第110話3.7 カイバラの領域3
土煙が晴れて、見えてきたドラゴン。
叩き落とされた衝撃のためんか、少しふらついていた。
それを目視したスバルさんと『明けの明星』メンバーが攻撃を開始する。
まずは、スバルさんと両手斧を持った重戦士の攻撃だった。
二人がドラゴンの左右の足に一撃を加えている。
次は魔法使いだった。
ドラゴンの弱点なのか、氷魔法で翼を攻撃している。
その後も続く怒涛の連続攻撃。
だが流石ドラゴンと言うべきなのか、あまり効いていないようだった。
「くそ、こいつ硬いぞ。剣が通らない。すまんが加勢を頼む」
『明けの明星』の連携を邪魔してはいけないと手を出さずに見ていた俺たち、スバルさんの要請を受けて攻撃に参加することにした。
まず、真っ先に飛び出したのは、ツバメ師匠とルリだ。
全身を身体魔法で強化したツバメ師匠は、ヒョイっとドラゴンの背中に飛び乗って抜刀術で片方の翼を根元から切断する。
もう片方の翼に、爪を立てるルリ。
流石のドラゴンも、この攻撃には驚いたようだった。
ふらついていたドラゴン、急に暴れだしたのだから。
背中に乗ったツバメ師匠を落とそうと体を揺らすドラゴン。
だが、時すでに遅し、ツバメ師匠とルリはドラゴンの背から離れていた。
急に動き出したドラゴンに驚いたのは、『明けの明星』のメンバーだ。
ドラゴンの側にいた重戦士など踏み潰されそうになっている。
そのドラゴンの足元に飛び込んだのはシンゴ王子だ。
重戦士を蹴り飛ばしドラゴンの足に組み付く。
そして動きを止めるドラゴン。
シンゴ王子、身体魔法で強化しているとはいえ、10tトラック並みの巨体の動きを止めるのだから恐ろしいほどの膂力だ。
飛ばされた重戦士は、その間にスバルさんに助けられ距離を取っていた。
足を止められ怒るドラゴン。
足元のシンゴ王子を睨みつけブレスを吐こうと口を開けた所で、下から何者かに顎を殴り付けられ口を閉じた。
俺が身体強化の補助魔法を掛けたアズキだった。
足元からドラゴンの口まで飛び上がり殴りつける。
昇◯拳も真っ青の破壊力だ。
閉じられた口の中でブレスが爆発する。
ドラゴンは驚いたようだが大してダメージには繋がっていない。
その後、振り回して来た尻尾を避けながら距離を取ったアズキ。
そのアズキを睨みつけるドラゴンの左目に鋭利な氷槍≪アイスランス≫が突き刺さる。
カリン先生の氷魔法だ。
「GUGYAーーーー!!!」
目を潰されたドラゴンが血を流しながら悲痛な鳴き声を上げる。
その隙に続けてダメージを与るべく、アズキがブレスを吐こうとすると口を閉じたり、カリン先生が口の中に氷魔法を突っ込んだりしていく。
だが、ドラゴン、何らかの――防御力を上げる――魔法を使ったのか、ダメージが通らなくなっていた。
足元でも、ツバメ師匠が刀で太い足や尻尾に切り掛かていたが、鱗に防がれていた。
先ほどは、見事に翼を切り裂いた攻撃なのに。
シンゴ王子がカーチャ王女の回復魔法と補助魔法を受けながら、足元で踏ん張っているから反撃は受けないものの、決め手に欠けてしまい手を拱いている俺たち。
そんな状況を苦々しい思いで見ていた俺に
「すまん、俺たちの攻撃力では、奴を傷付けることすら叶わないようだ。下級ドラゴンと思っていたが、進化直前の個体なのかもしれない」
重戦士と共に下がっきたスバルさんが声を掛けてくる。
「進化ですか?」
「ああ、一部の魔物は、年月をかけて進化するらしい。下級から中級、上級へとな。最も、中級以上のドラゴンなどほとんど伝説でしか無いがな」
注意はドラゴンへと向けたまま俺が発した問いに、苦笑交じりに返してくるスバルさん。
有益な情報なのかもしれない。
だが、今聞いたところで、意味のない話だった。
話をしいる間にも皆、疲弊していくばかりなのだから。
ダメージを与えられないままに。
「奴の弱点は、無いのですか?」
俺は焦る気持ちを押さえてスバルさんに問う。
だが
「うーん、寒さに弱いはずなんだが、氷魔法もあまり効いてないように見えるな」
スバルさんの答えは、残念な物だった。
そう、戦いの初めから、『明けの明星』の魔法使いもカリン先生も氷魔法をぶつけているのだから。
大きな魔法を使おうにもシンゴ王子に当たってしまうし、シンゴ王子が下がると奴が自由になる八方塞がりだな。
考えが煮詰まっている所で異変が起こった。
これまでシンゴ王子に集中していたドラゴンが、攻撃先を変えてきたのだ。
「きゃあ」
「ツバメ師匠!」
ドラゴンの側面から攻撃していたツバメ師匠が、爪と尻尾の連続攻撃を浴び、吹き飛ばされる。
そのツバメ師匠を、俺は即座に落下地点へと飛んでいき師匠を受け止める。
そして瞬時に回復魔法を掛ける。
「すまん、油断した」
一言告げて、すぐに飛び出そうとするツバメ師匠。
だがそこに、ドラゴンからブレスが放たれた。
アズキとツバメ師匠2人で抑えていたブレスだったが、ツバメ師匠の脱落で間に合わなくなったらしい。
「危ない」
俺は、また、ツバメ師匠の元に飛んでいく。
「「トモマサ君(様)」」
アズキとカリン先生の悲鳴が聞こえるが、どうしようも無かった。
そして俺はブレスに巻き込まれ意識を失った。
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