
「初めまして、アシダ シンゴです」
「「「初めまして」」」
俺に続いてシンゴ王子に他の皆と挨拶をしていく。
「初めてお目にかかります。スワ ノブシゲで御座います。この度は、お力添え忝う御座います。そして、カリンお嬢様、ご婚約おめでとう御座います。あの小さかったカリンお嬢様がご婚約とは、感無量に御座います」
目頭を押さえながら挨拶をする、ノブシゲ家老。本当に嬉しそうだ。
「ノブシゲ、ありがとう。でも、お祝い事は、ドラゴンを倒して街を解放してからですよ」
「そうで御座いますね。では、お屋形様、私は、ドラゴン監視に戻ります。討伐において何か別の指令があれば聞いておきますが」
「そうだな。ドラゴン討伐後は、速やかに街中の魔物の討伐に移りたい。その心算だけはしておいてくれ」
「分かりました。では御免」
軽く礼をして出て行くノブシゲ家老。ヨリミツお義父さんと最低限の話しかしていない。
信頼のある腹心のようだ。
「さて、今日は大一番になる。皆、抜かり無きよう準備をしようではないか」
「「「「はい」」」」
そして、ミツヨリお義父さんの声で皆は慌ただしく動き出した。
---
その頃、シオジリの領域では、クイナが援軍と合流していた。
「フフフ、やはり来られましたか。予想を裏切らない人だ」
「何よ。悪い? 一番確実な方法を取ったまでよ。それより、そのターゲットは、何処にいるの?」
「残念ながら、少し遅かったですね。奴は、魔物の大群を引き連れてスワの町へと向かいましたよ」
「何ですって! 貴女、それをそのまま送り出したの?」
「仕方がないでしょう。私1人ではとても対処できない数なのですから、それにあの街は、誰も住んでいないのでは?」
「残念ながらいるわ。スワ家の面々が、街を解放しようと魔物の討伐に乗り出しているの。急いで転移するわよ! 捕まって!」
そして、シオジリの領域から全ての人影が無くなった。
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それぞれ準備を終えた俺達は今、ドラゴン襲撃予定地にて待機していた。
辺りにいた魔物はカリン先生の魔法により綺麗に片付けられている。
「辺りの魔物は一掃しましたね。追跡魔法では、ドラゴンの到着は1時間後ぐらいです。ミツヨリお義父さん、ちょっと一服入れましょうか」
言ってから俺は、アイテムボックスの中を漁って王都イチジマで購入していたケーキにドーナッツにクッキーにおはぎにと並べて行く。
当然、テーブルもアイテムボックスから出している。
それを見て、1番に寄って来たのはツバメ師匠だった。
丹波栗で作られたモンブランを貪り食べている。
その内にアズキが寄って来て、お茶をと俺に言うので、ティーセット(お湯付き)を出してあげる。
紅茶にコーヒーに緑茶にほうじ茶にと選り取りみどりだ。
全員にどのお茶が良いか聞いて配っている。
本当にできた娘だ。
早く奴隷解放して自由にしてあげたい。
そんな事を思いながら俺もおはぎを食べる。
やはり丹波産大納言小豆を使ったおはぎだ。
豆の旨みが違う。
ヨリミツお義父さんもケーキよりおはぎが好きなようだった。
「美味い」とバクバク食べてる。
そんな決戦前の暢んびりした時間を過ごしている時、追跡魔法に一つの反応があった。
「ヤヨイ?」
俺のつぶやきに反応したのはアズキだった。
「如何されましたか? ヤヨイ様に何かございましたか?」
「いや、追跡魔法に反応があったんで調べたらヤヨイだった。でもあいつは、イチジマにいるはずだようなぁ?」
俺の言葉に悩んでいるアズキ。そこにカリン先生が口を挟んで来た。
「んー、でも追跡魔法の反応はヤヨイ様なのでしょう? 間違いないようなら、会いに行くべきではないかしら?」
その言葉で方針は決まった。
俺は1人ヤヨイの反応があった場所へと飛んで行った。
いや、魔導車は出してないよ。
目立つから。1人だし、
そして俺が降り立った場所には、ヤヨイとクイナさんと騎士鎧を着たメイド長が立っていた。
「あら、父さん。凄いわね。何でここが分かったのかしら?」
突然現れた俺に平然と声をかけるヤヨイ。
クイナさんとメイド長なんて驚いて飛びかかる寸前だと言うのに。
えらい違いだ。
「ああ、丁度スワの町へと来ていてね。カリン先生の両親に手を貸すことにしたんだ。これから、
俺の言葉に少し驚いたような顔ををしたヤヨイだったが、即座に妖しい笑みを浮かべて移動を了承した。
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