第142話4.5 大台

 翌朝、俺はマリ教授とカリン先生が寝ているベッドの上で、呆然としていた。

 そう、昨日、研究室で襲われた俺だったが、もっと魔法を見せて欲しいという、マリ教授に引き摺られて寮でもナニしてしまったのだ。


 しかも、アズキとカリン先生と合わせて4人で。


 これまでは恥ずかしがって他の人とは一緒にしなかったマリ教授であるが、新しい魔法の魅力は恥ずかしさに勝ったらしい。


 ちなみに、コハクとツバメ師匠は、客室で眠っている。

 ツバメ師匠が少しごねたが、一緒に風呂に入る事で納得してもらった。

 後、また膝に座る事を約束させられて。


「トモマサ君、おはよう。昨晩は、すまなかったな。魔法に興奮してしまって、恥ずかしいところを見せた」

 呆然としている俺に、軽く頭を下げているマリ教授。

 朝起きてみて見えてきた光景に、昨晩の痴態が思い出されて、流石に恥ずかしかったようだ。


「ははは、構いませんよ。確かにちょっとやり過ぎましたけど、お陰でマリ教授の本性が見えた気がしますし。嬉しかったです」

 実は、マリ教授、密かに遠慮している感があって気になっていたのだ。

 歳も他の子達よりも高いし、前に男がいたしとか気にしている様子だった。


「そう言ってくれると、私も嬉しいな。ところで、何だか呆然としていたようだが、大丈夫なのか? 流石に疲れが残ってるのか?」

「いえ、疲れは残って無いですよ。ただ、ステータスを見て呆れていただけですよ」

「ステータス? 何か変わっていたのか? 魔法の使いすぎで魔素量が減っていたとかか?」

「いえ、その逆です。魔素量が100万を超えてしまったのです」

「……」

 俺の言葉にマリ教授、何だか固まっている。


「100万って言ったか? 魔素量が?」

 俺は、大きく頷く。


「貯金では無く?」

 再度俺が、頷く。


「……」

「あの、マリ教授?」

「……」

 どうやら思考がフリーズしてしまったようだ。


 完全に固まっている。

 目の前で手を振っても動かない。

 肩を揺すっても動かない。

 うーん、そう言えば、これまで俺の魔素量の事、マリ教授に教えてなかったかもしれない。

 いきなりの魔素量100万は刺激が強かったようだ。

 仕方ない。

 揺すっても戻ってこないマリ教授に俺は、抱きついて思いっきりキスをする。


「ん、んんんー、んんんんーーー」

 ディープな奴に移行したあたりで意識が戻ったようだ。

 いや、元々意識はあったけどね。


「い、いきなり何をする。昨日あれだけしたのにまだしたり無いのか」

 口を離した俺に抗議するマリ教授。

 いや、フリーズしたマリ教授を再起動させただけですよ。

 俺を色魔みたいに言うのはやめて欲しい。


「それより、魔素量が100万ってどう言う事だ? いや、多いとは思っていたんだ。ナニした後の私の魔素量の上がり方が凄かったからな。それでも、数万ぐらいだと思っていたのに。100万って空想に出て来る古代竜レベルではないか!」

 とうとう比較対象が上級ドラゴンを超えて、空想の生物へと移行していた。

 俺は呆れながらもマリ教授に魔素量が多い理由を説明する。


「確かに、性的興奮で魔素量が上がったと言う話は聞いた事がある。だが、あれは都市伝説レベルだぞ。誰も実証した人はいないのだぞ。実証できるほど、魔素量が上がらなかったとも言う事でもあるのだが。本当なのか?」

