339ページ目…一時帰宅

「いや~、やっぱり我が家が一番だね~。」


 ローラの所為で大怪我を負った僕を心配した嫁~ズの面々に言われ、僕達は一時帰宅する事になった。

 まぁ、怪我自体は既に治っているのだが、失った血までは戻らないので仕方がない。

 もっとも、エリクサーまで飲んでいるので、おそらく、失った血まで復活しているはずなのだが、どうもフラ付く為、大事を取って帰って来たのだ。

 もっとも、それ以外の大事な理由もあるのだが…。


 とは言え、バカ正直に来た道を同じ時間掛けて戻って来た訳ではない。

 そこは、ほら…行った場所なら瞬時に行けると言う、どこでも○ア…もとい、〖空間転移ゲート〗と呼ばれる便利な魔法がある。

 そのお陰で消費したのは魔力のみ、それほど労力を使った訳ではなく疲れもそれほどない。


「そ、そうですね…ですが、暫く留守にしていた所為で、少々、埃が溜まってるので掃除しなくてはいけませんけど…。」


 僕の言葉にいち早く反応したのはクズハである。

 もっとも、アリスも何か言おうとしていたが、同じ事を言おうとしていたのか黙ってしまった。


「でわ、クズハさん、アリスさん、お願いしますね。」

「は、はい。」

「はい、畏まりました。」


 プリンの言葉に、二人が返事をする。

 基本的に、家事担当はクズハとアリスで、特に何か言わなくても自発的に行動してくれる。

 正直、片付けが苦手な僕には頼りがいのある嫁~ズだ。

 特に、掃除はアリスが主体となっている為、ブラウニーとしての能力をフルに発揮して、新築並みに綺麗にしてくれる事だろう。


 それとは逆に、料理はクズハが主体となる。

 まぁ、料理に関しては家に憑くブラウニーよりも、冒険者として色々な場所に行っていたクズハの方が、色々な料理を食べてきているのでアリスには分が悪かっただけ…とも言う。

 どちらにせよ、クズハとアリスは家事全般が得意なのは変わらない訳だが…。


「プリンは、どうするんだ?」


 二人が家の掃除を始める為、僕とプリン…そしてローラは暇になる。


「私は、ご主人様あなたと一緒にお風呂に入ろうかと…。

 誰かさんの所為で、ご主人様の身体やら服が血で汚れてしまいましたから、洗わないといけません…特に、背中は洗い難いですから…ね?」

「そ、そっか…確かに、背中は上手く洗えないよな…なら、プリン、お願いして良いかな?」

「えぇ、もちろんです♪」

「ローラも、あなたと一緒にお風呂入りたい。」


 僕とプリンの会話を聞いて、ローラも自己主張をする…だが、プリンの答えは…。


「却下です!そもそも、ご主人様を怪我させておきながら、罰を与えないのはとしての責任放棄も同じ事…少し、反省して下さい。」

「飼い主って…確かに、最初はペット代わりに飼う様になったけど、今は、一応、ローラも僕の嫁なんだから、もう少し優しくしてあげても…。」

「そうですか…言われてみれば、本来、ローラさんの飼い主は、ご主人様あなたですから…罰は私からではなく、ご主人様あなたに与えて貰うのが筋でしたね…。

 では、ご主人様あなた…ローラさんに、今回の罰を、お与えて下さい。」


 …なるほど、表面上は、いつものプリンではあるが、僕に怪我をさせた事に対して、かなりお冠の様である。

 だが、ローラも悪気があった訳ではない。


 それに…原因の半分は僕にあると言っても過言ではない。

 と、言うのも…僕の使った石化の魔法の所為で、村にあった食料も薪も、全て石になっていた…。

 その為、お腹を空かせたローラが力加減を間違えて、僕に飛び込んできたのだから…。

 そこで、頑張って考えてみた…いかにしてローラに罰にならない罰を与えるか…すると、一つの妙案が浮かんだ。


「そう言う事なら…ローラに罰を与える。

 ローラ、君に与える罰は…僕の身体を洗う事。

 ローラが僕の身体をよごしたんだから、ローラが洗うのは当然だよね?」

「分かった…よろこんで罰を受ける。」

ご主人様あなたッ!?」


 プリンが驚くのも無理はない。

 何故なら…この罰は、正直、罰であって罰ではないからだ。

 と、言うのも普段から嫁~ズは僕の身体を洗いたがるからだ。


 つまり、十分反省しているローラに対して、これ以上の責めるのは過剰である為、罰にならない罰を与えた…と言う事。

 まぁ、僕の身体を洗いたがっていたプリンには悪いが、ここは我慢して貰う事にしよう。


「んで、風呂から上がったら、みんなでご飯にしよう。」


 そう…これこそ、帰ってきた一番の理由。

 魔神教団が占拠していた村は、全ての物が石化した。

 つまり、料理に使う薪さえも石化しているのである。

 その為、先程まで意識を失っていた僕が無限庫インベントリから食材を出しても料理が出来ない事が判明したのだ。


「ローラ、頑張る。」


 ローラはそう言うと、狼の姿から獣人の姿へと変身する。


あなた、早く風呂入る…そして、ご飯にする。」


 そう言って、僕の腕を掴むと風呂場へと引きずる様に移動をする。

 どうやら、ローラ彼女の中では『僕への謝罪<ご飯』の図式が出来上がった瞬間だった…。

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