第140話4.3 再会

「はぁー、やっぱり我が家が1番だなぁ」

 俺はリビングのソファーに座り込みながら、親父みたいな言葉を吐いていた。


「本当、お疲れ様でした。今お茶を用意します」

 そう言って台所へと向かうアズキ。

 途中まで運転してて疲れているだろうにメイドの鏡だなと思いながら見送っていると、カリン先生が俺の横に座りながらしながら話しかけてきた。


「ねぇ、トモマサ君、私ってトモマサ君を尻に敷いているのかな?」

 カリン先生、ヤクロウさんやシンゴ王子の言葉を気にしているようだ。

 横にいるカリン先生の顔を見ると、何だかションボリしている。

 俺も少し揶揄ってやろうかと思ったけど、ここは素直に返事しておくことにした。


「そんな事ないですよ。僕は、一度も尻に敷かれてると思った事はないですから。たまにベッドの上ではそう言う状態になる事はありますけどね」

 否定からの軽いジョークにカリン先生、安心したようだ。

 腕に抱きついて、「良かった」とつぶやいている。


「でも、一つ言わせてもらうと、ベッドの上の格好は、トモマサ君がさせてるんですからね」

 頭を俺の肩に乗せて耳元で囁くカリン先生、何だか誘われてる気がするのだが、まだ外は明るい。


「また、夜にね」

 と言っているところで、向かいのソファーから声がした。


「カリン先生が羨ましい。私は、いつになったら相手してくれる!」

 不満気な顔のツバメ師匠だった。


「「あ」」

 カリン先生と俺、2人揃って声が出る。

 俺はもちろんのこと、カリン先生もすっかりツバメ師匠の存在を忘れていたようだ。


「いや、ツバメ師匠とは、成人してからと言ったはずですが」

「それは、分かっている。だがな、目の前でイチャイチャされると愚痴の一つも言いたくなるものだ」

 ツバメ師匠のもっともな言に、俺達は閉口してしまう。


「「「……」」」

 長い沈黙――実際には数分なのだろうが――に耐えかねた俺は、恐る恐る提案した。

「ツバメ師匠、すみません。その、ナニは、やっぱり成人しないと色々と問題があるので、せめてリビングで俺の膝の上に自由に座るとか如何でしょうか?」

 いや、膝の上にはたまに来ていたのだ、他の人に遠慮してたまにだが。

 それをいつでも良いと公に許可してあげる。


「膝の上を自由に〜⁉」

 ツバメ師匠が、真面目な顔で声を出す。

「す、すみません。やっぱり子供っぽいですね。今のはナシで」


「いや、それは、素晴らしい案だ。すぐに実行しよう。今から行っていいか?」

「は、はい」

 返事を聞いたツバメ師匠いそいそと俺の近くに移動してきて、膝の上に座って来る。

 しかも、こちら向きで。

 座り終えたツバメ師匠が、俺の脇の下に手を入れて抱きついて来た。


 その時、俺は変な顔してただろう。

 なんか違うって。

 確かに思ってたのとは違った。

 予想では、同じ方向を向いて座り、ツバメ師匠が背中を預けてきたのを抱き締めるイメージだったのだが。


「うむ、気持ちいいのだ」

 俺の胸に顔を埋め密着するツバメ師匠。

 師匠の手が俺の背中をワサワサする。

 うん、まあ、ツバメ師匠が気持ちいいならそれで良いけど。

 その後、アズキがお茶を持ってきてからも、その体制から動かないツバメ師匠。

 器用にお茶飲んだりおやつ食べたりもそもそ動いている時に、俺は小さな小さな変化に気づいてしまった。

 

 ――ツバメ師匠の胸が小さく膨らんでいることに。


 ガッチリと抱きつかれて初めてわかる程度の大きさだが。

 巫女服のような着物の下に確かに小さな柔らかさを感じる。


 アリマで温泉入っても気付かなかったのに。そう思うと俺は、その変化に嬉しいやら、悲しいやら複雑な気持ちになる。

 まるで、娘が大人になっていくような感覚だ。

 そんな名状しがたい気持ちに想いふけっていると、


「どうした、トモマサ。ぼーっとしてないで、私を抱き締めるなり頭を撫でるなりしても良いんだぞ」

 と要求してきた。


 そう言う事は、自分で言わない方が良いと思うのだが、ツバメ師匠が言うと何だかホッコリした気分になってきて、思わずルリをモフるような感覚でワサワサと撫で回してしまう。

 よっぽど嬉しいのか、ツバメ師匠もますます激しく体を動かし俺をワサワサする。


 ――うん、これ以上は危ない。


 俺は慌ててツバメ師匠の動きを止める。なぜなら、全身を使ってワサワサするツバメ師匠のお尻が、当たるのだ――俺のナニに。


 このままでは、反応してしまう。

 危険だ。俺はロリじゃない。

 俺は慌てて口を開く。


「ツバメ師匠、今はここまでにしましょう。マリ教授の研究室にも寄りたいので」

 そうして、ナニが反応する前に、ツバメ師匠を膝の上から下ろした。


 マリ教授、御免なさい。だしに使ってしまって、と心の中でつぶやきながら。


 ちなみに、そっと前のソファーに座り、それを見ていたコハクが、

「カリンちゃんのー、彼氏は、ロリコンー?」

 とカリン先生に聞いていた。


 いや、違うから。アズキやカリン先生の大きなおっぱい好きだから。

 ちゃんと誤解解いておいてくださいね。

 確かに、ツバメ師匠の微乳にもちょっと反応しちゃったけど。


 俺は、内心、カリン先生にお願いしながら

「マリ教授の研究室に行ってきます」

 と寮を出た。

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