第152話4.15 冷凍睡眠2
「実は、冷凍睡眠(コールド・スリープ)装置が壊れました。とは言っても、実際には、魔素を収集する魔石なのですが。その為、このままでは、装置が異常停止してしまいます」
「さっきの音は、その魔石の壊れる音か」
タカモリ里長の言葉に頷くナツコさん。更に話を続ける。
どうやら、この冷凍睡眠(コールド・スリープ)装置恐ろしく燃費が悪いらしい。
稼働する為に、エルフの里の住人から魔素を集める必要があったようだった。
今回は、その
その為、冷凍睡眠(コールド・スリープ)装置が止まるのは時間の問題だとか。
「それなら、直ぐにその場所に案内してくれ!」
俺の悲痛な叫びを聞いたナツコさんが、建物内へと案内してくれる。
「まだ、稼働しています。ですが、後、10分ほどで止まりそうです」
案内された部屋で、冷凍睡眠(コールド・スリープ)装置のメイン制御用魔石を確認したナツコさんの言葉を聞いた俺の手を、またアズキが握ってくる。
取り乱さないか心配なようだ。
「ナツコさんと言ったっけ? 教えてください。先ずは、この装置の稼働時間を伸ばす方法を。次に起こす方法を」
焦り過ぎないよう、アズキの手を握りながらゆっくりと話す俺。
ナツコさんの答えは
「時間を伸ばすには、魔素を供給するしかありません。ただ、大量の魔素が必要です。1時間あたり、およそ100万です」
だった。
「1時間に100万⁉ そんなにかかるのか? この装置、どうやって動かしていたんだ?」
普通の人間にはとても扱えないほど桁違いの魔素量だった。
「それは、里長である私から説明しましょう。先ほど、里の住民から魔素を集めている事は説明したと思いますが、この里には、里に入った生物から魔素を自動で収集する仕組みが隠されているのです。その仕組みで、エルフの里4000人全員の魔素を収集して稼働させていたのです。装置を稼働させるために、ミヤマの町の大使館員なんかも呼び寄せたりとかなりギリギリの状態で。まぁ、今は関係のない話ですが……」
タカモリ里長、色々言っているけど、今、重要なのはその装置が壊れたと言うことだ。
毎時100万の魔素量となると、俺でも1時間ほどで限界が来る。
ゆっくり若返らせる方法を考えている訳にはいかなさそうだった。
兎も角、話を進めようと俺は、ナツコさんに続きを促す。
「次は、目覚めさせる方法ですね。起床シーケンスが起動すれば目覚めると思います。ただ、装置の一部が壊れてるので、不確定です。それよりも問題は、目覚めた後です。この装置は確かに幾分か細胞を活性化させるのですが、それでどれだけ命を伸ばせるのか見当もつきません」
「寿命か。結局そこに行き着くのか」
頭を抱える俺。
八方手詰りだった。
俺が考えあぐねているところで、マリ教授がナツコさんに質問する。
「そもそも、この冷凍睡眠(コールド・スリープ)装置は、何をしているんだ? 何故、細胞が活性化するのだ?」
「あ、はい。それはですね、詳細は分かってないのですが、この装置、どうやら狭間の領域を再現しているようです。ほら、帰狭者は出てくるまで歳をとらないでしょう? その現象を模しているとか。その細胞の活性化についても高濃度魔素の中にいた為の副作用としか判明しておらず、詳細は不明なのです」
「と言う事は、凍らせて眠っているわけでは無いのか?」
俺の言葉に首肯するナツコさん。
俺は大きな勘違いをしていたようだ。
冷凍睡眠(コールド・スリープ)装置って言うから、てっきり凍らせているものだと思っていたが全く違うらしい。
「ナツコさん、この装置について分かっている事でいい、教えてくれ」
「はい、それは構いませんが、そろそろ、時間が……」
「それなら俺が――「いや、それは、私が供給します」」
俺が魔素を供給しようとしたところに、カリン先生が手を上げてきた。
続けてアズキも
「トモマサ様の魔素は温存しておいてください。この後、必要になるかも知れませんから」
と、供給側に回るようだった。
2人で魔素の供給方法をナツコさんに聞いている。
カリン先生が45万ほど、アズキで5万ほど、合わせて50万を超える魔素量。
稼げて30分だった。
だが貴重な30分だ。
「2人ともありがとう。時間までに必ずヤヨイを救う手立てを見つけてみせるよ」
2人の手を握り礼を言う俺。
だが2人ともさっさと話を聞けと言わんばかりに俺は追い払らわれた。
そして隣の部屋でナツコさんからのレクチャーが始まった。
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