第88話2.26 みんなでデート3

「これって、拳銃? 科学の物は危ないんじゃないんですか?」

「お、坊主は銃を知ってるのか。そうだな。確かに科学の銃は危険だ。魔虫が出てくるからな。でも、これは科学の銃では無いんだ。言うなれば、魔法銃かな? こいつに魔素を込めるとな、属性魔法を打つことが出来るんだ」

 これまた、中二が好きそうな武器だった。

 目を輝かせる俺だが、そんな事マリ教授が気にするはずもなく普通に返していた。

「え、私、属性魔法は不得意であまり使えないのですが」

「姉さん、この魔法銃はな、基本的に魔法を使えなくても良いんだ。ここに4色の魔水晶があるだろう? これに魔素を込めると魔法を打つことが出来るんだ。それに、少しでも心得があると威力が格段に変わるんだ。姉さんにピッタリだろ」

 クニサダさん、色々考えているようだった。

 さらに続いた説明をまとめると、どうやら、この魔法銃、昔の帰狭者が作った物らしかった。

 しかも当時は、その使い勝手から引く手数多の魔道具であったようだ。

 そのため、その帰狭者、亡くなるまでに結構な量の魔法銃を作った。

 だが後に作れる者が出なかったらしい。

 おかげで廃れてしまったようである。

 言うなれば遺失魔法の魔道具版のような物である。

 しかし、である。

 一般には廃れてしまった現在でも一部の貴族が護身用として持ち歩くなど、知る人ぞ知る有用な魔道具のようだった。


「遺失魔法を研究するマリ教授には最適の武器では無いですか。魔法銃の作り方も復活させてくださいよ」

「うむトモマサ君が手伝ってくれるなら出来るかもな。所でこの魔法銃は幾らなのかな?」

 俺の言葉に肯くマリ教授。クニサダさんに問いかけた。

 そして返されたクニサダさんの言葉。

「ああ、坊主なら白金貨一枚で良いぜ」

「ブフォ」

 マリ教授が吹き出した。

「白金貨1枚! いやいやいや、私の年収より多いでは無いか。流石にそんな高価な物は貰えない」

 その返しに俺、教授なのに年収、白金貨1枚一千万円超えてないのか? 魔法学園、意外とケチなんだな、って思ったが、そんな事はどうでも良いことだ。

 問題は、確かに昨日付き合い出した彼女に贈る物にしては金額が高すぎる事だった。

 どうするかな? 俺としては是非欲しいのだが。と俺は頭をひねる。


「それでしたら、俺が買いますので、研究とか狩りとかで必要な時に貸し出すようにしましょう。どうですか?」

「うーむ、良いのだろうか? 何も変わってない気もするのだが?」

 流石、教授だった。基本的に変わってない事に即座に気付くとは! ここは、もう少し言葉を足しておこう。と俺は口を開く。


「いいえ、全然違いますよ。俺が買うんです。俺が使うこともありますし、マリ教授だけではなくカリン先生や他の人にも貸すこともあるでしょう。ね、違うでしょう?」

「思うにトモマサ君が買いたいだけな気がするな。それなら私には何も言うことは無い」

 結局、全て見抜かれてしまった。

 ただ、俺が欲しいから、という事を。

 結局、俺が自分のために買うという事で落ち着いたのだった。


「話はまとまったかい? それじゃ次はこいつだ」

 そう言ってクニサダさんは一本の刀を出して来た。

 俺は受け取って抜いてみる。

 一見なんの変哲も無い刀だ。

 だが、よく見てみると、

「なんだか、魔素量が多い刀ですね」

 不思議な刀だった。


「お、気づいたかい。流石、魔法使いだね。こいつは、刀身にミスリルを練り込んであるんだ。なので、魔素の通りが良い。試しに火魔法でも込めてみろ」

 ニヤニヤしながら告げてくるクニサダさん。

 刀に火魔法ね。刀が溶けてしまわないのだろうか? と訝しみながら、恐る恐る火魔法を発動すると刀身が赤色に輝き出した。


「すごい、魔法が刀に吸い込まれて、刀身に溶け込んでいる」

 感嘆する俺。

 すると。

「こいつはな、魔道具なんだよ。魔法剣が使えるようになるな。もちろん普通に刀としても使えるが、強度は一段落ちるから気を付けな」

 さらにニヤニヤしながらクニサダさんが教えてくれた。

「魔法剣‼ ツバメ師匠が、たまに使ってる、あれか!」

 歓喜する俺。

 そこにツバメ師匠の声がする。

「そうだ、私が使ってるのと同じ物だ。だが私は魔道具を使わずとも使えるぞ。火の魔法剣だけだけどな。しかし全ての属性魔法が使えるトモマサが、その刀を持つと全ての属性の魔法剣が使えるのか。これは負けられん。私も他の属性魔法が使えるように勉強しないと。カリン先生、個別授業をお願いしても良いか?」

「良いわよ~。空き時間にやりましょう」

 

 将来、確実に俺とナニして魔素量が増加するツバメ師匠、使える魔法を増やすと必ず役にたつだろう。

 何が起こるかわからないこの世界、鍛錬をする事は悪い事では無い。


「で、坊主買うか?」

「もちろん買います」

 魔法銃に魔法刀、良い買い物ができた。

 もちろんマリ教授にもミスリルのローブと水晶の杖を買ってプレゼントした。

 本当は魔法銃を渡して製造方法の復活を頼みたかったのだが仕方が無い。

 一緒に研究する事で納得して貰った。


 その後は街の露店で買い食いを楽しんだ後、寮に帰った。

 マリ教授、今日も泊まっていくかと思ったら、連日ではカリン先生とアズキに申し訳ないと自分の家に帰って行った。

 その代わりと言っては失礼だが、カリン先生が、お風呂から寝るまでずっと相手してくれた。

 なんだかんだ言って寂しかったらしく、すごく甘えて来て何度もナニしながら長い夜を過ごした。

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