360ページ目…ダークサイド
<side:アリス>
元々、魔王を倒す為に来ているのだから、その配下である四天王との戦闘は避けられないとは思っていた…が、それは予期せぬ言葉で現実の物となった。
「でも、四天王と名乗ってますので、所詮は先程のオルマと言う上級魔族ザコと同じなのでは?」
「ちょッ!?プリンさんッ!?」
そう…御主人様の正妻であるプリンさんが水宴のエルムに向けて、まさかの
それに対して慌てる
もっとも…プリンさんの言う様に、ローラさんの一撃であっさりと倒されたオルマと同じ四天王と言うのであれば、油断するのは仕方が無い…故に、私も同意見である。
その後、エルムは逆上し冷静さを失った。
そして、オルマが最弱だと言うのなら二番手であるエルムは、四天王の中で下から二番目の強さだと思われた。
ならば、こんな所で
「き、貴様等…我を何処まで愚弄すれば気が済むのだッ!!」
どうやら私達がエルムを無視する形で会話を続けて居たからだろうか?
残念ながら愚弄した覚えはないのだが、エルムは怒りを顕わにする。
すると、エルムの周りに魔力の渦が発生した。
どうやら、かなり上位の魔法の詠唱に入った様である。
次の瞬間、私の前に
確か、この鎧はプリンさんが預かってくれていたはず…そう思いプリンさんの方を向くと、可愛らしい笑顔でウインクをしていた。
なるほど、どうやら私がエルムの相手をすると言った時点で、私の鎧『玄武』を用意してくれていたのか。
「玄武、
こ、これが
そして…その力は、私の中に眠っていた一つの感情を呼び起こす事となる。
「これでも喰らえッ!!
おそらくは上級魔法に相当すると思われる魔法が放たれる。
「させません!」
エルムの攻撃が
どうやら、私専用の鎧と言う事だけあって、多大な強化と、私の意思を反映し自動制御も行ってくれる様だ。
「な、何だとッ!?その様な
カチン…エルムの言葉に私の中で目覚めた何かが急激に騒ぎ出す。
ドクン、ドクン…っと、目覚めた何かが私の身体を駆けめぐる…。
あぁ、そうか…コレが怒り…負の感情と言う物ですか…。
「…先程から黙って聞いていれば、
流石に温厚な私でも、いい加減、
よもや、楽に死ねると思わないで下さいませ。」
私はそう言うと、御主人様達の方を向く。
それだけで
「アリス!僕達は先に行く!油断せず無理だと思ったら逃げるんだ、分かったなッ!!」
「はい、畏まりました!」
御主人様が私を信頼し、この場を任せてくれた…それに、無理だと思ったら逃げろと…。
あぁ、何と優しくて素晴らしい事なのだろう。
その事に感激した私は、戦闘中だと言うのに喜びに振るえていたのだった…。
◇◆◇◆◇◆◇
「クックックッ、そろそろ待つのは良いだろうか?」
エルムの言葉に我を取り戻す。
どうやら私を格下だと思って侮っているのか、ご丁寧に私を攻撃せずに待っていた様だ。
「はい、大変お待たせいたしました。」
「ふむ、では別れも済んだ様だし、あの世とやらに送ってやろう。」
「いえいえ、大変申し訳御座いませんが、私は
「クックックッ、そう言うな…貴様の首を、お前の主に手土産として我に楯突いた事を後悔させてやろうと言っておるのだ!」
私の首を主に…つまり、
先程からの
そこまで考えた時、確かに私の中で何かが『ブチッ!!』と千切れる様な音を聞いた様な気がした。
次の瞬間、私の身体から禍々しい光が漏れだした…。
今まで綺麗な色をしていた鎧が黒く染まり、そして禍々しく変化していく。
そして、頭部を守っていた兜…亀を型取っていた兜が、その姿を変え、蛇の形へと姿を変えた。
「あぁん?
さっきから黙って聞いてりゃー調子にノリよってからに!
この世界に、私以外にいるかどうか分からないが、その存在をブラウニーからハイブラウニーへと進化する。
その際、鎧の性質も一緒に取り込んだ様で、別の人格が構成された。
そう…今まで防御しか出来ない様な、ひ弱な存在だったのだが、攻撃性を目覚めさせた私は、
◇◆◇◆◇◆◇
「M・L・C、発動ッ!」
私のもう一つの人格の叫び声と共に背後に玩具の様な城が現れる…だけではなく、その城を守る様に展開されるバリア。
このバリアは
ちなみに、ブラウニーが家を守るのならば、ハイ・ブラウニーは城を守るべき…と言うのは安直な考えだったかも?と少しだけ後悔しているのは内緒である。
「何だ、その
もっとも、貴様は此処で死ぬんだがなッ!!」
あぁ、そうですか…貴方はまだ私を…そして
エルムの行動に悲しくなる一方、私の中の、もう一つの人格が別の行動を開始した…。
「あんだとボケ!雑魚の分際で、この
即席の言葉ではあるが、要は愛の巣だと言う事だ。
それを、何の躊躇もなく大声で叫ぶ、もう一人の人格に…。
「あの…流石にそれを大声で言われるのは恥ずかしいのですが…。」
と、ツッコミを入れる。
いくら私がブラウニー…もとい、ハイ・ブラウニーとして真価を発揮する為に作られた玩具の様な小さい城とは言え、大声で
「あぁん?おめ~も主人格なんだから、あんたは堂々としてれば良いんだよ!
戦闘なんざ、この私がちょちょいのちょいで片付けてやんよ!」
まさかの別人格からのダメ出し…でもまぁ…口が悪いのは、いただけないが…
そう思った私は『あとは任せました』と告げ、別人格に身体を預け意識を手放したのだった…。
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