第25話1.25 剣と魔法
数日後の夕食時に、剣術の先生が見つかったとヤヨイから聞かされた。
「明日は、魔法の授業は休みの日でしょう? 午後から来てもらうから、話を聞いておいて」
「もう見つかったのか。早いな。しかし、明日は図書館に行こうと思っていたが?」
「図書館なら、午前中に行って来ればいいじゃない。折角、優秀な先生見つけたのだから、しっかり教わってよ」
そうだな。ヤヨイが頑張って探した先生だ。しっかり教わろう。
ヤヨイのニヤケ顔が若干気になるが……。
図書館は、後日にして午前中は、魔素コントロール訓練をして午後に備えた。
「お初にお目にかかる。剣術を教えに来たツバメ ササキだ。よろしく頼む」
メイドに連れられて入ってきた女が、そうあいさつした。
見た目、6歳ぐらいの紅緋髪、紅緋眼の幼女である。
頭にコブが2つある。
髪に隠れてよくわからないけど、耳かな? 体を見ると白い道着に赤い袴を着け、腰には幼女の身長ぐらいありそうな日本刀を差していた。
「えっと、先生ですか? 随分若いようですが?」
見た限りとても剣術を教えられるようには見えない。
腰の刀を抜くことすら怪しい気がする。
そう思った俺は、控えめに尋ねてみる。
「ヤヨイ様からは、何も聞いていないのか? あの方も人が悪いな。私は、見ての通り12歳の若造だが、鬼人族最高の剣術、厳流伝承者の父より免許皆伝を頂いておる。心配には及ばん。お主もすぐに剣術の虜にして見せようぞ」
え、12歳? どう見ても6歳ぐらいなのだが? いや、それより鬼人族? 頭のコブは角か? 気が荒い種族と図書館の本で読んだんだが、いかん、凄く心配だ。
この子大丈夫なのか? と悪いことばかり考えてしまう俺。心配が顔に出ていたようだ。
「うむ、まずは表にて、我が秘儀をお見せしよう」
実力のほどを見せていただけるそうだ。
それなら授業を受けるかどうか決めるのはそれからにしようと密かに思う俺は、ツバメさんと屋敷の広場、いつも魔法の練習をしているところへ向かった。
たどり着いた屋敷の広場、準備のいいことに数体の鎧が案山子のように吊るされていた。
「よく見ていろ」
そう言って、近づくツバメさん。
すぐにこちらに帰ってきた。
「どうしたの? 何か忘れものでもした?」
不思議に思った俺が向かって来るツバメさんに問いかけたとき、鎧が袈裟切りに切り裂かれ鎧の上半分が地面に落ちた。
俺は唖然とした。ツバメは、刀を抜く素振りすら見せていなかったのだから。
「こんなものかな? どうだ、私の剣術は? 今のは、抜刀術の一刀だ。あれぐらいでは曲芸にしか見えんがな。む、どうした間抜けな顔をして。私の教えを受ける気になったか?」
あれほどの技を曲芸と言ってしまう、ツバメ先生、どれほどの実力だというのか? 俺も使えるようになるのだろうか? 楽しみになってきた。
気性も荒くなさそうだしね。
「ツバメ先生、これからよろしくお願いします」
俺は、即座に頭を下げる。
すると、ツバメ先生も「こちらもよろしく頼む」とうれしそうに肯いている。
その姿、失礼ながら頭を撫でたくなる可愛さだった。
だが、続けて言ったツバメ先生の言葉に俺は頭撫でなくてよかったと思った。
「ただ一つ先に言っておこう。お主、剣術の才能は無さそうだ。敵を倒すより身を守る術として覚えるが良かろう。それと、私のことは、師匠と呼ぶように」
気性はちょっと荒いかもしれない。ま、まぁ俺運動神経鈍いのは事実だから、一流の剣士なんて無理なのは、分かっていたよ剣も魔法もつかえる勇者にはなれないって……。
こうして、幼女ツバメ師匠の下、俺の剣術修業が始まった。
翌日は、魔法の授業の日である。
これまでの魔法の授業では、火、水、風、土の属性魔法と回復魔法を教わってきた。次は何かと思っていたところで、カリン先生が聞いてきた。
「最近、魔素量を測っていますか?」
「えっと、前回、カリン先生と測ってからは、やっていません」
