第73話2.11 復元魔法3
復元魔法を成功させたヤヨイがアズキに命令を出す。
「アズキ、メイド長に言ってトモコを呼んできて頂戴」
突然呼ばれたアズキだったけど、すぐに部屋から出て行った。
しばらくして連れてこられたトモコさん。
ひょっこひょこ歩きながら部屋へと入ってきた。
片足が義足のようだった。
「トモコ、唐突で悪いけどそこに座って義足を外して見せて頂戴。ちょっと試したいことがあるの」
ヤヨイの突然の命令に戸惑っていたトモコさんだったが空いてる椅子に座って膝から下の義足を外して足を見せてくれた。
「トモコ、今から起こる事に驚かずにいてね。行くわよ。『復元(レストレーション)』」
ヤヨイの復元魔法で足が復元していった。
付け根から、骨、筋肉、皮膚まで順に足が生えて来る光景は少しグロかったが。
「どう、トモコ、痛く無い? 動かせる? 触ってる感覚ある?」
ヤヨイの魔法に戸惑っていたトモコさん、段々理解が追いついてきたのか涙を流し出した。
「……や、ヤヨイ様、暖かいです。ヤヨイ様の手が触れてる部分暖かいです。指の先まで感覚があります。動かせます。嬉しいです。ありがとうございます。ありがとうございます」
ずっとトモコさんの足を触っていたヤヨイ、よく見ると涙を浮かべていた。
「良かったわ。治ってくれてありがとう。今日は仕事は良いからゆっくり休みなさい。もし、体に異変があったらすぐに言うのよ」
小さな声でトモコさんにそういった後、ヤヨイはメイド長にトモコさんを別の部屋へと連れて行くように命じた。
トモコさんが連れて行かれるとヤヨイがいつになく真面目な顔で話し出した。
「父さん、本当にありがとう、まさかこんな日が来るなんて思ってもみなかったわ。あの子はね。私のせいで片足を失ったの。私が馬車を急がせたばかりにね。両親もいない貧しい家の子でね、一生懸命働いて生活していたのに、片足を失ったらとても生きて行けない。……心配になって見に行ったら幼い妹と心中する寸前だったのよ。引き取ってメイドにしたのだけど、あの足では、満足に働けないとずっとずっと気にしていたの……。それが、それが、本当にありがとう、父さん」
俺は驚いていた。
同時に嬉しくもあった。
ヤヨイが昔と同じ優しい一面を見せてくれたから。
事故を起こした責任を取って面倒を見るなんて中々出来る事では無い。
俺への態度は厳しいが心の奥では優しい心を持った娘に育っていたんだな。
あまりの嬉しさに俺はヤヨイの頭を撫でていた。
子供の頃、良い事した時も悪い事して叱った後もよく撫でてやったものだ。
「な、何よ。女たらしの父さんは、私もたらしこもうとしてるの? 本当に節操が無いわね。それとも、トモコが気に入ったのからしら、でもあの子はダメよ。あの子には、将来を誓った彼氏がいるんだからね。片足のトモコでも受け入れてくれる優しい彼氏がね。だから、ダメなんだからね」
真っ赤な顔を背けながらキレの無い悪態を吐くヤヨイ。
「ダメなんだからね」って、ツンデレがデレた時みたいだよ。
しかも、撫でらてる頭も全く動かさないし、本当に素直じゃ無いなこの娘は。
「ヤヨイは、本当に自慢の娘だよ」
そう言って頭をポンポンして撫でるのをやめた。
そんな俺の手を少し名残惜しそうな顔してたヤヨイであったが思い出したように話し出した。
「メイド長、すぐにマリ教授を呼んで頂戴。話のすり合わせをしないといけないわ」
「すり合わせ? マリ教授には、復元魔法が出来ましたって報告するだけで良いんじゃ無いのか?」
「何言ってるの父さん。今の時代に、帰狭者がいること自体秘密なのよ。分かってるの? 魔法復活の経緯を正確に話すと、全てバラすことになる事に。全く呑気なものね。腰振る以外できないのかしら?」
そうか確かにそうだな。
話のすり合わせは必要だな。
しかし本当に短いデレ期だったな。
すっかり元のヤヨイに戻ってしまった。
俺がひとり悲しんでいて気が付いた。
「すり合わせならトモコさんとか他のメイドさんは大丈夫なのか? 前から、普通に父さんとか呼んでるけど、情報漏洩したりしないのか?」
「その辺りは大丈夫よ。うちのメイド達は色々訳ありの子ばかりなの。アズキもそうだったでしょ?」
アズキも確かに訳ありだね。
しかし他の人もそうなのか思わずメイド長に目が行ってしまう。
「もちろんメイド長も色々あったのよ。父さんが貰ってくれるなら全て教えてあげるけど?」
「あ、いや、そういう訳では無いんだよ」
見ただけで貰うとか言う話になるのか。
うん、もう見るのは止めよう。俺にはアズキとカリン先生とツバメ師匠がいるのでもう十分だ。
そんな話をしているとマリ教授が着いたと連絡が入った。
早いなと思ったら転移魔法で連れて来たようだった。
メイドの一人が使えるらしい。魔素量が少なくて長距離は無理なそうだけど。
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