第26話1.26 剣と魔法2
魔素量を増やす方法としていくつかの方法がある。
魔物の肉を食うこと、魔素量の多いところに行くことが主要な方法であるが、実はもう一つあるのだそうだ。
それは魔素量の多い男性とエッチな事をすること。
つまりは男性から出た濃い体液を体内に取り込むこと。
それにより魔素量を増加させる事が出来るとのことだ。
だが、一般的な本には書いていない。子供が見るといけないから。危ない女性が増えるといけないから。
なによりも、危ない男性も増えるかもしれないから……。
ちなみに逆の場合、女性の方の魔素量が多い場合も男性側魔素量の多少の増加は確認されているらしい。
女性の増加量とは比べものにならないらしいが。
聞き終えた俺は、感心していた。カリン先生の知識量に。
「カリン先生、よくご存じですね」
「私の師匠も女性だったのよ。この方法で、魔素量をあげたと言っていたわ。未だ独身だけど……」
そして俺の背筋に悪寒が走った。
カリン先生の師匠が何歳か知らないけど、よぼよぼのバーさんに襲われるイメージが浮かんで来たからだ。
「か、カリン先生、絶対に俺の魔素量、人には言わないでくださいね」
「言いませんよ。奴隷にはなりたくないですから」
ヤヨイ、グッジョブだ。契約は大事だな。罰則も。俺は、心の中でヤヨイを褒めちぎっていた。
「本当にお二人は、大人の関係ではないのですか?以前に、布団に入り込んでくると言っていましたが?」
カリン先生が改めて聞いて来た。
「間違いなく、関係は持っていません。ただ……」
俺は、アズキが朝晩じっくりと体中の匂いを嗅いでいくことを説明した。
「匂いですか。犬獣人特有の行為ですね。でも、いや、可能性はありますね。いやしかし、それだけでここまで上がるとは。でもトモマサ君の魔素量なら……」
また、カリン先生一人の世界に入ってぶつぶつつぶやき始めた。
カリン先生、こうなると長い。考えがまとまるまで、こっちの言葉に全く反応しない。
天才と言われる所以だろう。
俺とアズキは、結論が出るまでしばらくの間休憩を挟むことにした。
アズキに入れてもらったお茶を飲んで一息ついたころ、カリン先生が帰ってきた。
いや、目の前にいたのだが。
「仮説が立ちましたよ」
話し始めたカリン先生にお茶を進める。
「ありがとうございます」
とお茶を一口飲んだ後、話を進めだした。
アズキの魔素量が増えたのは、匂いを嗅ぐ行為が原因で間違いないらしい。
俺から発せられる匂い=汗が気化したものを間近で大量に吸うことにより、エッチと同じだけの効果を得たのではないかと言う事だった。
「しかし、それだけの体液を摂取しようとなると大変な作業だと思うのですが?」
「いえ、カリン先生、トモマサ様の匂いは私の活力剤ですので、毎日2回丹念に余すところなく体中の匂いを嗅がせていただいております」
アズキが、うっとりしながら答えた。
「毎日2回も?……トモマサ君、そこまでされてよく我慢できるね。ひょっとして不能?」
今度は、カリン先生が眉根を寄せながら聞いてくる。
俺は、即座に――
「カリン先生、俺のナニは正常ですよ。いつでもギンギンですよ。俺だってやりたいですよ。でも、12歳の子に手を出すとか危ない人じゃないですか。それに、子供が出来てもまだ責任とれませんし――」
叫んでしまった。
おかげでカリン先生、
「いつでもギンギン」
とぶつやきながら赤い顔をそらしている。
「言葉の比喩ですから、いつも発情しているわけではないですから――」
いらぬ誤解を与えてしまったようなので、弁解する俺。
だが、カリン先生、顔を逸らしたまま驚愕の事実を告げてきた。
「トモマサ君、14歳でしょう。12歳のアズキさんとなら普通ではないのですか? 子供の件もです。貴族の跡取りなら、早く子供を作ることは義務です。14歳の父親などよくあることです。アズキさんも犬獣人ですから13歳で成人です。今すぐにでも立派な赤ん坊を産めると思いますよ。それに、トモマサ君が望まなければ、子供はできませんから」
そう、望まないと妊娠しないと。
「へ? 子供が出来ない? なんで?」
思わず変な声で聞き返してしまう俺に、カリン先生は優しく教えてくれた。
「あなたは本当に常識がないですね。魔素が本人たちの意志を感じ取って阻害するのですよ。なので男女ともに子供を望まない限りできる事はありません。すべての子供は、望まれて生まれてくるのです。誰でも知っていますよ?」
衝撃だった。本当に望まない子はいない。
この会話の内容、アズキも知っているようで赤い顔しながら肯いている。
そ、そうなのか。いくらナニしても子供が出来ない? 貴族ならよくあること? ……いかん俺の心のハードルがどんどん下がっていく。いやもうすでに無いに等しい気もする。
これから俺は何を頼りに我慢したらいいのだ。本当に耐えきれるだろうか。
俺は完全に打ちのめされていた。
そんな考え込んでいる俺をよそに、先生とアズキが話を続けていた。
「アズキさん、あなた魔法の授業受けませんか? 見た所、ずっとトモマサ君に付いているようですし、生徒が複数いる方が、互いに成長しやすいですから」
「しかし、私は奴隷です。それに獣人は魔法が得意ではありませんし……」
「え、奴隷? メイドではなく? いやいや、聞いてはいけない。守秘義務、守秘義務。……それよりも獣人が魔法を不得意なのは魔素量が足りないからですよ。それだけの魔素量があるなら魔法は十分に使えます。将来はもっと増えそうですし。それに、魔法を使えれば、きっとトモマサ君の役に立つ時が来ますよ」
カリン先生の提案に俺も乗ることにした。
「そうだな。どうせ後ろで聞いているなら、一緒に授業を受けているようなものだろ。俺が許可するから一緒に受けよう」
奴隷になったのは、対外的なデモンストレーションであって、心まで奴隷になる必要は全くない。
出来るだけ、俺と対等であってほしいと思う。
俺の役に立つとか別にどうでもいいのだ。
「トモマサ様が、そう仰るなら受けてみたいです」
この日から、魔法授業の生徒が二人に増えた。
「ところで、その首から下げているのは何ですか?」
昼休憩の時に、カリン先生と話していると魔獣の卵が気になった様だ。この露店で買った卵だが、普段から持ち歩いている。
ただ手で持っていると流石に邪魔なので、アズキに卵袋を作って貰って首から下げる様にしている。
俺の説明を聞いたカリン先生は、ため息をついていた。
「また、変な事していますね。魔獣の卵は――」
ヤヨイと同じ事を言われたが敢えてしていると言うと、諦め顔で愛想笑いをされてしまった。
害が無いなら一緒にいても良いと思うのだが、一般的では無い様だ。
直ぐに孵化するだろうし良いのだけどね。
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