228ページ目…魔族との戦い【4】

 プリンにフォローされながら俺達と魔族のラドルとの戦いは、次第に俺達の優勢へと傾いてきた。

 と、言うのも僕達が受けるダメージの殆どが物理ダメージなの対し、魔族の方は精アストラルダメージである。


 そして、ラドルの攻撃により弾け飛んだ肉体も、自爆によって受けたダメージも、プリンによる回収と吸収…更には俺の反則的チートなスキルにより異常とも言える回復力…その上、回復魔法によるのありえない超回復により、随時、回復されていく。


 それに対して、ラドルが喰らうダメージは精神ダメージ…その所為で、ラドルはその力は次第に減少していく。


「クソッ!なんなんだよ、貴様はッ!!

 そもそも、何故、何も恐怖しない!俺は魔族なんだぞッ!!」

「恐怖?ごめん、ちょっと何言ってるか分からないんだけど?」

「貴様ッ!人族はその負の感情を、俺等魔族に捧げるだけの家畜だろうがッ!!」

「いや、だって怖くないし…そもそも、今、追い込まれてるのってお前の方だろ?」


 俺は呆れる様な仕草ジェスチャーをする…すると、更にラドルが怒り出す。

 って、言うか…そんだけキレてると、あの面白くない芸人を思い出す…もしかして、キレ芸ってヤツですか?


「もう許さねー!貴様は絶対殺す、今すぐ殺してやるッ!!」


 吠えるラドル…それに対して、俺は余裕の表情を見せつつ、内心では少し焦っていた。

 ちなみに、ラドルの動きに関しては過剰になりそうそうな程、警戒している。

 実際には、余裕の表情なだけあって、かなりギリギリな戦いなのである。


〔クソッ!なかなか致命傷を与えれない…何か良い手はないのか…。〕

〔ご主人様、焦らないで下さい!かならず何か良い手がありますから!〕

〔そ、そうは言っても〖魔法:精神崩壊アストラル・ブレイク〗が未完成だがら魔神剣が使えないからな…直接、斬り付ける事が出来ればあんなヤツ…。〕


 そう、俺の使う〖精神崩壊〗の魔法は既に何度も放っているにも関わらず、その力は安定しないのだ。

 流石に逆流して自分の体を傷付ける事は無くなった物の、出力が安定しないので完成とは言えず、また不安定な為、掌握する事が出来ないのだ。


〔何か、何か良い手はないのか…。〕


 僕は再びステータスを開き隅から隅まで確認する。

 すると、一つの称号を見付ける…そこには〖魂喰らいソウル・イーター〗の文字。

 僕は元の世界で得た知識を総動員してソウルイーターの事を思い出す。


 とは言っても死神候補生?が悪魔の魂を~と言う話ではなく、空を飛ぶと言うか泳ぐと言うべきか…禍々しい蛇?みたいな魚みたいヤツが、生き物の体をすり抜けると、その口には魂が咥えられており、その魂を飲み込まれた者は死ぬと言うヤツである。


 そして、俺は思い出す…この世界に来てからの事だが、ぶっちゃけた話…とことんご都合主義で話が進んだ事。

 更には、いつの間にか自分で魔法を作り出せた事…ならば、召喚魔法すらも作り出せるんじゃないか?と言う事を。


 もっとも、この世界で召喚魔法なんて見た事がないので召喚魔法と言う物があるのか?と思った程だ。

 この世界に来て直ぐの頃、召喚魔法の項目があったが使えずガッカリした事があるのを今でも覚えている。


 だが、今の俺ならば…やってやれない事はない!


〔プリン、また無茶をする、フォロー頼む!〕

〔わ、分かりました、お任せ下さい!〕


 俺は、プリンの返事に軽く肯くと、無謀な賭に出る。

 何故なら、俺が見た魔族はラドルともう一体…聖騎士団の団長の体を奪ったであろう魔族がまだ何処かにいるのだから。

 そう、ラドルだけでもギリギリなのに、もう一体の魔族まで合流したら、確実に負ける…そうなれば、誰も守れないのだ。


 ただ召喚するだけじゃ、確実に倒せるとは思えない。

 確実に倒すにはどうするべきか?魔神剣よろしく直接斬り付けて確実に息の根を止めるしかない。

 なら、やはり魔神剣で…だが、魔法ではなく召喚獣…本当に可能なのか?


 そして、それだけで倒せるのか?心に迷いがある…こんな状態では…。


〔ご主人様なら、絶対大丈夫です♪〕


 ここでプリンからの一言…。


「はは、ははは、はははははははははッ!」

「貴様、気でもふれたか?」

「いや、自分のバカさ加減に笑っただけだ!」


 プリンからの、たった一言で悩みも何も吹き飛ぶ。

 そして、かならず成功すると確信する…そうか、何も心配する必要なんて無かったのだ…何故なら…。


「俺達は一緒にいるのだから!」

〔私達は一緒にいるのだから!〕


 僕とプリンの心が一つになる感覚…どれだけ無茶をしても、僅かにズレがあった感覚すらもなくなる。

 もう、何も畏れる事はなくなった…ならば、後は解き放つのみ!


 僕は何の迷いもなく、その呪文を口にしたのだった…。

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