第133話3.30 龍人族2
カオルさんの話が終わるとちょうどお昼になったので、昼食を挟んだ。
そして、昼からも会議は続く。
「では、次は、トモマサ様、先ほどお願いした白龍との戦いや龍人族について教えて貰えませんか?」
「あー、分かりました。戦いの経過については、俺から、龍人族についてはカリン先生、お願いしても良いですか? 俺より詳しいでしょうし。コハクの話は、分かりづらいので」
突然の指名に驚くカリン先生だが、「分かりました」と了承してくれた。
あの、間延びした口調では会議が進まないからね。
まずは、俺が白龍との戦い、主に操られていたあたりを詳しく説明する。
「これが、コハクに埋め込まれていた宝石ですね。鱗ごと切り取ると、体の自由が戻ったようです」
そう言って、コハクを見るとウンウンと肯いている。
「この宝石は、触っても大丈夫なのか? 触ったら操られると言う事はないだろうな?」
「ええ、魔素を見たところでは、掛けられていた術は無くなっているようです」
コハクにも見てもらったのだが、ただの宝石だと言っていた。
曰く、鱗の中にある時は何らかの魔素を感じたそうだが、それが無くなってるらしい。
俺も切り取る直前に魔素を感じたので、それは間違いないだろうと思う。
「しかし、見たことの無い石だな。ルビーに似ているが、輝きが異なっているしな」
ヒデヨリさんが、石をじっくり見ながら言っている。
そうなのか。一般的な宝石とは違うのか。
宝石なんて縁のない俺にはさっぱりわからない話だ。
「一度鑑定してもらった方がいいですね」
「魔法的な要素もありますので、魔法学園に調査を依頼しましょう」
俺の案にカリン先生が補足する。
確かに調査するなら魔法学園が良いかな。もしくはヤヨイに頼むかだな。
結果的には同じ気もするが。
宝石に関してはヒデヨリさんの了解を得た。
その後、戦いの話もひと段落したので、続いて龍人族の話へと移って行った。
龍人族、人間よりも古い歴史を持つ種族であるらしい。
寿命も長く数千年ほど。
世代交代による進化だけではなく、同一個体が環境に適応する事により進化して来たようだ。
そのため、火や水、土など様々な属性を持つ龍人がいるそうだ。
その中でも特殊な属性、異次元への転移能力を持つ龍人が現れ、その龍人の提案により次元の違う世界へと住処を移したとのこと。
「どうして、それまで住んでいた土地を離れたんだ?」
「それは、人間の数が増えて来て、龍人族たちの住処を荒らして行ったからだそうです」
あれほどの力があるなら人類なんてすぐに駆逐出来そうなのにと思っていたら、カリン先生がさらに教えてくれた。
「幾人かの龍人は、怒って人間達を攻撃したようです。スワ湖に残る伝承でもそのような記載がありました。ただ、何度、懲らしめても人間はすぐに忘れたかのようにまた、龍人の住処を荒らす。仕方ないですよね。人間の寿命は、長くて100年。過去の伝承があったとしても、歴史は繰り返してしまう。それが人間なんですから。そして、そんな状況に疲れた龍人族は、別の次元に新天地を求めて旅だったのです」
歴史は繰り返すか。
確かに、科学文明が滅びて、魔法文明になって1000年たった今でも、相変わらず争ってる人間だもの。
仕方がないのかもしれないね。
呆れ半分、納得半分の俺の気持ちなど知る由もなく、その後もカリン先生の話は続く。
別次元に移って行った龍人族だが、何も一度に全員が移って行った訳ではない。
行ったり来たりしている龍人や、ずっと、この世界に留まっている龍人もいるとの事だ。
事実、この国には数人残っていて、その1人がコハクらしい。
「他の龍人と交流はあるのか?」
「うーんー、たまにー? 会合があるー、らしいー」
「昨日聞いた話では、数百年に一度らしいです。ただ、若いコハクちゃんは出てないらしいですけど」
カリン先生が補足してくれる。
「さすが長寿種ですね。たまには数百年か……。人間には無理だな」
「ひとつ教えて欲しいのだが、良いだろうか?」
黙って聞いていた、ヒデヨリさんが質問して来た。
「何でしょう?」
「うむ、黒龍について教えて欲しいのだ。狭間教の信じる黒龍は、実在するのだろうか?」
「私はー、知らないー。他のー、龍人とー、会う事ー、ないー」
「それは、他の龍人なら知ってるのか?」
「父様ならー、知ってるかもー?」
これは、会いに行く流れなのか? 貴様に娘はやらん的な? 欲しければ俺を倒せとか? いや、無理だから。
それに、コハクと付き合う気はないんだけどね。凄い美人だから迫られたら断らないだろうけど……。
「コハクちゃん、その父様はどこにいるの?」
「父様はー、ノリクラ岳にー、住んでるー」
北アルプスか、遠いな。と思いながらヒデヨリさんを見ると、行ってくれるよね? って顔してる気がする。
ええ、まぁ、行きますよ。ちゃんと依頼してくれれば。
「トモマサ殿、頼まれてくれるかな? コハク殿の様子を見る限り、トモマサ殿のパーティーがついて行くのが最適だと思うのでな。報酬も、ヤヨイ様に頼んでおくから」
届かなくていい願いが届いたようだった。
「は、分かりました。一度、イチジマの町に帰ってから、すぐに向かう事にします」
残念な気持ちを隠して返事する。
「うむ、頼んだ」
こうして、夏休み次の予定が決まった。
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