第121話3.18 アリマ温泉
話し合いの結果、出発は明後日の朝という事になった。
ヒデヨリさんの精鋭部隊と、高ランクの傭兵数パーティーでの行動となるらしい。
俺達はどちらかと言うと、回復と荷物運びという輜重部隊の扱いのようだ。
未成年ばかりなのだから最前線に立たされても困るので当然といえば当然なのだが。
合わせて買って来た食料は、町の商人ギルドに売って欲しいと頼まれた。
寄付すると言ったのだが、断られてしまった。商人達の為にならないと。
領主の館からお暇した俺たちは町で宿を取って、今は宿の温泉にシンゴ王子と入っている。
このアリマ温泉、
宿には、金泉と銀泉の両方の源泉が引かれているようで、色の異なる湯を楽しめるようになっていた。
残念ながら? 湯船は、男女別だった。
だが別の場所に家族風呂がある事を確認している。
後でアズキとカリン先生を誘ってみようと密かに心に決める俺だった。
「トモマサ君、無理言ってすまないな。俺たちは、君の足手纏いにしかならないというのにな」
シンゴ王子、付いてくる事を謝っているようだ。
宿に入る前に、皆にコウベの領域ねの参加の意思を確認をしたのだが、
「トモマサ様さまの行くところは何処までもついていきます」
「教師として当然ついていきます」
「強い魔物がいるのだろう? 絶対に行く!」
「この国の王族として、町を助ける義務がある。微力ながら手伝わせてもらうよ」
「私も、王族としての務めを果たします」
と全員参加の意思を表明したのだ。
その後も、かなり危ないと説得しようとしたのだが、それなら余計に付いて行くと言うのだから困ったものだ。
「いや、気にしなくて良いよ。この町に一緒に来た時点で来ないという選択肢は無かっただろうしな。もっと早く聞くべきだった」
「ドラゴンの素材で鎧まで新調して貰ったのだ。せめて、皆の盾として働かせてもらおう」
流石、イケメン王子。爽やかに宣言して風呂を出て行った。
うん、死なない程度に頑張って欲しいものだ。
遠い子孫とはいえ、死なれたら後味が悪い。それに、ヤヨイに何言われるか分からないからな。
俺も、ほどほどに浸かって風呂を上がった。
もちろん、家族風呂にアズキとカリン先生を誘うために。
「いい湯だな。トモマサ」
今度は家族風呂に入っている。
アズキとカリン先生と、何故かツバメ師匠も一緒に。
しかも、湯船で俺の膝の上に座ってくるツバメ師匠。
ロリコンではない俺にとっては、ただ子供が戯れついて来てるだけなのだが。
せっかくの家族風呂で、美女が2人もいるのにナニも出来ないなんて……。
「くっ」
思わず悔しさが口に出るが、仕方がない。
なし崩し的になったとはいえ、ツバメ師匠も彼女の1人なのだから。
他の2人を誘って師匠だけ誘わないわけにはいかないのだから。諦めて、風呂を楽しもう。
「そういえば、シンカイさんがドラゴンの素材を使ってツバメ師匠の刀を打ってくれてましたよ。明日にでも、様子を見に行ってみますか? 他にも、何かできてるかもしれませんし」
「なに、本当か! それは楽しみだな。火属性の竜素材から作った刀となれば、私の魔法剣も強くなれそうだな。これで、もう魔物に遅れをとる事は無くなるだろう」
「師匠。いくら強い刀があっても油断しないでくださいよ。前回のドラゴンでは、死にかけたんですからね」
不安になってきた。
どれほどの刀かは知らないけど、ツバメ師匠を危険に晒す事にならないかと。
「分かっておる。そう心配するな。前回の件は、反省しておるのだ。トモマサを巻き込んで、シンゴ王子やアズキも大怪我をしたと聞いたのでな。もう、1人で突撃したりしないから。ほら、そんな顔するな」
「分かりました。ツバメ師匠を信じます」
逆に心配されてしまったようだ。
目の前の師匠の頭を撫でながら、信頼を口にする。
その言葉に気を良くしたのか、ベタベタと引っ付いてくるツバメ師匠とずっと湯船に浸かることになり、さらに、部屋でも離れたがらない師匠と添い寝をする事になってしまった。
もちろんナニもしないで。
「寝たな。アズキ起きてる? 隣の部屋に行こうか?」
だが、ツバメ師匠すぐに寝てしまった。
ベッドから出て俺とカリン先生の部屋に誘ってみる。
「はい、トモマサ様。お伴します」
アズキも待っていたようだ。
ニコニコしながら付いて来た。
風呂で相手出来なかったのが寂しかったのかもしれない。
隣部屋に行くとカリン先生もやる気十分で待っていたようで――スケスケネグリジェで出迎えてくれた。
明後日から神戸の領域探索だ。
しばらくはナニも出来ないだろうという事で3人で楽しんだ。
夜遅くには、再度家族風呂に行ってまで。
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