そもそも、俺は魔素量の計測器を持っていないので測りようがないのだ。
「それはいけません。最初にも言ったでしょう? 魔素量は、魔法使いの生命線です。定期的に測定してください」
「すみません。計測器を持ってないので分からないのです」
「魔法を使えば、簡単に測定できますよ。知らないのですか? 前に……教えてないですね。すみません。大体の人が使える生活魔法なのですっかり忘れていました」
生活魔法って、魔素の少ない人でも使える魔法のことだな。そう言えば、生活魔法の本って読んでないな。今度読んでみよう。
「簡単な魔法です。使ってみてください。『ステータス』と頭の中で唱えれば自分の情報が見えます。やってみてください」
俺は、『ステータス』と頭の中で唱えてみた。すると、目の前に、名前、年齢、身長、体重、筋力量、魔素量、スキルなどが表示された。もちろんスキルは空欄だ。何の資格も持ってないから。
「魔素量は、25万ぐらいですね。下の値が変わっている気がしますが、よくわかりません」
「そうですか。そこまで高いと、そう簡単に魔素量は増えませんので、そんなものでしょう。ところで、後ろの獣人のメイド……アズキさんでしたか? は、魔素量を測っていますか?」
カリン先生、突然アズキに問いかけた。
「え、私ですか? 私は、年に一度ぐらいしか測っていません。獣人の魔素量は少なくて頻繁に測る必要がありませんので」
「そうですね。獣人は、魔素のほとんどを身体能力向上に使っていますので、計測できる魔素量は大変少ない値になりますね。ですが、ステータス魔法は使用できる人がほとんどのはずです。アズキさん、一度測ってもらえますか?」
アズキのステータスか。胸のサイズとか表示されないのだろうか? 某シティ○ンターみたいに見ただけでサイズが判る眼力がほしい。
無駄なことを考えているうちにステータス魔法の結果が出たようだ。
「え、え、え~。なんで?」
俺からは何もない空間を見ながらアズキが驚いている。
「魔素量が、増えていますね? アズキさん」
カリン先生が意味深な感じでアズキに告げると、大きく頷くアズキ。
「ちなみに幾つですか? 答えたくなければ、無理には聞きませんが」
「大丈夫です。カリン先生。計測結果は、510です。ちなみに前回……この春の時点では、30ほどでした」
「510! 獣人でしょ? あり得ない。そんな数字聞いたことない。やはり、トモマサ君と……をしたからなの?」
カリン先生がぶつぶつつぶやいている。段々と顔を赤くしながら。
そして、しばらく間をおいてから口を開いた。
「……ヤヨイさん、た、大変失礼な質問なのですが、あ、あの、あなたはトモマサ君と、お、お、お」
「「お?」」
カリン先生が止まってしまったので、俺とアズキが聞き返す。すると、湯気でも出そうなほど真っ赤になったカリン先生が再起動してとんでもない事を聞いてきた。
「トモマサ君と、お、大人の関係になりましたか?」
「か、カリン先生、俺とアズキは、そんな関係ではありません」
俺は慌てて否定した。
「大人の関係? トモマサ様、どのような関係でしょうか?」
アズキは、よく理解できなかったのか首をかしげていた。
アズキ、後でじっくり話そう。
それよりもカリン先生だ。
「お、大人の関係でないのなら、どうしてそんなに魔素量が上がったのですか? 獣人の魔素量の平均は10ぐらい、最大でも100を超えないぐらいだと聞いています。それなのに500を超えるなんて、人間に換算すると5000を超えるぐらいですよ? そんな値を、トモマサ君とのせ、せいゴニュゴニュ無しに得られるはずがありません」
俺は、眉をしかめながら話を聞いていたが、全く意味が分からない。
なぜ魔素量の話が、下ネタに直結していくのか?
カリン先生に聞いて行くと、言葉に詰まりながらも詳しく教えてくれた。
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