 ははは、できる事なら俺も信じたくありません。

 聞けば聞くほど、俺の性癖を否定されてる気がして来るので。

 などと考えてると、マリ教授の反対側から声がした。


「うーん、おはようございます。朝から元気ですね。マリ教授」

 これまで、ずっと寝てたカリン先生だが、興奮して大きくなったマリ教授の声で目覚めたようだ。


「ああ、すまない。起こしてしまったようだな、カリン先生。ところで、トモマサ君の魔素量が100万を超えたらしいのだが、本当なのか?」

 挨拶もそこそこに問い質すマリ教授の言葉を聞いたカリン先生が、俺に抱きついてきた。


「とうとう100万超えたんですね。おめでとう。ふふふ、昨日は初めての4人だし激しかったから、ひょっとしたら上がったのではないかと思っていたのですよ」

「な、と言うことは、本当なのか」

 カリン先生の言葉に、マリ教授、また絶句してしまう。


 そのマリ教授に構わずカリン先生が、俺の魔素量上昇遍歴を披露していく。

 アズキと何してとか、3人でしてとか、スケスケ下着でとか温泉の露天でとか赤裸々に解説するの、恥ずかしいからやめて欲しい。


「カリン先生、ありがとう。大体わかったわ。これは、じっくり研究する必要があるわね」

「研究⁉ やめてください。そんな恥ずかしい事」

 驚いた俺は、裏返った声で懇願してしまう。


「恥ずかしいのは私も一緒だ。なにしろ、これから色々とナニする事になるのだからな。だが、それだけ価値のある研究だ。なぜ、トモマサ君だけそんなにも魔素量が上がるのか。これが分かれば、多くの人の魔素量が上がり生活が豊かになるのだからな。貧困からの脱出も出来るかもしれない」

 ただナニしてるだけなのに、どうして貧困からの脱出みたいな重いテーマになるんだ。

 それに気になる事もあって、マリ教授に質問する。


「俺の魔素量が多いのは、帰狭者だからではないのですか?」

「確かに初期魔素量が25万もあったのは、狭間で長時間眠っていたからだと思う。だが、その後に4倍にも魔素量が増えた。これは、かつての帰狭者にもない現象だ。何らかの原因があるに違いない。それを調べたい。まぁ、だからと言って、トモマサ君は何もしなくても大丈夫だ。あ、いや、ナニはして欲しいのだが」

 マリ教授が、ややこしい事言って1人ツッコミしている。

 そうか、確かにカリン先生もナニで魔素量が上がる事はほとんど無いって言ってたし、俺の上がり方は異常なのだろうな。

 原因ねぇ、……さっぱり分からん。この辺は、マリ教授に任せるか。


「分かりました。いつも通りでいいのなら、好きに調べてください」

「うむ、トモマサ君は、これまで通り私達を満足させてくれればいいだけだ。大丈夫だろう」

「あ、私もお手伝いしますよ。マリ教授」

 突然、手を挙げて協力を申し出るカリン先生。

 魔素量増加の研究に興味があるようだ。

 カリン先生もなんだかんだ言っても考え方が研究者ちっくだからね。


「そうか、カリン先生も手伝ってくれるか。有難い。それなら、カリン先生には、私がいない間、トモマサ君が誰と、どのように、どれぐらい、ナニして、どれだけ、魔素量が上がったか記録して置いてくれるか。私は、その間に研究室で過去の文献をかき集めるとしよう」

「分かりました。それでは、近いうちに、これまでの経緯も含めてレポートで提出しますね」

 2人の話は、纏まったようだ。

 俺を挟んで2人でガッチリ握手している。

 ベッドの上で裸のまま。


 話が終わると、ちょうどアズキがやって来た。

 朝食の準備が出来たようだ。

 あまりのタイミングの良さに、食後にこっそりアズキに確認したら、ドアの前で話が終わるのを待っていたそうだ。

 流石、アズキと思っていたのだが、超一流になるとそんな事も気付かせないらしく。

 物凄く恐縮されてしまった。


 メイドをするのは、奴隷の間だけなんだからそこまで拘らなくてもいいと思うのだが、アズキ的には悔しいらしい。

 本当に真面目な良い子だ。

 早く奴隷から解放してあげたいのだが、もどかしい限りだ。

 あまりのもどかしさに、アズキを抱きしめて犬耳と尻尾を思いっきりもふもふしてしまった。

 途中から、ルリが突入して来たり、ツバメ師匠が膝に乗って来たりと大混乱になったけど、楽しいひと時を過ごした。

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