第48話1.48 入学試験
まだまだ寒い日が続く中に少しずつではあるが春の訪れを感じる3月の始め、魔法学園の入学試験の日がやってきた。
イチジマの街の中ほどにある魔法学園が試験会場である。
朝食を食べて馬車で魔法学園に向かうと途中から交通渋滞していた。
「すごい数だね。これみんな、入学試験を受けるために来ているのか」
「そのようですね。やっと、魔法学園の門に到着したようです。ここからは、徒歩で向かいましょう」
入学試験にはアズキも付いて来ている。一緒に試験を受けるために。
二人で合格してリア充なスクールライフを送れると良いのだが。
「あちらが受付のようです。トモマサ様、並びましょう」
受付の行列に並んで前の方を確認すると、受付のテーブルまで20人ほどいる。
しばらく待つことになりそうである。
ちなみにルリは泊まりで調教中でありここ数日、帰ってきていない。
一応、様子だけは連絡が来ており、賢くしていると、相変わらずトシスエさんべた褒めであった。
「えっと、人族に獣人にドワーフいろんな人種が来ているな。あれ、エルフがいないな。魔法が得意なエルフがいないのは変じゃないのか?」
列に並びながら俺が首を傾げていると声がした。
「トモマサ君、ほとんどのエルフの子供は自分の親から魔法を習います。わざわざ魔法学園に来る人はほとんどいませんよ。授業でも話したでしょう? 覚えてないですか?」
いつの間にかカリン先生が、後ろに立っていた。
いつの頃からか、大人びた服を着てくるようになったカリン先生。
今日もおしゃれなお姉さんが胸を強調する時に着るようなセーターを着ているので、思わず目線が向かってしまう。
「そういえば、聞いたような、聞いてないような」
考えてみるが、やっぱり思い出せなった。
仕方がない、頭の中は胸でいっぱいなのだから。
「仕方がないですね。入学したらきちんと勉強するのですよ。それじゃ、私、試験監督だから行きますね。頑張ってくださいね」
言いたいこと言ってどこかに行ってしまった。
言われなくても頑張りますよ。
アズキに愛想尽かされないためにヤヨイのヒモにならないために。
しばらくすると順番が回って来た。
「おはようございます。早速ですが、受験票をお願いします。……はい、確認しました。それでは、こちらの簡易魔素測定器に魔素を込めてください」
「簡易魔素測定器ですか? 数値が出るのですか?」
魔素測定器と聞いて俺は、ちょっと焦っていた。
32万とか出たら大騒ぎにならなのでは無いかと。
魔素量は、あまり人に知られないほうが良いのではないかと。
「いいえ、こちらは簡易魔素測定器ですので、込められた魔素量に応じて光が出ます。基準値以上に光を出せればオーケーです」
大丈夫そうだった。
俺は恐る恐る魔素を込めていく。すると光だす簡易測定器。
100wの電球ぐらい白く光ったところで周りの人が騒ぎ出したので、魔素を止めた。
「これぐらいで、大丈夫ですか?」
「……は! 十二分に大丈夫です。この計測器こんなに光るのですね。初めて見ましたよ。それじゃ、こちらの登録用紙を持って『S』の教室に行ってください。用紙は、先に記入していて結構です。はい、次の人」
次はアズキであった。
測定器が、60w電球ぐらい光った。
色は緑色だった。
「獣人なのに……すみませんこちらの話です。あなたも『S』の部屋に行ってください。用紙も記入しておいてくださいね。はい、次の人」
色の違いが気になったが、受付の人はまだまだ続く行列を捌いて行くのに忙しそうだったので、おとなしく指定の教室に向かうことにした。
「トモマサ様と同じ部屋でうれしいです」
「そうだね、俺もうれしいよ。しかし、教室は何で分けているのだろうね。光の強さも色も、俺とアズキで全然違ったのに同じ部屋だし……」
アズキもよくわからないのか首を傾げていた。
校舎に入ると、『S』、『A』、『B』、『C』の4部屋が用意されているのが目に入る。
『S』の部屋は一番奥だったので廊下を歩きながら部屋を覗いていく。
すると、『C』、『B』、『A』の順番に人が多かった。特に『C』の部屋はあふれんばかりに人がいた。
そして最後の『S』の教室に入って、驚いた。
「シンゴ王子に、カーチェ王女、おはよう」
そう、その二人が広い部屋の中でポツンといたからだ。
「おはよう、トモマサ君、アズキさん。二人もこの部屋だね」
「受付でこっちの部屋だと言われて来たのだけど。シンゴ王子は、この部屋割り何が基準で決められるか知っている?」
「えっと、トモマサ君は、もしかして入学試験の試験内容知らないのかい?」
うっ、そういえば、知らないな。なぜだろう?
「うーん、カリン先生に聞いたけど、知らないほうがいいと言われて、調べもしなかったな」
「ははは、さすがトモマサ君だ。豪胆だね。それとも、カリン先生の教えがいいのかな?」
軽い感じでシンゴ王子が教えてくれた。
光の強さで部屋を分けているとのこと。
色は得意に思っている魔法により変わること。
気分によっても変わるのであまり重要ではないこと。
そして最後に、とんでもないことを言い出した。
「『S』判定された人は、それだけで合格だよ」
「は? もう試験はないの?」
「ああ、他の判定では試験がある。『C』判定の人は大変だよ。実技に筆記に今日一日かかるのではないかな?」
『C』クラス沢山いたもんな。何人残るだろうか? 先生たちも大変そうだった。
しかし、どんな試験でもクリアしてやるぜって意気込んできたのに肩透かしを食らった感じだ。
その後も特にやることもないので、しばらく雑談していたが、『S』判定の人が増える気配がなかった。
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