第261話 奇妙な助っ人
プレスは五百人を超える狂戦士化された人々全員を助けることを決めそのための行動を開始する。今なお止まることなく飛び掛かってくる人々の攻撃を捌きつつプレスはダンジョン内にいるティアへと念話で話しかける。
「ティア!ここにいる五百人くらいを対象に
「主殿!?それは…?」
やや困惑気味にティアが聞き返す。
「彼らを助けるには最初に黒い魔物を滅ぼす必要がある。だが黒い魔物が全員と魔力回路を繋いで制御下においているため、奴を滅ぼして一人を助けている間に他の人々は死んでしまうことになる。全員を助けたいんだ!」
「…しかし一人を救うのにも奇跡に等しい魔力操作が必要だったのではないか…」
そう呟くティア。そしてはっとしたかのようにプレスへと問い質す。
「それに
「その危険性は分かっているけどね…。やるしかないってところだ…」
プレスは襲い掛かる狂戦士達を払いのけると飛び退って距離を取る。そして背中の木箱を地面へと下ろした。
「待つのだ!主殿!それは無茶だ!」
必死なティアの声が聞こえてくる。
「皆、必ず助ける…。こんな邪法は存在してはいけないんだ…」
プレスが胸元から一枚の紙を取り出したその時、
『ボクが手伝う!!』
プレスとティアの脳内に念話による鈴を鳴らすかのような声が響いた。いやそれはこの街に住む全員の脳内に響いていた。驚いた黒い魔物が制御を忘れたのか狂戦士化された人々も動きを止めている。
「誰?」
「何者だ!?」
二人は問い返すが瞬時に使われている魔力と規模で声の主を特定する。
「「!!!」」
二人同時に驚愕した。それは驚くべき存在からの念話。
「「ダンジョンコア!?」」
その念話はダリアスヒルの街にあるダンジョンコアから届いたものだった。
『うん!助けてくれて本当にありがとう!ボクも手伝うよ。何をすればいい?』
その言葉にプレスも困惑を隠せない。ダンジョンコアに意思があるとは思ってもみなかった。この一瞬で聞きたいことが山ほど発生したのだがとりあえず最小限に留めることにする。
「聞いてもいいかな?なぜダンジョンコアがこの街を助ける?」
『ダリアスさんに頼まれたの。この街を…、住んでいる人々を好きになってほしいって。そしてこの街に危機が迫った時、きっとレーヴェの騎士様が助けにくるからそれに協力してほしいって。だから約束したの。あなたはレーヴェの騎士様?』
まだまだ聞きたいことや確認したいことだらけだとプレスは思った。しかしここは自身の直感に判断を委ねることに決める。ここで全員を救うと信じて…。プレスは手のひらサイズの金属でできた一枚のプレートを天に
「おれはプレストン=レイノルズ!レーヴェ神国聖印騎士団で騎士団長を務める者だ!!ダリアスヒルのダンジョンコアよ!貴方の力でここにいる全ての狂戦士化された者達に
紋章を持つプレスの手に
『ダリアスさんから教えて貰った紋章だ。うん!レーヴェの騎士様を手伝うよ!その魔法って…、復元の魔法だよね。ダリアスさんに見せて貰ったことがある。大丈夫、できるよ。その魔法一つを大きくして全員に?』
「ああ。
『分かった!魔法の展開それ自体はボクの魔力量で大丈夫だと思う。でも魔力回路の復元はちょっと難しいね。方法を教えてくれるかな?』
「ティア!」
「主殿、任された!我がその手助けさせてもらう」
『ありがとう!じゃあ始めようか?その結界を解除してくれる?』
言われるままにプレスは
『ダンジョン領域拡大!!』
声と同時に魔力に包まれるような不思議な感覚がプレスを襲う。
「こ、これは…。この感じはダンジョン!?この大広場が??」
『そう!騎士様が結界で覆っていた空間…、大広場っていうのかな?それをダンジョンの一部にしたの。これでボクの力を使うことができる!』
プレスは言葉にできないくらいに驚いたが今はそことを表に出すことなく戦闘に集中する。ダンジョンコアに同意を示すと胸元から紙を取り出すと右手の人差し指と中指の腹を噛み、流れる血で魔法陣を描いた。完成した魔法陣を箱の側面に押し当てそして唱える。
「始めようか…。
『ボクも…。
重なる二つの詠唱がダンジョンと化した大広場に響くのであった。
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