第70話2.8 傭兵ギルド3

「買取物はどちらにありますか?」

 俺の用紙を見ながら3番の受付嬢が聞いてきた。

「アイテムボックスで持ってます。出しますか?」

「あ、いや、ここでは出さないでください。数が多いので裏の倉庫で見せていただきます。しかし、これ全て、アイテムボックスに入ってるんですか? 凄い量ですよ?」

 あ、やばい、魔素量によってアイテムボックスの容量って変わるんだった。

 魔素量が異常なことがバレる。

 なんとか誤魔化さないと。

「あははは、ギリギリなんとかね」

 ダメだ。全然誤魔化せて無い。

 でも。

「そうですか。お若いのに素晴らしいですね。それでは、左手の出入り口から倉庫に行けますので続きはそちらでお願いします」

 う、ん、あんまり興味無いようだ。個人情報を詮索するつもりはないのだろう。と一人納得してから俺は皆に言って裏の倉庫に向かった。

 付いてきてくれたのはシンゴ王子だけだった。

 他の女性達には手を振られただけで。

 相談に忙しいようだった。


「では、ここで出してもらえますか?」

 さっきの受付嬢がやって来てお願いされたので魔物を順番に出していく。

 ワイルドボア19体、ホーンラビット29体、ワイルドディア17体、ミノタウルス2体、オーク4体を出した所で、もう一人男の職員がやって来た。

「それでは、査定しますね。一緒に見ていきましょう」

 それぞれ一体一体、損傷具合を確認していく。

 どの魔物も皮が素材になるようで、火魔法で焦げた部分は査定から引かれていくようだった。

 刀傷も場所によっては査定対象のようで

「もうちょっと端っこなら良いんですけどね~」

 とか言われて価格から引かれていた。


 同時に魔石も取り出されて行く。

 魔石とは魔物の核で魔素の結晶である。

 これは魔道具を作る際に必要な物で傭兵ギルドでも買取を行っており、大きな物だと白金貨ぐらいするものもあるそうだ。

 最もフクチヤマの領域程度の魔物では、せいぜい銀貨程度であるが。

「確認は、これで終わりです。それぞれの金額は、こちらに書いた通りです。価格にご満足いただけない物がありましたら、お教えください。あまり珍しい魔物ではありませんので、価格を上げる事は難しいですが」

 ワイルドボア一体銀貨5枚、ホーンラビット一体銀貨7枚とか言われても高いか安いか良く分からない。このまま買っても良い気もするのだが、一応納得するまで聞いてみることにした。

「すみません、初めてなので教えて欲しいんですが、魔物の価格ってよく変わるんですか?」

「この辺りの魔物は変わりませんね。ギルド入会時の冊子に価格表があるはずです。確認してみてください。後は、もう少し強い魔物、サンダの森に住むコカトリスとかですね、なんかは、品薄時に価格が上がることがあります。そういった場合には、討伐依頼が出されますので、ロビーの掲示板をよく見ていてください」

 冊子に挟まれた用紙を見る。

 確かに価格表があった。

 査定額と変わりは無い。

 なるほど基本はこの価格で、品薄時は高くなるのか。

 需要と供給の関係から言ったら普通だな。


「もう一つ、他にも買取してもらえる所はありますか?」

「大きな商会などであれば、買ってもらえるかもしれません。ただ、この量全てとなると難しいでしょうね。一見さんだと買い叩かれるのがオチだと思います。その点、傭兵ギルドは国も出資する関係機関です。価格は、国の審査の元で決めてますので安心してお売りいただけます」

 そうなのか。国の関係機関なのか。

 ヤヨイが目を光らせてるだろうし、問題無いかな。と安心して買取の許可を出した。


「ありがとうございます。それでは、元の受付にて代金をお渡ししますので、お戻りください」

 受付に戻るとツバメ師匠が晴れやかな顔でこちらを見ていた。

 どうやら話し合いが終わったらしい。

 代金を受け取ってから話を聞きますと言い置いて受付に行く。

「それでは、先ほどの査定金額に、3%上乗せして、金貨40枚、銀貨2枚、銅貨15枚、銭貨3枚となります。ご確認ください」

 今日1日で400万円超えるお金を稼いだようだ。

 一人66万と少し。

 大金である。


 これまでの討伐では、解体した素材、売る場所を知らないのでアイテムボックスに溜め込んでいたし、肉は自分で食べたりシンゴ王子の勧めで孤児院なんかに寄付したりしていた。

「まとめて売ったらこんな金額になるんだな。知らなかったよ」

「まぁ、そうだね。普通の人は、こんなに魔物を持って帰れないからね。何体か馬車に乗せて帰って来るぐらいだから」

 なるほど時空魔法は使える人が少ないってヤヨイも言ってたな。

 あんまりやると目立ちすぎるのでは無いだろうか心配になってきた。

 代金を受け取り、皆の所に行く。

 用も済んだので帰ろうと言って馬車に乗り込んだ所で、ツバメ師匠が俺の手を引いてきた。


「トモマサよ。欲しいものが決まったぞ。私もアズキに送ったような下着が欲しいぞ。そなたを悩殺する下着がな」

 受け取った代金の多さに気を取られ、プレゼントのことをすっかり忘れていた。

「ツバメ師匠、悩殺ですか。瞬殺とか撲殺は可能だと思いますが、悩殺は、成人まで無理かと思いますよ」

 思わず本音を言ってしまった。

 やばっと思ったがツバメ師匠は全く気にしてなかった。

「そんなものは、やってみなければわからないでは無いか。早速、下着屋に行くぞ」

 疲れていたので帰りたいのだが仕方が無い。

 以前、アズキの下着を買った下着屋に向かう事にした。


 意気揚々と乗り込んで行った下着屋だったが、直後、さすがのツバメ師匠も落ち込んでいた。

 師匠のサイズだと子供用の物しかなかったのだ。

 スケスケの悩殺下着をと叫んでいたが出てきたクマ柄パンツには心が折れたらしい。

 それでも無い物は無いので大人サイズに変身してもらいそれに合う下着を買う事で納得して貰った。

 成人した暁には必ずこれを付けて一晩共にすると約束して。

 さて終わりだと思ったのだが、せっかく来た下着屋でツバメ師匠の下着だけ買ったのでは勿体無いと、未だ下着を買って貰ってないカリン先生の筋の通らないおねだりに合い、みんなの下着を買う事になってしまった。

 カーチャ王女にはさすがに失礼だと思ったのだが、本人の熱い視線と、シンゴ王子の「すまないが、買ってやってくれないか」の言葉に負け買う事になった。

 さすがに試着して見せると言うカーチャ王女の要求だけは辛うじて退けることが出来た。

 ここだけはシンゴ王子さすがに止めに入ってきたので。

 しかし、どんどん追い詰められてる感はしなくも無い。


 アズキとカリン先生の試着はもちろん見せて貰った。

 どれにするか選びきれず、二人の分は数着ずつ購入する事になった。

 ツバメ師匠には内緒で。

 成人したらまた買ってあげるから許して下さい。と心の中で謝りながら。


 翌朝。

 ステータスを確認した俺は愕然とした。

 魔素量が75万を超えていたからだ。

 確かに昨晩、アズキとカリン先生の新下着攻撃に合い遅くまでナニしていた事は確かだが、こんなに上がるものなのか? 俺ってどれだけ興奮し易いんだ。

 この先、ツバメ師匠とおそらくカーチャ王女もナニする事になるだろうと思うと気が滅入るばかりだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る