第89話2.27 採決
領主会議3日目は採決の日である。
その後はパーティーがあり俺たちも参加する事になっている。
最初は俺とマリ教授だけ参加の予定だった。
だがカリン先生とツバメ師匠は婚約者として、アズキだけはメイドとしてではあるが参加の許可が出たので皆で参加する事にした。
今はパーテイーできる服を買いに商業街の服屋に向かっている所である。
「みんな参加できてよかったね」
「出来ればもっと早く教えて欲しかったですね。今から行くお店にサイズの合う服があれば良いんですけど」
カリン先生は小柄な為、お店の気に入った服などでサイズが合わない場合があるそうだ。
「私は振袖が着たいぞ」
「分かってますよ。カリン先生の洋服を選んだ後で、ツバメ師匠の為に和服屋に行きますから」
ツバメ師匠は洋服よりも和服が好きなようだ。
普段も剣士らしく袴を履いているし体に馴染むのかもしれない。
幼児体型というより幼児そのもののツバメ師匠は和服の方が似合う気がするのは確かだ。
最近は少し成長して児童ぐらいになってるのだが女性らしい膨らみはまだ無い。
話をしていると服屋へと到着した。
店に入り、カリン先生用にパーテイー用の服が欲しいと告げると、定員が先生に合うサイズの服を持って来る。
流石、王都のど真ん中の店である。
持って来る服のどれもが先生好みのデザインのようで、みな捨て難いと悩んでいる。
サイズがあるかと悩んでいたさっきとは大違いである。
「これが良いと思います。トモマサ君、どうですか? 似合いますか」
胸元が強調された菜の花色のロングドレスを試着して出て来たカリン先生。
まるで別人でした。
聞かれた俺が言葉なく頷く事しかできないほどに。
カリン先生、俺の反応に満足したのか、そのドレスを購入する事に決めた様だ。
他にもドレスに合うネックレスや靴、小物などを見繕って購入し店を出た。
彼女へのプレゼントだし、出世払いで返したいところだ。
洋服屋の次はツバメ師匠希望の和服屋に行く事になった。
店の人に聞くと数件先に大きな和服屋があるとの事で徒歩でそちらに向かった。
店でツバメ師匠用のパーテイー振袖が欲しいと言うと、定員が西陣織りやら加賀友禅やら京友禅やら21世紀でも有名だった名産品が出てきた。
1000年後のいまでも残っているのかと感動しているところで、ツバメ師匠、朱色が艶やかな丹後ちりめんの着物を選んだようだ。
「どうだ、似合ってるか?」
とくるりと回転してから聞いてきたので、親指を立ててGoodサインを出してあげた。
そしたら大喜びで抱きついて来た。
傍目には、どう見ても七五三なのだが、それは言わない事にした。
こちらも着物に合う、簪や草履、小物などを購入して店を出た。
払った金額が、さっきの洋服より数段高かったのには驚いたが、やはり全てダークな資金から出しておいた。
ちなみに残りの2人には何も買っていない、アズキはメイド服で参加だし、マリ教授は前もって参加が分かっていたので自前で揃えて来たらしい。
ネックレスでもと言ったのだが、
「あんまり良くされると、裏切られた時が怖い」
とかなんとか言って断られてしまった。
前の男とは違い裏切る気など全く無いのだが、まだ付き合って数日だから仕方が無い。
もう少し時間が経てば信頼してくれるようになるだろう。
いや信頼を得られるように頑張らないと、と密かに決意を固めつつ、馬車に乗って王城に向かった。
俺たちは王城に着いてメイドに連れられ控室に入ったのだが、女性陣は皆支度の為、別室に行ってしまった。
残された俺は1人テラスでお茶をしている所である。
「トモマサ君、ご苦労様。準備は間に合いそうかい?」
どこから聞きつけたのかシンゴ王子が俺の所にやって来て目の前の席に座った。
「やあ、お疲れ様。おかげさまで、なんとか間に合いそうだよ。シンゴ王子。領主会議は順調かい?」
「まあ、順調なのだろうね。良くも悪くも事前の下調べ通り進んでるよ」
なるほど、もしかしたらと思っていた大罪法も予定通り不可決で終わりそうなんだな。
「トモマサ君、どうだい、時間があるなら採決を見て行かないかい?」
「見れるのか?」
「ああ、流石に誰でもとは行かないが、トモマサ君なら全く問題ない。傍聴席があって採決に参加しない人も見てるしね。発表の時に気付かなかったかい? ともかく行くなら急ごう。休憩もそろそろ終わりだ」
ええ、発表の時はそれどころでは無かったので、気付きませんでしたよ。
舞台の上のことを思い出していた俺だったけど、シンゴ王子に急かされて取り敢えず行ってみることにした。
傍聴席は大会議場の横手に設けられていた。
中2階に成っており、議論の参加者からはあまり見えない位置であった。
「へぇ~、こんな所があったのか。全く気づかなかったよ」
シンゴ王子に連れられて中に入ると、中には20代後半ぐらいだろうか、王様と良く似た渋い顔の男の人が座っていた。
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