117ページ目…イエスorノー

 やっとの思いで大量のオリハルコンを手に入れた訳だが…ここで問題になってくるのが、この骸骨スケルトンである…。

 何か事情が知っている様だが…モールス信号で合図されても、正直、には分からない…はず。

 もしかしたら、じぃちゃんとの記憶にあるかもしれないけど…アレは基本的には触れてはいけない物として神様達と約束した認識がある…。


 そんな訳で、簡単に記憶を甦らせる訳にはいかないし…とりあえず、大量のオリハルコンがあるんだから、それを鎧状に加工して、この骸骨…スケルトンに装備させようと思う。

 もちろん、全身鎧フルプレートアーマーである。

 外見だけで言えば鎧しか見えないので、これなら例え町中でも問題なく出歩けるはずだ。

 もっとも…骸骨スケルトンだけに筋肉すらない訳だから、重たい鎧を着て歩けるか…と言う疑問は残る。

 まぁ、その時はその時…幾つか対策を考え付いたので、予定通り鎧の作成に取り掛かる。


「〖魔法:模型創造モデリング〗!」


 〖模型創造〗の魔法が発動すると共に、グニョグニョと動き、適当な大きさになった所で、ぷちりと切れる。

 そして…そこから、どんどん変化して一つの鎧が完成する。

 素材こそオリハルコンだが、造りはシンプル…下手な装飾なんて言う物は一切無い。

 ただ、着て身を守る為の物…としての価値しかない鎧の完成である。


 そして、スケルトンが着れる様なサイズで…しかも極力薄く作ってある為、そこまでの重量はないはずだ。


「さぁ、着てみてくれ!」


 俺は出来立てホヤホヤの鎧をスケルトンに渡そうとする…だが、スケルトンはカタカタと顎を鳴らすだけで装備しようとしない…言葉が通じていないのだろうか?


 だが、それにしてはスケルトンの反応が…。

 仕方がない…一応、確認をしてみるか…。


「俺の言葉が分かるなら、右腕を上げてくれ。」


 すると、スケルトンは、すんなり右腕を上げてくれる。


「次に左腕を…。」


 上げてくれと言う前に左手を挙げてくれる。


「ふむ…だったら、イエスなら右腕、ノーなら左腕を上げてくれ。

 君は、ゴーレムの中に居たけど、自分から入ったのかな?」


 すると、左腕を上げた…つまり、ノーって事か。


「だったら、誰かに閉じこめられた…と、言う事かな?」


 今度も、左腕を上げる…どう言う事だ?


「自分でも他人でもない…あっ、もしかして分からないって事か?」


 今度は右腕を上げる…どうやら正解か…。

 だったら、ゴーレムの事を知らない可能性が高いと思われる。

 仕方がない…ダメ元で聞いてみるか…。


「えっと…君が閉じ込められていたゴーレムに付いて、何か知っている?」


 するとスケルトンは予想通り、左腕を上げた。

 やはりダメだったか…あとは、このスケルトンをどうするか…だ。


「あ…そう言えば、生前は男だったのかな?」


 すると左腕を上げた…つまり、女性だったと言う事だ。

 つまり、今はスケルトンではあるが女性…この場合でも、当てはまるか分からないけど…じぃちゃん曰く、女性には優しくする事。

 仕方がない、今回は極力助けてやる事にするか…。

 そこで、俺は新たに質問をする事にした。


「何歳だった?10代?」


 すると、少し迷った感じで右腕を上げた。

 ちょっと怪しい…。


「本当に?」


 今度は、迷わず右腕を上げる…単純に歳を教えたくなかっただけの様だ。


〔ご主人様、女性に歳を聞くのはどうかと思いますが…。〕


 と、プリンから注意を受ける…なので、『必要事項』だからと念話で返事をしておくのを忘れない。


 そして、俺は先ほどの鎧に近付き、手を加える事にする。


「〖魔法:模型創造モデリング〗!」


 先ほど作ったのは、シンプルな鎧だったのだが、着用者が『元女性』と言う事もあり鎧の外装を変化させる事にする。

 とは言え、胸の部分を膨らませたり、腰回りを少し細めにしたり…お尻の部分を若干大きくしたり…。

 そして…多少の飾りっ気を鎧に付属させる。

 これで、外見だけで言えば女性の騎士に見えなくもない。


 もっとも、全身鎧フルプレートアーマーの女性騎士が、こんな所に居ると言う違和感はどうしようもないのだが…。

 何にせよ、これで移動は問題ない…はずだ。


「さぁ、今度こそ着てみてくれ。」


 僕の呼び掛けに、スケルトンは鎧の所までは行く物の…一向に、装備しようとしない…。


「もしかして、着たくない?」


 すると、左右にブンブンと首を振る…いや、そこは腕を上げれば良いんじゃね?

 とは思う物の、着たくない訳ではない様だ。


「だったら…何で着ないの?」


 その質問に、さらに激しく首を左右にブンブンと振る…。

 いったい、どうすれば…そんな事を考えていたら、プリンから話し掛けられた。


〔あの…鎧の着方が分からないのでは…。〕


「あッ…。」


 普通に考えて、そこら辺にいる10代の女の子が鎧なんて着る事なんて、まずあり得ない…。

 だとすれば…着れと言われて、はいそうですか…とはいかない。

 自分が出来るからと言って、他人も出来るとは限らない…ちょっと考えが足りなかったと反省する。


「もしかして、着方が分からない?」


 念の為、確認の為に質問をする…今度は首を縦に振って肯定する。

 正解だったみたいだ…さすがプリン、良く気が付いたと褒めてあげたい。


「なら…俺が着せてあげるよ…このままじゃ、街まで行けないし…ね。」


 街まで…その言葉が嬉しかったのか、スケルトンはその場で飛び跳ねて喜んでいる。

 だが、よく考えて欲しい…骸骨が、嬉しそうにはしゃいでる姿を…はっきり言って『不気味』の一言に尽きる。

 まぁ、一部のマニアな人なら喜ぶかもしれないが…個人的には、あまり見ていたい物じゃない。

 俺は、溜息を付きがら、彼女?に鎧を着せる為、鎧をバラしていくのであった…。

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