第87話2.25みんなでデート2

 団子屋に入ると、赤い毛氈の引かれた床几に座った3人が待っていた。

 手を繋いでいる俺とマリ教授を見てツバメ師匠が、

「マリ教授だけずるい。私も手を繋いでほしい」

 と言ってきたので店から出た後はツバメ師匠と手をつなぐ事になった。


 さらには他の2人も何も言わないけど羨ましそうな顔していたので、

「順番に手を繋いで行きましょうか」

 と言うと、優しく微笑んでくれた。

 

 対応は間違っていなかったようだ。

 良かった。と俺は一人胸をなでおろしていた。

 21世紀では妻1人で四苦八苦してた俺からしたら大きな進歩だった。

 いつまで上手い事行くかは分からないけど。


 団子屋では5月が旬のエンドウ豆入りの餅を頼んだ。

 すり潰して練り込まれたエンドウ豆の上品な甘みがとても美味しかった。

 少し食べてマリ教授も元気になったようなので、店を出て、あても無く商業街をふらつく。

 もちろん両手で、代わるがわる手を繋ぎながら。


 少し歩くと、いつもの下着屋が見えてきた。

 店前でカリン先生がニヤニヤしてたけど、「まだ早いです」と小声で告げて通り過ぎた。


 昨日の今日だもの、流石に4人では早すぎる。

 マリ教授にも断られるだろう。

 代わりに近くの服屋に行ったり小物屋に行ったりして俺や皆の物を買って行った。


 服を買ってあげるとマリ教授、

「こんなものプレゼントしてもらうの初めて」

 と感激していた。

 プレゼント1つ送ってないとは前の男、本当にクズだったようだ。


 さらにぶらぶら歩く。

 すると今度はクニサダさんの武器屋の近くに来た。

 なのでマリ教授の装備も買と提案した。

 すると。

「私には必要ないよ」

 と、渋るマリ教授。

 俺は、

「狩りには興味無くても何があるか分からないこの世界、自営の手段は持っておいた方がいいですよ」

 と言って説得した。


 店へ入る俺たち。

 すると俺の顔を見たクニサダさん、予想外の事を言ってきた。

「よう、坊主。久しぶり。実戦を経験して少しは腕を上げたようだな。今日はどうした。刀の買い替えか? この間、打ったばかりの坊主向きの刀があるぜ。ちっとばかし値が張るけどな」

 とても気になる話だった。

「いや、今日はこちらの女性の装備を見に来たのですが……ついでです。その刀も見せてもらって良いですか?」

 俺は急ぐ用事も無いし、と両方お願いする。

「おう、こっちの姉さんの装備か? うむ、姉さん、魔法使いって感じだな。そっちの嬢さんと同じミスリルを練り込んだローブがあったな。武器はどうするよ。得意な魔法は何だい?」

「武器は扱ったことがないのでよく分かりません。回復魔法は比較的得意です。後は、属性魔法が使えますが初級止まりです」

「うーん、何か良いものあったかなぁ。ちょっと見てくるわ」

 マリ教授の要望を聞いたクニサダさん、珍しく悩みながら裏に入って行った。


 クニサダさんが帰ってくるのを待ちながら俺は店内を見て回る。

 するとマリ教授が近づいて来て。

「あの、私なんかが本当に買ってもらって良いのかな? ミスリルのローブなんてとても高いのでは?」

 また渋りだした。

 本当にマリ教授、自分に自信が無いらしい。

 カリン先生なんて何の躊躇なく受け取っていたぐらいだったのに。

 ちゃんとお礼はしてくれたけど。ベッドの上で。


 だからマリ教授も、それぐらいの気持ちで――と言おうとしたら、そのカリン先生の声がした。

 

「大丈夫ですよ。私も買ってもらったし、アズキさんも買ってもらってるしね。それに最近の狩りでは1日で1人金貨5枚は稼いでるしね~」

 受け取りを促す言葉だった。

 だがマリ教授は違うところに反応した。

「金貨5枚! 私の月給より多い……。狩りってそんなに儲かるんだ。知らなかった」

 金額の多さに落ち込むマリ教授。

 俺は慌てて補足を入れる。

「俺、アイテムボックス使えるんですよ。だから全ての獲物を持って帰れるんです。なので、お金には困ってないんです。気にせず貰って下さい」

 その言葉に、やんわりと首を縦にするマリ教授。

 何とか納得してくれたようだった。

 一安心する俺。

 するとそこに裏からクニサダさんの気配がしてきた。


「姉さんには、これなんてどうだろう。昔、買い取ったんだが全然売れないんで忘れてた品物なんだが」

 言いながらクニサダさんが出してきたものは――銃だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る