362ページ目…四天王・旋風のウルカ
<side:クズハ>
アリスが水宴のエルムと戦っている頃、クズハもまた四天王を名乗る上級魔族と戦っていた。
もっとも、この上級魔族も何故か授肉しており、肉体を持つ事により弱体化していたのである。
「
私はそう言うと、狐火を数発、旋風のウルカへと飛ばす。
「ハン!その程度の
ウルカはそう言うと、その身に纏った風で狐火を吹き飛ばす。
「お、鬼火じゃなくて狐火ですッ!!」
だが、鬼火と言われたのを、いちいち狐火だと訂正する私に対し、ウルカのツッコミが入る。
「おやまぁ、狐火だったのかい?だけどね~狐より鬼の方が強いんじゃないのかい?」
「そ、そんな事はありません!…たぶん。」
言われてみれば、狐よりも鬼の方が強そうだと思ってしまった自分に、心の中で『チッ!』と舌打ちしながらウルカを睨み付けるのだった…。
★☆★☆★
アリスに先に行けと言われた私達は、魔王の元へ向かう為に足を進めていた。
しかし、幾つかの部屋を通り、階段を上った先に一人の女性が待ち受けていた。
「へ~、なるほどなるほど…まだエルムのおバカさんが戦っているのに、この私の所まで来たって事は仲間を犠牲に先に進む事を選んだのかな?
いいね、いいね~!アンタ達、面白い事を考えたじゃないのさ!
仲間を信じて先に進む…う~ん、まさにお涙頂戴って感じじゃないのさ!」
「えっと…多分、聞いても直ぐに忘れちゃうと思いますが、僕はムゲンと言います。
もし良ければ、お名前を聞いても良いですか?」
「おや、坊やはムゲンと言うのかい?
丁寧に自己紹介されたとあっちゃ、私もしない訳にはいかないね~。
私はね~、こう見えても四天王なんて役職を与えられていてね?
四天王・旋風のウルカって名前なのよ、分かったかしら坊や?」
「ねぇ、坊や…一つ提案があるんだけど聞く気あるかしら?」
「提案…ですか?とりあえず、聞くだけなら聞きますが?」
「そう?私が坊やにする提案ってのは、私もエルム同様に遊んであ・げ・る♪って事よ。」
「遊ぶ…ですか?それは…いったいどう言う事ですか?」
「あら…坊や、思ったよりも鈍いのね…。
下の階で、エルムが坊や達のお仲間と遊んで楽しんでいるじゃない?
だ・か・ら、坊や達の内の誰かが私の遊び相手になってくれたら、残りの人達は先に進んでも良いわよって話ね。
まぁ、私の相手をする子とは、生きて会えるか分からないけど…ね。
あぁ、そうそう…私としては全員まとめて相手してあげても良いけど、それだと坊や達は此処でゲームオーバーになっちゃうと思うから、魔王様を倒せる確率はゼロになっちゃうわね~。」
…確かに、ローラさんに倒された大地のオルマと違い、このウルカと言う魔族は確かに、何処と無く強そうである。
だが、私ならばともかく…
それなのに、全員の相手をする?流石にバカにしすぎである…気が付いた時には、私は叫んでいた。
「い、良いでしょう!それなら、貴女の相手は私がします!
「だ、だけど…。」
「大丈夫です!私はあんなクソ生意気な女になんて負けません!」
そう言った私の尻尾は、その時には、既に3本に増えていた。
その後、ご主人様が
それに対して、私は『必ず勝って、追い掛けますから…
★☆★☆★
『チュドーン!チュドーン!チュドーン!』
どう言う原理なのか分からないが、ウルカの風を使った攻撃が床に当たる度に爆風へと変わる。
「ほらほら!上手く躱さないと直ぐに死んじゃうわよ?」
端から直撃させる気がないのか、ウルカの攻撃は拙い回避行動を取る私にも何とか躱せる物ばかりだった。
そんな中、予想外の出来事に困惑する私が居た。
「ど、どうして鎧を着る事が出来ないの…。」
そう、ご主人様達を先に進む様に言った後、ウルカとの戦闘が始まった。
だが、戦闘開始直後、装着しようとした鎧は、私の周りを飛び回るだけで、幾ら『
その為、私は戦う準備が出来ず、先程から逃げる事しか出来ていなかったのである。
先日、ご主人様から私専用の鎧を受け取った時は確かに装備出来たのに…。
その後も、私は暫くの間、原因が分からないまま、ただひたすらにウルカの攻撃を躱し続けるのだった…。
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