第281話 小宴
王城では丁寧かつ速やかに宴席の準備が進められている。役職ごとに職務に就く時間帯と宴席に参加する時間帯の調整は既に終わっているらしい。普段は見事なまでの荘厳さを湛える王都ガイアクレイスの王城も今日かぎりにおいてはうきうきとした明るい雰囲気を帯び、賑やかさと華やかさが滲み出ているようである。
「本当に久しぶりだね…。また会えて本当に嬉しいよ」
そう言ってこの国の国王であるハインリッヒ=ウィルフォレスト=ラ=レーヴェが赤
ちなみにこの赤
ここはこのレーヴェ神国でもごく限られた者だけが入室を許される王と騎士の間と呼ばれる一室。宴席が催されることになり、準備のために慌ただしくなった王城内で他の者たちの邪魔をしないようにと、この国の根幹を支える者達はこちらの部屋へと移動し、時間的には少し早いが祝いの一杯目を始めることにしたのであった。
「さて…、久しぶりに皆が揃ったことは実に喜ばしい。ティアさんのこともある。自己紹介といこうじゃないか?」
そう言う国王ハインリッヒの言葉に合わせるかのようにレーヴェ神国聖印騎士団で副長を務めるフランツが立ち上がる。
「では僭越ながらこのフランツがティア様にここに居並ぶ者達を紹介させて頂きましょう」
にこやかな笑顔でそう言うとフランツがティアに向け改めて全員の役職と名前を紹介した。
レーヴェ神国の国王であるハインリッヒ=ウィルフォレスト=ラ=レーヴェ。
レーヴェ神国の宰相を務めるジュール=ヴォルフガング。
レーヴェ神国相談役、レーヴェ神国全騎士の指導教官にして大商会を率いる商人。この国の建国時から存在している神格、放浪神マルコ=ファーガスン。
レーヴェ神国聖印騎士団、団長プレストン=レイノルズ。
レーヴェ神国聖印騎士団、二番隊隊長、ミケランジェロ=ハーティア。
レーヴェ神国聖印騎士団、三番隊隊長、フローラ=ロンデックス。
レーヴェ神国聖印騎士団、四番隊隊長、カレン=ハイウィンド。
レーヴェ神国聖印騎士団、五番隊隊長、サラ=スターシーカー。
レーヴェ神国聖印騎士団、六番隊隊長、ミスティア=サックウェル。
聖印騎士団の各分隊長…、タイプは違えども全員が見目麗しいと形容できる美形揃いであった。
「…そして私がレーヴェ神国聖印騎士団で副長を務めるフランツです。また聖印騎士団の一番隊隊長は空位、最後の七番隊隊長は不明となっております。取り急ぎ役職名と名前はご紹介できましたがその先はこの席と夜に催される宴席でその関係を深めて頂ければと思います」
改めて部屋にいる全員の紹介を受けたティアはその不思議な説明に反応する。
「不明?フランツ殿?一番隊隊長のこと…、ユリア殿のことは主殿から聞いている。しかし七番隊隊長は不明と伺ったのだが…?不明とは…?」
「流石はティア殿。そこに気が付きましたか。レーヴェ神国聖印騎士団は設立以来、団長、副長、そして七人の分隊長で幹部が構成されてきました。もちろん一部分が空位である時期も多くありますがね。ですが、その中で七番隊隊長だけはその存在が秘匿されているのです。そしてそれは時の国王、団長、そしてマルコ様しか知らない極秘事項となっています。さらにこれは特別な契約魔法で縛られており、御三方は然るべき時まで七番隊隊長が誰であるのかを示すことも口にすることもできないのです」
「そ、そのようなことが…」
「そのため私も随分と長い時を副長として過ごしていますが七番隊隊長にはお会いしていませんね…」
なるほど、と理解を示すティア。そうして彼女自身も立ち上がると、
「我も自己紹介をしなくてはな…。我が名はティア。かつてはグレイトドラゴンの長を務めており、今は主殿の眷属として主殿の旅に同行している者だ」
簡単な挨拶を済ませた。
「ティアさん!昨日ぶり!」
「ん!」
「昨日のお話の続きをお伺いしたいですわ!」
ミケ、カレン、サラの三人がそう声をかけてくる。
「うーん!ティアちゃん!相変わらず美しいわ!聖冬祭が本当に楽しみね!」
とこちらはマルコ。その言葉から聖冬祭のイベントにティアが参加することを悟った皆が一斉に反応する。
「そういうことか!今年は楽しいことになりそうだ!今回はあたいも参加する!マルコさん!奇麗な衣装を宜しくね!」
「ん!ボクも出ようかな…。ティアさんだけが出るのはちょっとマズい…」
「ランキングがどのようになるか楽しみですわ!もちろん
そんなミケ、カレン、サラだけではない。
「そういうことなら俺も出場だな!」
「わたしも当然出場しますよ」
フローラ、ミスティアと紹介された二名も名乗りを上げる。そうして二人はティアへと向き直った。
「初めまして!ティアさん!おれが三番隊隊長を務めるフローラだ!会いたかったぜ!本当、マジ美人で驚いたよ!」
「同じく六番隊隊長を務めるミスティアよ。よろしくね!ねえ、ミケ達から話だけは聞いていたの。この国を離れていたときの団長の様子を教えてくれない?」
二人がとびきりの笑顔で椅子ごとティアの元へと移動する。そうして王城の一室内で小さくも大変に華やかな宴が始まるのだった。
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