異世界でネコを飼う百合のお話。
レミューリア
異世界猫耳幼女メイドカフェは合法
「おかえりにゃさいませ、ご主人様♪」
くるりと一回ターンをしてスカートの裾を持ち上げて愛くるしい挨拶をするブロンドヘアーの女の子。
彼女に生えた猫耳はぴんっと張っていて緊張した様子。
尻尾は早く褒めて褒めてとぷるぷると震えている。
もしかして上手にできてないのではないのかと不安そうに上目遣いで見上げてくる。
「う、うん。教えた通りできてるじゃん……ミィ」
「にゃぁ……!ご主人様っご主人様っ」
「……おいで」
もう我慢の限界っとばかりに尻尾を激しく振りながら、抱き着いてくる猫耳少女を受け止めながら私は頭を抱える。
まったく。どうしてこうなった。何故私は異世界にまで来て猫耳メイド喫茶を幼女にやらせているのか。
私は思い返しつつ、さりげなくおっぱいを揉んできたミィを窘めるのだった。
まったく。あの日は、何もかもが厄日だった。
なんとなく女同士で付き合いはじめて数か月のなんとなく特に理由なく別れようと言った元カノに突き飛ばされてトラックに轢かれたことも。
全然痛くないな即死だったのかと思えば、異世界の王城の一室に私は飛んでいていかにもな白髭の王様に勇者様と呼ばれ魔王を倒せと強制労働を命じられたことも。
奴隷商人が年端もいかない獣人の幼女を脂ぎった中年男性に売りつけようとしてる所に立ち入ってしまい、初期資産のほとんどを使ってその獣人の子を横から買ってしまったことも。余談だがその中年男性は喜んで権利を譲渡して私達を尊いとか言っていた。
「えへへ、ご主人様の匂い病みつきになるにゃぁ」
こいつ人が回想に耽ってることをいいことに人の匂い嗅ぎまくるわおっぱい揉み続けてやがったな。
っていうか猫が病みつきになるって私はマタタビか何かか。
振り回される自分を想像し……やめとこう、いい加減この金髪猫耳幼女を振りほどかないと天罰がくだりそうだ。
「こ、こらミィ。いい加減離れて。今日はもう寝たいの……」
「いーやー」
まったく。まるでいう事を聞いてくれない。
異世界に信頼できる人はいないし、奴隷は主には逆らえない裏切らない契約になってると聞いたからこの世界の常識や事情を知るために奴隷が欲しかったというのに。私は何やってるんだろう。
お金は事情を話してすぐに王様に前借りしたけどその後も散々だった。ひそひそと聞こえるように王宮のあちこちから聞こえてくる噂話。
『新しい勇者様は同性が趣味らしいですわ。私も対象なのかしら?どきどき』
『貴族のアーノルド様が目を着けていた奴隷を強引に奪い取ったそうですわ。尊すぎません?』
『何でもかわいらしい服を買って幼女に色々着せるのが趣味なんですって。最高かしら……』
まったく。風評被害もいいとこだ。
私は確かに同性と付き合った過去があって、猫耳猫尻尾金髪幼女ー!と叫びながら貴族のおっさんの誓約書を強引にばりばり引き裂いてミィを買って、ミィに似合う服を求めてお店を何軒もまわりついついメイド服を買ってしまったがそれだけでロリコン呼ばわりされる謂れはないはずだ。
ともかく勇者が来る度にキャーキャーざわつく王宮なんてもう行きたくない。ミィと一緒に行くと皆ミィにお菓子あげるわ頭撫でだすわでなんか妬けるし。
「ん……ミィ?」
「ご主人様、今日はにゃんだか上の空」
気づけば、ミィがじっと私を見つめていた。「上の空なんてむずかしーことば知ってるんだねえらいえらいー!」って褒めてあげようとしたらミィは私の首筋をぺろりと舐めた。
「……っ!?」
ぞくりとしたいい反応に気をよくしたのか、ミィはにんまりと笑って悪戯を続ける。
「あ、ちょっ、これや…っやばっ…んっやめっミィ……」
「ご主人様、他のメス猫の匂いがするにゃ……」
背筋に悪寒が走り、私は固まった。
ふと私は今日の仕事が終わった時にミィを買った時に知り合いになったアーなんとかっておじさんに新しいロリ猫奴隷をおススメされたのだ。今でも思い出す。あのいやらしい顔。
『勇者様見てください。銀髪クール幼女奴隷のクーちゃんを買わせてもらいましたよふふふ。かわいい?うらやましい?駄目ですよぉお触り厳禁です。いかに奴隷とはいえ幼女に気軽にボディタッチをするような輩は紳士ではありませんからね。私は弁えてますよぉ。でも?勇者様がどうしても?触りたいというのならこの二股に分かれた尻尾を触ってもいいのですよ?』
いや私にはミィがいるしすぐに断った。断ったのだが。
あんまりにも寂しい顔をしているからつい。つい頭を撫でてしまったのだ……。
ちなみにそのクーちゃんは『ククク……奴隷として搾取されやすい獣人が生きやすくなるよう権利を、社会を変えてやる……一先ず奴隷という体で保護し文字・計算などの教育を施してやる……』と貴族のおっさんは言っていた。
なんか私のとこにいる方が悪影響及ぼしているみたいじゃん。
「にゃっぱり。泥棒ネコ……」
「どこでそんな言葉憶えてくるのぉ!?」
「にゃーキングしなきゃ……ご主人様をミィ抜きではいられない身体にしなきゃ……」
「ちょっあっやっ」
ミィのざらざらとした舌が私の服の中に潜り込み、気持ちいいところを探り当てる。
愛撫のひとつひとつに込められた口答えは許さないという明確な意思。本来の主従と真逆の力関係を教え込まれてしまい私は。
「にゃぁ……ご主人様よだれ垂らしてる……だらしない」
「うそぉ……」
自分のことなのに自分自身がもうわからない。
まるで手綱を握られたようにミィに私の全ては掴まれていた。ミィが鳴けと言えば抗うこともできずに鳴き。
ミィが目の前で舌をちょろっと出したら迷わず舐め、絡み、味わう。
「だらしにゃくて、浮気性のロリコンご主人様、一生面倒みててあげるからね?」
「ふ、ふぁい……」
まったく。そう言いたくなる毎日だが。だらしなくよだれを垂らしながら私は幸せを甘受しているのだから、なんだかんだ異世界も悪くない。
再開されたミィの愛撫に催眠音声のように繰り返される熱い告白に身も心もどろどろに溶かされながら私はふと思うのだ。
あ、これもしかして私こそがネコだったってオチ?
異世界でネコを飼う百合のお話。 レミューリア @Sunlight317
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