第69話2.7 傭兵ギルド2

 王都イチジマの街の傭兵ギルドは、全国ギルド本部と南部と北部のそれぞれ門近くに出張所があるようだ。

 登録、買取はどこでも出来るらしいので、一番近く、北門の出張所に向かう事にした。

 ラノベのテンプレである騒動に巻き込まれることを恐れた俺が人の多そうな本部を避けた結果でもある。

 北門の傭兵ギルドは、出張所という割には大きい建物だった。

 馬車で近づいていく。

 すると入り口あたりは、ごつい鎧のおっさんや目つきの鋭い狩人など、堅気の人間では無さそうな人たちで溢れていた。

 そうこうしてるうちに馬車は入り口あたりで止まってしまう。

 来るところを間違えた。

 本部にするんだったと後悔をする俺を辺りの傭兵達が睨み付ける、ように見える。

 一人ならまっすぐ通り過ぎてしまうであろうトモマサであるが、3人もいる彼女が一緒では逃げ出すことも出来ない。

 どうしようかと悩んでいる所で、シンゴ王子が一人立ち上がって馬車を降りた。


「トモマサ君、さあ行こう」

 さすがイケメン王子である。

 物怖じしていないようだ。

 出来れば一人で行って欲しいところであるが、俺のアイテムボックスに獲物が収納されているので仕方が無い。

 覚悟を決めて馬車を降り、建物に入った。


 入ってまず驚いた。

 中には、ほとんど人はいない。

 その上、ふと見た壁の張り紙には、こう書いてあった。

『用の無い人は、すぐにお帰りください。他の人の迷惑になります。』

 ぼーっと、張り紙を読んでると、一人の人が近づいてきて話しかけて来た。

「ようこそ、傭兵ギルドへ。今日は、どのようなご用件でしょうか?」

 警備員兼案内係のような人だった。

 用の無い人は、これで追い出されるのだろう。


「ギルドへの登録と、魔物の買取をお願いしたいのですが」

 そうすると158番と書かれたカードを渡され、

「5番の受付の前でお待ちください」

 と言われた。

 日本のサービス精神が生き残っていた事に俺は感心してしまった。

 ラノベのような、イベントは起こらないのだろう。

 現に、待っている傭兵たちも静かに談笑しているだけで、とても他人に喧嘩を吹っ掛ける様には見えないのだから。

 ひとしきり感心していると、

「158番の方5番の受付窓口にお越し下さい」

 と呼ばれた。


「今日は、どの様なご用件でしょうか?」

 若い受付嬢に聞かれる。

「ギルドへの登録と、魔物の買取をお願いしたいのですが」

「承りました。登録は、皆様ということでよろしいですか? 12歳以上での登録となりますが」

 受付嬢はツバメ師匠を見ながらそう言った。

 あー、確かに12歳には見えないよね。

 最近少し成長したけどまだ、8歳ぐらいだもんね。

「彼女は、12歳ですよ。魔法学園の生徒です」

 俺の言葉に、受付嬢は、「それなら問題ありません」と素直に引いた。


 嘘だったらどうするんだろうと思ったが、本人が認めた以上は文句を言うつもりは無いのだろうと思い気にしない事にした。

 その後、皆の顔を見回していく。

 誰も何も言わない。

 問題無いということだろう。と理解して受付嬢に告げる。


「全員登録でお願いします」

「承りました。パーティ登録は致しますか? パーティ登録していただきますと、買取額を3%アップさせていただきます。他にも、パーティでしか受けれない依頼を受けることができますし、パーティの期間が長い程、各人のランクアップがし易くなります」

「ランクアップ?」

「はい、魔物の討伐回数や依頼の達成回数により、鉄ランクからオリハルコンランクまでアップしていきます。ランクが上がりますとそれぞれ買取額などで特典が付きますので、パーティを組んで討伐されるのであれば登録されるのがお得だと思います」

 パーティ登録にランク設定ね。

 さすが厨二病が作った組織だ。ラノベによくある設定だな。

 皆に確認したところパーティ登録も異存は無い様だった。


「承りました。それでは、こちらが各個人の用紙で、こちらがパーティ登録の用紙です。黒枠の中をご記入ください。尚、文字を書ける方がおられない場合は代筆致しますので遠慮なくお申し出ください」

 本当にサービスが行き届いている。

 記入欄一つにも必須とか任意とか記号で分けられて分かり易くなっているし、記入用の机には記入例まで置かれていた。

 全員文字を書けるから、代筆は必要無い。

 それぞれが記入して行く。と言っても、必須記入欄は名前だけだった。

 他にも任意だが住所は一応魔法学園の寮のを記載し、特技なんかもあったので剣術と魔法と書いておいた。


「パーティ名どうしよう?」

 個人用の記載が終わったのでパーティ用の用紙を書こうと思ったのだが、まず一項目目で蹴つまずいた。

「トモマサ君の好きにすればいいと思うよ? 皆もそう思うだろう?」

 シンゴ王子の言葉に皆首肯する。

「ええ、俺が決めるの? 何にも思いつかないんだけど、皆も考えてよ」

「では、僭越ながら、建国のち「はいダメ~」」

 アズキ、それは言っちゃダメでしょ。

「次は私が、トモマサ様とその奴隷「それもダメ~」」

 カーチャ王女、奴隷はアズキだけですよ。あなたを奴隷にする気はありませんからね。

「それなら、丹波抜刀隊なんてどうだ?」

 ツバメ師匠、ちょっと恥ずかしいけど今までの中で1番マシです。

 他にもと思ってカリン先生やシンゴ王子に聞いてみたが思いつかないようだ。


「では、他にいい案もないので取り敢えず丹波抜刀隊に決定します」

 取り敢えずの処置である。

 受付嬢に聞いたら「パーティー名は、いつでも変えれます」との事だったので。

「やった、それなら私にご褒美をくれるよな。そろそろ私と一晩共に過ごしてくれんかの。体も少し成長したし」

「いや、それは、成人してからの約束ですよ。大体、まだ、8歳ぐらいにしか見えません。それじゃ、まだナニも出来ませんよ」

 俺の返答にツバメ師匠が落ち込んでしまった様だ。

 カリン先生が慰めているのだが二人の目が冷たい。

 今の対応に文句がある様だ。


「分かりましたよ。それじゃ、ツバメ師匠には、何かプレゼントしましょう。何が良いか考えておいてください。エッチな事は無しですよ」

 一応、釘を刺しておいた。

 俺のナニが欲しいとか言い出しそうだったから。

 ツバメ師匠が考えてる間に書類を書いて提出する。

「はい、確かにお預かりいたしました。えー、成人はお一人だけですね。他の方は未成年と。成人のカリン様のみ鉄ランクが付きます。他の方は、ランク外買取のみの仮登録となります。よろしいでしょか?」

 カリン先生、話し込んでいたのに名前が出た途端こちらにやって来た。

 俺から説明を聞いて受付嬢に返答していった。

「問題ありません」

「ありがとうございます。詳しくは、こちらの冊子に書かれておりますのでお読みください。人数分渡しておきます。次は、買取ですね。こちらに買取品の名前と数量を書いて3~4番の受付の前でお待ちください」

 買取用の用紙と『傭兵ギルド利用方法』と書かれた冊子を受け取り3~4と書かれた受付の前で待つ。

 ツバメ師匠はカリン先生とアズキ、カーチャ王女まで巻き込んで何をもらうか考えている様だ。

 遠目には子供をみんなであやしている様に見えるのだが、実態はどうやって下ネタに持って行こうか考えているに違い無い。

 俺は、あまり近寄ら無い様にしながら順番を待った。

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