337ページ目…尋問

 結局、夜になるのを待って、姿を見られない様にしてから魔神教団の村へ潜入する事になった。

 そして、プチスラ達からの情報を元に、忍び込み易く、また見付かり難い家を見付けた。


 どうやら、そこは若い男が一人で住んでいる家みたいで、家の造りも、それなりになっている様だ。

 とは言え、こちらには気配探知やら隠密のスキルを持っている者が多い。

 かく言う僕も使える…そんな訳で僕達は、すんなりと侵入をする事に成功した。


 もっとも、侵入出来るのと見付からないのは別問題である。

 いや、それ以前に、一人で住んでいる家に、尋問する為に侵入している時点で、絶対に見付かるのだが…。


「な、何だ、貴様らッ!?」

「えいッ!」


 プリンはそう言うと、魔神教団の男の頭を殴り気絶させる。

 とは言え、プリンが手加減をした様には見えなかった。

 死んでいないか不安になる。


 だが、男からは規則正しい呼吸音がするので、命に別状はないだろう。

 そんな訳で、僕達は男を椅子に座らせ縛り上げると猿轡さるぐつわを噛ませる。

 後は、男が目が覚めるのを待つだけとなる。


★☆★☆★☆★


 およそ10分が経過しただろうか…男の意識が戻り掛けるのが分かった。


「クズハッ!」


 僕は、咄嗟にクズハへと声を掛ける。

 次の瞬間…クズハは打ち合わせ通り〖誘惑テンプテーションの魔眼〗を発動する。

 そして、その効果は直ぐ様現れた…。


 目をトロ~ンとさせ、どう見ても正常ではないと言っても良い程の、だらしない顔だ。


「クズハ、頼む。」

「は、はい!え~っと…貴方に聞きたい事があります。」


 プリン達と協力して捕まえた魔神教団の男に、クズハが声を掛けた。


「はい、何でしょうか女王様?」


 クズハを女王様と呼ぶ…その予想外な反応に、僕達に冷たい空気に晒される。


「わ、私は何もしてませんよ?この方が勝手に…。」

「クズハ、落ち着け…誰もそんな事を言ってないぞ?」

「あ、あぅ…。」


 若干、涙目になりながらも、その間、クズハは健気にも頑張って魔眼を維持していた。

 暫くして、みんな冷静さを取り戻す。

 結論として、僕達はこの男の性癖を無かった事にした。


「改めて、貴方に問います。

 この村には魔神教団以外の人はいますか?」

「いえ、この村は魔族の襲撃に遭い、一人残らず殺しております。

 その為、この村の住人は我々、魔神教団だけとなっております。」


 との事…つまり、この村の元住人は魔神教団の奴等によって皆殺しにあった…訳である。


「しっかし…良くそんな事にあった村で、普通に生活出来るよな…。」

「そうですね…ですが、相手は、魔神教団…人に仇為す者達…。

 私達とは、…考えなのではないでしょうか?」

「そうかもしれないな…。」


 僕は素直に、プリンの意見に賛成する。

 だが、僕はプリンが「違う生き物」と言い掛けたのを見逃さなかった。

 もっとも、それを言った所で何かある訳ではない。


 故に、単純に黙っている事を選択しただけだったのだ…。


「では、次の質問です。

 この村には何人の魔神教団がいるのですか?」

「私を含め37名が住んでおります。」


 ふむ…思ったより、少ないな…。


「ご、ご主人様…あと、何を聞けば良いですか?」


 そう、クズハが聞いてくる。

 あと聞きたい事…と言えば、他の部隊が居るか…と言う事と、魔王のいる場所…位だろうか?

 僕がそう言うと、クズハが再び男に質問をした。

 その結果、魔神教団を名乗る者は、この村にいるだけの人数しか、存在していない事が判明。

 更に、ここから更に北北西へ100km程進んだ所に魔王城がある事が判明する事となった。


「さて、これでこの村には用は無くなった訳だが…こいつらをどうするか…だな。」


 正直な話、魔神教団とは言え、皆殺し…と言うのは、あまり好ましくない。

 かと言って、彼等の存在を放置するのは論外だ。


「あの…御主人様あなた、魔神教団の方々を全員を石化してしまうのはどうでしょう?

 それでしたら、彼等の命を取る訳でもありませんし、全て終わった後に石化を解除すれば、彼等を捕まえる事も出来ます。

 まぁ、彼等の行動を見るに、全員、打ち首になるのでしょうが…。」


 そう提案してくるアリス…確かに良い考えかも知れない。


「そうか…まぁ、事後処理は気にしないにしても、石化は良い考えだな。

 よし…そうするか!」


 トドメを刺すつもりのない僕には、アリスの提案に賛成した僕は使用者の周囲のみ安全地点とかし、広範囲に渡って石化をさせる殲滅級の範囲攻撃魔法を使う事にした。


 もっとも、これは零の知識である為、本来であれば『』指定されている様な代物である。


「みんな、僕の周りに集まってくれ!今から凶悪な魔法を使う!」


 その言葉に、プリンを始め全員がピッタリとくっついて来る。

 本来ならば、もう少し離れて…と言ってしまう距離ではあるが、今から使う魔法がヤバイ魔法だけに、そうも言ってられない。

 それでも、みんなが安全な場所セーフティーエリアに入った事で、僕はその魔法を発動させる。




「〖魔法:石化した世界イッツ・ア・ストーンワールド〗発動!」


 次の瞬間、光が広がったかと思うと周囲の物が一瞬で石になる。

 その光は、効果範囲内の物を全て石化していった…家も家畜も…そして、人間さえも…。

 尋問する為に捕まえていた魔神教団の男も、安全地帯の外だった為、例外なく石化していた。


「ハァ、ハァ…ハァ、ハァ…ったく、この魔法…魔力の消費、激しすぎだろ…。」


 久しぶりに起こる、魔力の枯渇による目眩で、思わず倒れ掛ける。

 まさか、魔法を一つ使っただけで、ここまで魔力を消費するとは思わなかった。


「あ、危ないッ!」


『ボフッ!』


 ちょうど真正面をキープしていたクズハが、いち早く気が付き、僕を抱き締める様に保護する。

 その豊満な胸…もといエアバックのお陰で、僕は怪我一つ無く抱き締められた。

 いつもなら、プリンが我先に…なんだけど、真後ろに居た為、僕を庇うには位置が悪かった様だ…。


「あ、ありがとう、クズハ…それと、スマン。

 それから、みんな…悪いんだけど、今日はこの村でお泊まりになるけど、我慢してくれ…。」


 流石に、こんな場所でお泊りなんてしたくないと思うが、僕はそれだけ言うと、意識を手放したのだった…。

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