第75話2.13 魔道具作成授業
復元魔法騒動もひと段落し普通の学園生活が始まった。
マリ教授は5月に行われる領主会議での復元魔法復活の発表に向けて大忙しであるようだったが。
俺にはあまり関係のないことだった。
一応参加させられるみたいだけど。
ともかく、ひとまず普通の生活へと戻った。
昨日も泊まりに来ていたカリン先生と目覚めのキスをしてから食堂に行く。
すると、いつものようにアズキが朝食の準備をしていた。
「おはよう」とアズキにもキスをする。
足元では、いつの間にか近寄って来ていたルリが頭をスリスリしているので頭を撫でてあげると「うみゃー」と気持ち良さそうに鳴いている。
まるで、「おはよう」と言っているかのようである。
そうこうしているうちに朝食の準備が出来たようだ。
「「「いただきます」」」「うにゃー」
3人と1匹で食事を取る。
白米に味噌汁に焼き魚に卵焼きと純和風な朝食だ。
もちろんルリは別メニューと言うか生肉だが。
「アズキさんの料理は本当に美味しいですね。私ではここまでの味は出せません」
「大丈夫ですよ。カリン先生。ここの食材は良いものばかりですから。ここで料理すればカリン先生も同じ味を出せますよ。今度作ってみたらどうですか?」
「そうね。今度はアズキさんと一緒に作りましょう。良いですか、アズキさん」
「はい、よろこんで」
アズキの同意を皮切りに2人は料理の話で盛り上がっている。
カリン先生とアズキで料理か。
厨房が華やかで良いなぁ。でもこの寮、厨房と食堂別々なんだよね。
貴族の屋敷としてはこれが普通なんだろうけど、21世紀の小市民の俺的にはダイニングキッチンが懐かしい。
女の子達がキャキャキャと料理するのを眺めるのも楽しそうだし。
卒業して独り立ちしたら是非そんな家を作りたい。
料理の話に入っていけない俺は、一人そんな妄想をしながら朝食を食べ終えた。
授業前に職員会議があるからと先に出掛けるカリン先生にお出かけのキスをして送り出した後、俺とアズキはゆっくりと教室に向かう。
ルリも俺の横を付いて来ていた。
今日の午前中の授業は、今、俺が1番興味のある魔道具作成の授業の日だ。
最初の数回は魔道具の歴史などの講義のみだったが、前回ぐらいから簡単な魔道具作成の実習に入って来ており、前回は火を起こす魔道具を作成した。
適当な魔石に生活魔法の着火(イグニッション)を定着させれば完成する簡単な魔道具だ。
本来は使い勝手を上げるために魔石を長めの棒に付けたりするのだがそこまではしていない。
棒に魔石を付けるだけなので誰にでも出来るからだ。
それでも初めての魔道具作成にワクワクしてしまった。
「今日は、湯沸かし器を作るって言ってたな」
「はい。魔法ケトルですね」
魔法ケトル、電気ケトルの魔法版だ。
水を入れて魔素を込めると湯が沸くと言う簡単な代物だ。
金属ケトルに加熱(ヒート)の生活魔法を定着させた魔石を付けるのだが意外と難しいらしい。
沸騰後に自動で動作を停止する機能が必要なためだ。
このあたりの制御をどう魔法で実現しているのか楽しみだ。
寮から5分ほどで教室に着く。
中には既に数人の生徒が来ていた。
俺とアズキも空いている席に座ると、それに気づいた二人の学生が声をかけてくる。
「「おはよう。トモマサ君、アズキさん」」
「おはよう。タケオ、ヤタロウ」
「おはようございます。タケオ様、ヤタロウ様」
この二人、同じ授業で仲良くなった友達だ。
フジサワ タケオとイワサキ ヤタロウ。二人とも『A』クラスの一年生で13歳だ。
タケオは関東の小さな街の領主の三男で、ヤタロウは四国の大きな商人の後継だそうだ。
初めは『S』クラスの俺に遠慮してたようだったが、授業終わりに教室でルリと戯れていたら、「撫でても良い?」と話しかけて来た。
二人とも実家には魔獣がいるらしいのだが、一般の寮では中々飼えないらしく連れてこなかったそうだ。
お陰でモフモフ禁断症状がとか言っていた。
今も、「「ルリ。可愛いね」」と言って二人でモフモフしている。
たまにアズキにも話し掛けてるのでルリだけでなく美人メイドと話をしたい欲求もあるようだ。
もっともアズキの方はメイドとしての返答しかしないので会話は盛り上がらないのだが。
ちなみに、関東出身のタケオに、「獣人だけど大丈夫?」と気になっていたことを聞いたのだ。
すると。
「うちの街では差別は無いよ。あれは一部の大きな街だけだよ。それに差別的な人は、王都の魔法学園になんて通わないよ。ニッコウ魔術学園に行くんだ」
と返ってきた。
ニッコウ魔術学園についてはカリン先生に聞いた事がある。
旧エド国首都ニッコウの街にある学園だ。
イチジマの魔法学園に匹敵する程の規模の学園で、ライバル視しているらしい。
主にニッコウ魔術学園の方が。
天才と呼ばれたカリン先生は両学園から誘いがあったのだが、いろいろ比べてイチジマの魔法学園を選んだそうだ。
何でも向こうは魔術学園と言いながら魔法の得意なエルフですら差別し入園を許可していないらしい。
生粋の人族、しかも旧日本人しかいないそうだ。
その上、貴族の特権意識も強く魔素量多いカリン先生など大貴族のボンボンに有無を言わせず囲われるのが目に見えてたので、両親にイチジマの魔法学園を勧められたそうだ。
そんな事を思い出していると担当教官であるソウイチロウ先生が教室に入って来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます