第164話4.27 シラホネの町2

 風呂上り俺は、なんだかやられた気分になっていた。

「シンゴ王子に乗せられてしまったな」

 待合室にあるマッサージチェアで独りごちる俺。

「真剣に考える」なんて言ったけど、結局はOKを出したようなものだからだ。

 断るには、それなりの理由がいるだろう。性格は別にして。

 まぁ、それでもカーチャ王女1人ではなくアズキやカリン先生もいるのだし何とかなるかな。

 それに、あれ程の美少女だ。

 仲良くしたくないと言えば嘘になるしね。


 そんな事を思いながら、マッサージを続ける。

 それにしても、中々高性能な魔道具だ。

 今日1日の疲れが取れていくようだ。

 アズキのマッサージには劣るけど、1000年前21世紀のマッサージチェアより気持ちいいかもしれない。

 相変わらず、ホンダ魔道具恐るべしである。

 あまりの気持ちよさからか考え事をしていても、だんだんとまぶたが閉じていく。

 そして、思考は変な方へと進んでいく。


 これまで、Mの人とナニした事無いなぁ。

 やっぱり、蝋燭とか鞭とか使うのかなぁ。

 でも、例え相手が望んでも傷付けるのは嫌だなぁ。

 それなら、やっぱり言葉攻めかなぁ。

 「いやらしいヤツだな」とか「本当は、欲しいんだろう」とか言ったら喜んでくれるんだろうか。

 もしくは焦らしかな。

「お前は、他の女達の後だ」とか「欲しければもっと奉仕をしないとな。こうやってな」とか他の女の人とのナニを見せつけたら興奮してくれるんだろうか。

 などなど危ない妄想を重ねているうちに、マッサージが終了したようだ。

 『マッサージを終了します』という音声案内と共にマッサージチェアが動作を止めた。

 その音声で目を開ける。


「なんて妄想だ。危険だ」

 俺は1人恐怖を覚えた。

 実は俺、カーチャ王女をすんなり受け入れられるかもしれない。

 そんな新しい扉を開けそうな妄想だったから。


 そんな事を考えながら、ふと見ると下半身がとても元気になっていて浴衣を押し上げていた。

 俺は慌てて隠す。

 が、周りには誰もいなかった。助かったようだ。

 だが、実は、目を閉じて下半身を膨らませている俺を見て他の客が逃げて行っただけかもしれない。

 そう思うと、いても立ってもいられなかった。

 俺は、慌てて部屋へと帰った。


 部屋に帰ると驚いた、部屋の中に全員が揃っていたからだ。

「お帰りなさいませ、トモマサ様。皆さんで食事に向かうのに、トモマサ様をお待ちしておりました」

 アズキが挨拶がてら教えてくれる。

「ごめん、マッサージチェアに乗ってたら遅くなった」

 皆に遅れた理由を言いながら謝ると、アズキから悲痛な声がした。

「トモマサ様! そんな魔道具に頼らずとも私が……は!、ひょっとして、私のマッサージでは物足りないのでしょうか⁉」

「いやいやいや、違う、違うよ! アズキのマッサージは最高だよ。だからね、ちょっと確かめただけなんだよ。今のマッサージチェアの機能をね。今度、自分で作るときの参考にするためにね」

 よ、よ、よ、とばかりに倒れ込むアズキに必死のフォローをする俺。

 いや、本当に気持ちいいんだよ。アズキのマッサージ。とってもね。

 だけど、アズキのマッサージは、ただ凝りが取れるだけでは終わらないから。

 やりだすとナニのマッサージまで始まるから。

 食事前にする事ではないから。と心の中で更にフォロー? を言う俺。

 そして、「後でアズキのマッサージを頼むよ」と言ってやっと気を持ち直したアズキを連れて食事会場へと向かった。

 もちろん、他の人と一緒に


 シラホネでの夕食は、イワナ懐石でした。

 イワナのお造りに始まり、イワナの唐揚げ、イワナの甘露煮、イワナの燻製、そして、もちろんイワナの塩焼きどれもこれも最高でした。

 お酒が飲みたくて仕方がなくなるほどに。

 そしてシメには温泉で煮たお粥を美味しくいただいた。


「はぁ〜、昨日の肉尽くしとは違って、イワナ尽くしも良いなぁ」

「はい、大変さっぱりしてて美味しかったです」

「美味いのは美味かった。だが、私としては、もう少し脂っ気が欲しいな」

 ゆっくりと食事を終えた俺たちは、皆で俺の部屋で寛いでいる。

 そこで出た俺の感想に、同意をしてくれたアズキとは異なり、ツバメ師匠には脂っ気が足りなかったようだ。

 同じ年齢なのにえらい違いだ。

 他の皆もツバメ師匠の言葉に苦笑を浮かべている。

 そんなのんびりした時間を過ごして腹がこなれた頃に、またツバメ師匠が風呂に誘ってきた。

 どうやら、そこそこ大きな家族風呂があるらしかった。

 折角なので、皆で行くことにする。

 もちろん、シンゴ王子とカーチャ王女は別だが今回からはコハクも来るようだ。

 結構な大所帯である。


 いつの間にかついて来ていたルリを含めて、皆で湯船に浸かる。


「流石に、この人数では狭いか。特にルリが大きいものな」


 このお風呂、家族風呂としては格段の大きさだが、それでも5人プラス1匹は辛い。

 特に大きくなったルリが。

 そんな事を言ってると、

「こうすれば少し広くなるぞ」

 とツバメ師匠が膝の上に乗って来る。

 確かに少しスペースはできたけど、もともと小さいツバメ師匠だから大した違いはないな。

 と思ってると、今度は右横にぴったりと引っ付いて来る人がいた。

 なんとコハクだ。

 今日正式に付き合いだした俺とコハク、いきなりそんな事して恥ずかしくないのかと思わなくもないが、大丈夫らしい。

 俺の方に頭を預けてくるほどの密着具合だ。


 そしたら今度は、左手を取られた。

 カリン先生だった。

 コハクに対抗するかのように胸の間に俺の腕を挟んで密着してくる。

 左右と前から女の子たちが密着してくる。

 身動きが取れないぞ。

 とそれぞれを見ながら考えているところで、目が合った。

 そう、アズキと。

 アズキは困った顔をしていた。何にって? 恐らくそれは、どこに引っ付こうかと思ってだろう。


 考えあぐねた末にアズキが取った行動は、背後から抱きついてくる事だった。

 背中に大きなメロンが2つ押し当てられる。

 非常に柔らかい。

 おかげでツバメ師匠の前だというのにナニが反応しまくってしまった。


 膝を折り曲げてツバメ師匠には当たらないようにしたので気付いていないようだが。

 そしてもう1つ、気付かれなかった理由がある。

 それは湯が白濁している事だ。

 湯に浸かっている限り、見えないのだ。

 ナニが。非常に助かっている。ビバ! 白濁湯、ビバ! シラホネ温泉である。

 ついでに皆の体も見えなくなっていた。

 だがこれがまた良くて、妄想を掻き立ててより興奮する原因になっているのだが。


 皆で、密着して10分ほどしただろうか。

 流石に疲れて来た。

 ルリに至っては、最初こそ広くなった湯船でのんびりしていたが、もう飽きたようで洗い場で丸まっている。

 気を使って声をかけてこないけど、本当は体を拭いて欲しいのかもしれない。

 そして、その無言のプレッシャーに負けたのかアズキが

「お先です」

 と上がって行った。

 背中が少し広くなる。

 次はツバメ師匠だった。逆上せて来たようだ。

 体が小さいから、逆上せやすいのかもしれない。

「部屋で休む」

 と帰って行った。


 残るは2人だったのだが、そこからは少し様相が変わった。

 何と、コハクが俺の上に覆いかぶさって来たのだ。

 そして、耳元で「しーよー」と言ってくる。

 それに驚いたのはカリン先生だ。

「あわわ、私は、先に上がりますね」

 と出て行こうとするが、それをコハクが止めた。

「カリンちゃんもー一緒にーしよー」

 と。


「だ、ダメですよ。コハクちゃん、初めてでしょう。初めてぐらいは、2人っきりでした方が……」

 した方が何なんだろう。

 尻すぼみで聞こえなかったけど、そのカリン先生の言にコハクが答える。

「カリンちゃんと一緒がいいー」

 その言葉で、話は纏まった。

 そしてコハクの俺へのキスで始まる、ナニ。

 やがて、それはカリン先生を巻き込んで……やり過ぎた。

 其々に3回もしてしまったのだから。


 かなり長い時間、風呂にいた俺達は、逆上せかけた体を冷やしながら部屋へと戻った。

「お疲れ様でした」

 部屋に戻った俺たちに、労いの言葉と冷たいお茶を出してくれる、アズキ。

 アズキが出た後、何があったか当然のように分かっているようだった。

 その上で、お茶を飲む俺に要望を伝えて来た。


「トモマサ様、後でマッサージして差し上げます」

 その言葉を聞いたカリン先生、そそくさとお茶を飲み終えてコハクを連れて部屋を出て行った。

 隣の部屋で寝るからと。

 こちらもこちらで、この後、どうなるか分かっているようだった。


 そして、アズキのマッサージを受ける……結局こっちも3回でした……。

 これって、絶対やりすぎだよな⁉ と思いながらその日は、眠りについた。

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