第127話3.24 サンノミヤ2

 まぁ、そうなりますねぇ。

 翌日から俺たちのパーティも参加して、代わりに兵士と傭兵達から数名ずつ拠点の防衛に付くことになった。


 翌日、俺は、朝から拡張した追跡魔法を発動しながらサンノミヤに向けて移動している。

 ちなみに、範囲を広げて領域内の人間を探したが、我々以外には見つけられなかった。

 人ではないのだろうか? それとも何処かに隠れると表示されないのだろうか? よくわからない。


「トモマサちゃん~、そろそろ昨日の地点よ~。何か反応はある~?」

「何もいませんね。人も魔物も1km圏内には存在していません」


 その後も慎重に進んでいくが、たまに魔物が近寄って来る以外には反応は見られなかった。


 さらに1時間ほど歩いただろうか、間も無く、サンノミヤの中心だ。

 その時、奇妙な反応があった。人と魔物の反応が重なって表示されている。


「なんだ? 何かいます。人と魔物が同じ場所にいるようです。真正面からこちらに向かって来ています」

「全員戦闘態勢。トモマサ殿、距離と時間を教えてくれ」

「距離、1kmほど。時間で2分ほどで到着します」


 兵士達が盾を構えて陣形を取る。

 傭兵達は木陰に隠れて影から攻撃するようだ。

 俺たちも、兵士たちの後ろでシンゴ王子を先頭に戦闘態勢を取る。


「来ます。上です」


 ぱっと見、何も見えないが、確かに何かいる。

 俺は、咄嗟に重力魔法を発動し上空の物体を地面に叩き落とす。


「ぐはぁ」


 地面に落ちた物体からマントのようなものが取れ、飛んで来た者が姿を現した。

 どこにでもいそうな若い男だった。


「取り押さえろ。魔法を使うかもしれん。魔素封じを忘れるな」


 トシフサさんの号令で兵士達が両手を拘束し、後ろ手に枷をする。

 魔素の動きを阻害し魔法の発動を止める効果がある魔道具の枷だ。


「そのマントが魔物のようです。引き離してください」


 俺が声をかけると兵士達がマントを引き離す。

 マントの形をしていた魔物は、ドロッと溶け出した。

 スライムの一種なのだろう。

 兵士達が剣で刺しても効果が無さそうなので、カリン先生が火魔法で倒していた。


 俺は改めて捕らえられた男を追跡魔法で見てみると普通の人の反応だった。

 スライムと重なっていたから変な反応だったんだろう。


「ううぅ」


 兵士の中の魔法使いが回復魔法をかけたようだ。

 意識が戻り始めた男にトシフサさんが尋問を始める。


「おい、貴様、何者だ。なぜこんな所にいる」

「くそ、なぜお俺の居場所がわかった。スライムのマントは、完全に視界をくらませるはずだ」

「貴様に答えることなど無い。それより、貴様はここで何をしている。答えろ」

「くっくっくくく、決まっているだろう。貴様らを皆殺しにするためだ」

「な、なんだと、アリマの町を襲っていたのも貴様の差し金か? 誰の命令だ?」

「そんな事もわからんのか! 我らが黒龍様の御意志だ。アリマの町など手始めだ。すぐに、王都イチジマの町も壊滅させてやる」


 その後も、聞いてもいないのに黒龍様とやらの素晴らしさなどを語り出す男。

 捕まっているのにこの自信はなんだろう。

 下手をすれば、この場で殺されてもおかしく無いのだが。


「おい、お前、何を企んでいる? やけに簡単に情報を流しているが、どういうつもりだ?」

「ふっ、貴様らは本当に馬鹿だな。俺がどれだけ情報を流そうと、貴様らはここで死ぬ事が決まっているからだ。白龍の手によってな」


 俺の問いにも、男は素直に答える。

 しかし、白龍? 聞いたことないな。

 魔物図鑑でも観たことないぞ。

 カリン先生も「そんな魔物は知りません」と首を横にしている。


「貴様らが知らないのは当然だ。黒龍様の忠実なる僕、上級ドラゴンを超える力を持つ白龍だ。貴様ら異教徒など一撃でチリとなるであろう。そら近づいてきたぞ」


『GUGYAAAAAAA』


 激しい咆哮と共に、追跡魔法など必要としない、先のドラゴンなど話にならないプレッシャーが近づいて来ていた。

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