第118話3.15 ドラゴン装備2

「それでは、いきますよ」

 アイテムボックスから出たドラゴンは、解体場をほぼ占領するの大きさだった。学校の体育館ほどある建物なのだけど。


「こ、これを貴方が狩ったんですか?」

 傭兵ギルド解体場の責任者が聞いてくる。


「はい、皆の力を借りて何とか」

 旅の途中、カリン先生と色々話し合った結果、こう言う事に決まった。

 1人で狩ったともなれば、戦闘力が余りに常軌を逸しているのと言うので、少し隠す事にしたのだ。


「それでも、凄いですよ。長い事、解体場で働いてますが、このサイズのドラゴンなど見た事無いですからね。しかも解体までさせて頂けるなんて、この仕事についての1番のご褒美ですよ」

「はぁ、ご褒美ですか」

 ドラゴン解体が褒美になる感覚はよく分からないが、珍しい事だけは分かった。


 俺と解体場責任者が、話している間にも着々と解体は進んで行く。

 総勢10人掛かり、解体場総出での仕事のようだ。

 角や鱗、革はもちろんの事、血の一滴に至るまで瓶に詰められていく。

 血も薬の材料になったり、金属の触媒になったりするらしい。

 解体は1時間ほどで終わった。

 あの大きいドラゴンが、見る間に素材になって行く圧巻の作業を見ている間に。


「解体費用はどれぐらい必要ですか?」

「それについて、少し相談があるのですが、よろしいですか?」

 何だろうと思ったが、費用の代わりに素材を分けて欲しいとの事だった。


 しかも、革と鱗が少しとの事だったので快諾した。

 もっと持っててもいいと言ったのだが、解体費用にはこれでも多いほどだそうだ。

 ドラゴン素材は、希少性からか、かなり高いらしい。


「シンカイさん、防具製造に必要な素材は取ってください。後で、他の武器も作って貰うつもりなので、何ならその素材も」

「お、良いのか? これだけ素材があると創造力が刺激されて堪らんなぁ。……それなら、革に鱗に、血も欲しいな。角に、おっと髭を忘れるところだった。他にも牙に爪に……」

 ブツブツ言いながら、素材を取っていくシンカイさん。

 顔がにやけまくっていた。

 荷物運びに連れて来られた弟子が、

「師匠が壊れてる」

 とか

「あんな笑顔の師匠見た事無い」

 とかこそこそ話していた。


 普段は、怖い師匠で通ってるんだろうな。きっと。


 素材を選び終わったようなので、残りをアイテムボックスに片付けていく。

 もちろん、解体費用に支払う素材を残して。


「それでは、解体ありがとうございました」

「いえいえ、こちらも良い経験させていただきました」

 礼を言って、解体場を後にする。

 あとはシンカイさんの工房でシンゴ王子とアズキの採寸するだけだだった。


 採寸を済ませ、イクノの町に用の無くなった俺たちは、即座に転移魔法でイチジマの町に移動した。

 シンカイさんには、3日後には再度訪れるとだけ伝えて。


「このまま出発して良いか?」

 一応皆に確認しておく。

「問題ありません。急ぎましょう」

 シンゴ王子の返答を聞いて、皆、肯いている。

 皆もアリマの町が心配のようだ。

 イチジマの町を出る前に一応クニサダさんの店に寄って、イクノの町でのあらましを説明し、町を出た。


 昼過ぎに飛びたしたのだが大急ぎで魔導車を走らせた結果、日が暮れる前にはニシキの町に辿り着く事ができた。


「何とか、町まで着けたね。今日はここで休んで、明日は早朝から魔導車を走らせよう」


 いつものように門番から聞いた宿屋に泊まり、俺は明日の方針を説明する。

 皆、特に異存は無いようだ。

 その夜はカリン先生と相部屋で泊まったが、流石に移動で疲れたのかアズキは訪ねて来なかった。

 それでもカリン先生がベッドの中で絡みつけてくる手足と、押し付けてくるの胸に我慢が出来ず、ナニしてしまった。

 カリン先生も喜んでいたから良しとしよう。


 翌日は日の出と共に出発し、魔導車を走らせた。

 宿屋も朝食の準備が間に合わないとの事だったので、炊き立てのご飯をお握りにして貰って車内で食べながら。

 早い出立のお陰で昼頃にはアイモトの町、夕方にはヨカワの町に到着する事が出来た。

 現代31世紀では、考えられないほどの速さだろう。

 町で宿を取って、予定について話しあう。

 

「魔物の出方次第では、明日の夕方にはアリマの町に着きそうだな。俺は一度シンゴ王子とアズキを連れて転移魔法でイクノの町に行って、制作状況を確認してくるよ」

「トモマサ君、分かりました。それでは、私は、残りのメンバーで少し情報収集をしてきますね。アリマの町の状況が少しでも分かればきっと役立ちますから」

「カリン先生、大丈夫ですか? 女性だけになりますから、気をつけてくださいね」

「大丈夫ですよ。いざとなればツバメさんに出てもらいますから」

 うん、戦力的には問題なさそうだが、カリン先生にツバメ師匠か、俺から見ると子供の使いにしか見えないんですよね。

「まぁ、暴力沙汰にならない様に気をつけて下さい」

「分かってる」

 心配してたらきりが無いと思ったので、余りしつこく言うのはやめておいた。

 立派な成人女性なので。

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