第282話 聖印騎士団の話1
「そんなところで団長と出会っていたなんて…。それにしても団長は変わらないな…、竜を助けるなんて団長らしいぜ。団長はあのときの団長のままなんだ…」
「ティアさんが無事でよかったわ…。さすが団長ね。それにしてもエルニサエル王国ハプスクラインのダンジョン…、そこにそんなものが封印されていたなんて驚きだわ!」
そのような反応を見せながらティアの話を聞いているのはレーヴェ神国聖印騎士団で三番隊隊長を務めているフローラ=ロンデックスと六番隊隊長を務めているミスティア=サックウェルの二人である。
フローラはショートにした褐色の髪と金色の瞳を持つ細身の女性だ。切れ長の目に整った顔立ちは人の目を引くことだろう。その装いはショートパンツとシャツに上着といった軽装で動きやすい衣装を好んでいるように見える。そして何より特徴的なのはその頭部についている獣耳だ。一番隊で隊長を務めるミケと同じ獣人らしいが、種族はどうやら異なるとティアは感じている。
もう一人のミスティアは黒い長髪に紫色の瞳と整った顔立ちが特徴的な女性である。口調は普通の女性を思わせるが、胸から腰にかけてのラインはまさに大人の女性といった容姿を存分に主張しており、妖艶な雰囲気を醸し出す。さらに男を虜にするようなその愁いを帯びた瞳はフローラとは異なる美しさと魅力に溢れていた。そしてその装いは随分と扇情的である。胸を強調したドレス風のチューブトップの裾の長いワンピースには大胆なスリットが入っており見事な脚線美が伺えた。そしてその上からゆったりとしたローブを羽織っている。
そんな二人にティアはプレスとの出会いを話していた。黒い魔物達の策謀に巻き込まれたティアは自身が封印されていたハプスクラインのダンジョンでプレスとの邂逅を果たすことになったのである。
「その黒い魔物ってやつらの話はマルコさんからも聞いてるよ。何が目的なのか知らないけどほんっとうに迷惑な連中だね」
「ええ。それにガーランド帝国やフレデリカ聖教国も無関係でないとなるとわたしの任務も増えてくるかもしれないと思っているの」
黒い魔物達と遭遇した時、クレティアス教の司祭とも戦闘になることが度々あった。
この大陸では西側に行く程、人間と獣人などの亜人を区別し、亜人への差別的な対応を取るクレティアス教の信仰が強くなる傾向がある。そのクレティアス教の総本山が大陸最西端にあるフレデリカ聖教国。そしてフレデリカ聖教国の東に国境を接している大陸最大の国ガーランド帝国はフレデリカ聖教国と蜜月の関係にあり、国教をクレティアス教としていた。
大陸最東端にあり、多様な種族が暮らしており、多神教の信仰を認め、目立つ神は放浪神マルコ、そして実際マルコが暮らしているレーヴェ神国とは極めて相性の悪い国々であり、過去、様々な軋轢があった。現在も一定の距離を保って最低限の付き合いをしているといった状態である。
「ミスティア殿?あなたの任務が増えるとは…?」
ミスティアの言葉に反応したティアにミスティアが笑顔で返答する。
「わたしも隠蔽が得意なの。そう言えはティアさんには私たちの役職は説明したけど具体的に聖印騎士団の各隊がどんなものかは聞いてないのよね?」
「うむ。ミケ殿が剣士、カレン殿は魔導具師、サラ殿が魔導士ということは伺っていたが…」
「そっか!なら先ずはその説明からだな!」
任せろと言わんばかりにフローラが会話に割って入る。
「ミケが率いているのは一番隊、前衛職と呼ばれる者達が所属している。様々なタイプの剣士がいるし、大盾持ち、槍使い、小剣使い、メイスなんかを使う者も所属している。俺的に一番、騎士団の部隊らしいっていうとやっぱり二番隊になると思うな!」
フローラの説明が耳に入ったのか猫の耳をピクピクさせつつミケが立ち上がって胸を張る。
「あたいの隊は魔物との戦いで戦力の根幹となる部隊だよ。頼れる連中ばかりだから宜しくね!」
ミケの笑顔が弾けるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます