302ページ目…移動中の一コマ
僕は今、高速移動型ゴーレム…通称:車を『ブロロロ~』…じゃないな、エンジンではないので音は『シュィーーーーン』と言うモーター音に近い駆動音で走らせている。
助手席には、愛しい嫁~ズが一人、プリン…
そして、後部座席には、同じくクズハ、アリス、ローラの順で座っているのだが、クズハもローラも、高速で移動する際、長時間乗る場合、窓際じゃないと酔ってしまう為、消去的にアリスが真ん中の席に座る構図が出来上がっていた。
かく言う僕も、車には酔いやすい体質だったが、運転する様になってからは平気になった。
もっとも、他の人の運転だと、酔いやすいのだから不思議で堪らない。
ちなみに、僕達が現在走っている場所は、砂漠のど真ん中だったりする。
「アリス、大丈夫?酔ったりしてないか?」
「はい、
「
「そうだな…ローラ、吐きそうになったら、直ぐ言うんだぞ?」
「何か違う…。」
「ま、まぁまぁ…ローラさん、まだまだ先は長いんですから、窓の遠くを見て意識を逸らさないと余計に気持ち悪くなりますよ?」
とは、クズハの言である。
声の質から、クズハもだいぶキツくなってきている様なので、そろそろ休憩を入れた方が良いのかもしれない。
「そうだな…でも、クズハも早めに言うんだぞ?
車は急には止まれないんだからね?」
そう、当たり前の事ではあるが、この世界に置いても運動エネルギーやら位置エネルギーやら質量保温の法則と言うのはある。
もっとも、そのままの名前ではない様だが、異世界転移した時に自動取得している翻訳機能が、分かりやすくその名前を使っている様だ。
まぁ、そんな話は、正直どうでも良いのだが高速で移動している車を止めようとすると、一瞬で止まる事はない。
どうしても、制動距離が発生する。
ましてや、今は5人もの体重が車に掛かっている為、高速で動く分、エネルギー量が増え、止まるまでの距離が伸びてしまう。
その為、止めてと言われてから、止める作業をしても、実際に止まれるのは、操作をしてから暫く後…と言う事になる。
ちなみに…これは、馬車を使っていたとしても速度や距離こそ違うが、制動距離が必要なのは同じである。
「まったく…お二人は鍛え方が足りないから、この程度の揺れでその様な状態になるんですよ。」
「いやいやいや、その姿で言われても、説得力無いから…。」
そう…今、プリンは、いつもの人型ではなく、スライム…ポヨポヨの水玉みたいな姿で助手席に座っている。
「だって…人型になると気持ち悪くなるんですもの…。」
「まぁ、プリンの場合、人型になろうとすると三半規管やらまで完全に構成しちゃうからな…。」
「そうなんですよね…手や足を伸ばしたり触手を生やして攻撃とかは、現在可能になってますが、まだ細かな部分のみの構築の改変が出来ないなんて、肉体操作の盲点でした…。」
「それは…仕方がないんじゃないかな?そもそも、プリンの人型は、吸収した人物の情報を元にプリン用に構築された人型…身体なんだから…。
でも、手足の変化は出来る様になって居るんだから、その内、直ぐに可能になると思うよ?」
「そうですね…そうすれば、ずっと人型で居られるでしょうね。」
「うん…僕もそう思うよ。
でも…何で、プリンはそんなにスライムの姿より人型に
「そんなの決まってます!ご主人様が人族だからです!
だから私も、ご主人様と同じ人型…人族の体が良いのです。」
その話を聞いて、ローラもウンウンと肯いている。
考えてみたら、ローラも結婚してからは僕と一緒の時は、極力、狼の姿から獣人の姿を取る事が多くなった気がする。
「そっか…そりゃそうか…。
でもさ…これだけは覚えて置いてくれるかな?
プリンもローラも、人型の姿を好きになったんじゃないんだって事。
僕は、プリンがスライムの姿でも大好きだし、ローラが狼の姿でも大好きだ。
もちろん、クズハもアリスだって大好きだよ。
僕が君達を好きになったのは君達だったから…姿形ではなく、君達の心に惚れたんだ。」
もっとも、人型の方が、色々と出来る事があるから嬉しいのは秘密である。
「
スライムの身体に赤みが差す。
もちろん、他の嫁~ズ達の頬も赤く染まり、プリンの言葉を肯定する様に、ウンウンと首を振っている。
ただ、一人だけ激しく首を振っているヤツがいる。
「ローラ…そんなに激しく首振ってると、気持ち悪くなるぞ?」
「
「ちょッ!?すぐに止めるから、車の中で吐くなよッ!!」
僕は慌ててブレーキを踏む。
それにより、高速移動型ゴーレム…車に停止命令が伝えられ、車は走行作業から停止作業へと移行…ただし、停止まで少々時間が掛かる。
『キキ~~~ッ!バタンッ!』
車が、まだ動いているか止まったのか微妙なタイミングで、ローラは車から飛び出し、急いで車から離れていく…そして…。
「オ、オウェ~~~!ハァハァハァ…。
ま、間に合った…。」
ローラはそう言うと、生活魔法の水を作り出す魔法を使い、うがいをする。
「しっかし…以前、クズハもローラも車で速度を出しても平気だったのに、どうしてそんな気分が悪くなったんだろ?」
「さ、さぁ?体質が変わったとかですか?ですが、
「そう…ローラもエリクサー飲んだ。
だから、ローラも病気じゃない。
それより、目的地、まだまだ遠い…急ぐ。」
「あ、あぁ…でもさ、何だったら家で待ってたらどうだ?
それなら、目的地付いたら、直ぐに〖魔法:
「
今、私達が向かっているのは戦場…しかも、最前線よ?
当然、既に戦闘になっている可能性だってある。
そしたら、
そうなったら、この子達を呼ぶ暇なんて、多分、無いと思うわ。
結果、ご主人様が戦っているのに、自分達はそれを知らず…また、ご主人様が危険な目にあっても助ける事すら出来ない。
そんなの、の妻として我慢出来るはず無いじゃない。
だったら、吐き気があろうが何だろうが、大した問題じゃない!
そう…私達は、
私達は、そう決めているんですから!」
「は、はい、プリンさんの言う通りです。」
「ローラ、
「ですね、私も
他愛も無い事と言えばそれまで…だが、そこには、それを聞いて、地味に嬉しく感じる僕が居た。
「はいはい…分かりました!
その代わり、気分が悪くなったら、直ぐに言うんだぞ?」
僕はそう言うと、ローラを再び車に乗せ、目的地へと走らせるのだった…。
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