第249話 プレスを待っていた者達
ゆったりと長剣を構えるプレスであるが、その内心も同じように…、とはいかなかった。
『数が多すぎるね…。そしてあの魔力の流れは…』
狂戦士化された者が想像以上に多かった。これは誤算である。百人近くとは思っていたがざっと見渡してその五倍はいるようだ。
そしてそれ以上にプレスの目を引いたのは狂戦士化したものから伸びている糸状の魔力が目の前にいる黒い魔物と繋がっていることだった。黒い魔物に声をかける前からその魔力に気付いていたプレスは直感的にそれを切断してはいけない物であると断定。
『情報が必要だね…』
そう考えると共に自らの姿を現すことにしたのである。
「フフフ…。ドウシタ?攻撃シテコナイノカ?」
黒い魔物はプレスを嘲笑うかのように言ってくる。プレスの視線から彼が状況を把握したと思ったのだろう。
「コノ魔力ニキヅイタカ?流石ニ目ガイイナ。コレハコイツラノ魔力回路ニオケル制御ヲ俺ノ魔力回路ト繋イダモノダ」
聞いていたプレスは眉一つ動かすことなく長剣を構えているが、現状が最悪と表現しても足らない程の状況であることを理解する。
「理解シタヨウダナ。ソウ、俺ヲ滅ボセバコイツラノ魔力回路モ止マル…。キサマハ俺ニ攻撃スルコトハデキナイ。ソシテコイツラハ俺ノ命令ニヨク従ウノダ!」
プレスは高速で思考を巡らせる。黒い魔物の言うことは恐らく正しいのであろう。そのことはその魔力の流れから予想がついていた。この状況であっても狂戦士化した者が一人や二人であれば黒い魔物を滅ぼすと同時に対象を救うことがプレスには可能である。しかしこの全員を救うことは不可能と言わざるを得なかった。
しかしできないことが無い訳ではない…。暴走したレイラの時と異なりここに居る狂戦士化した人々は黒い魔物に従うという。そう言うことであれば…。
「
プレスがそう唱えると透明な障壁がプレスを中心に展開さる。
「ナニ!?」
黒い魔物を驚きの声を上げる。その障壁の規模は大きく狂戦士化された者達や黒い魔物を含めて大広場を覆うように展開された。魔物達を強固な結界でこの大広場に閉じ込めたのである。
しかしこの状況でプレスが使うとまた別の意味を持つことになる。グレイトドラゴンを超える遥か格上の存在となったティアと魔力回路が繋がっているプレスにとって
組織として攻撃してくるのであればそれを捌くことがプレスには可能であり、周囲への被害を避けることもできる。
「おれが生きている間、お前達はここから出ることは絶対にできない…。さて…、戦闘を始めようか…」
プレスは余裕の表情を崩すことなくそう告げる。事態を理解したであろう黒い魔物が先程の余裕を忘れプレスへの敵意を露にする。
「小癪ナマネヲ…。アイツヲコロセ!!イキノネヲトメルノダ!!」
黒い魔物が発する指令に従うかのように狂戦士化した者達が武器を構えると次々にプレスへと殺到する。しかしプレスにはその動きは緩慢に見えた。孤児院の森で戦ったレイラほどその動きは速くない。操られた状態では肉体が自壊する程の全力での行動は制限されているらしい。
『せっかく集めた戦力が自壊したのでは意味がないからね…。予感が当たってよかったよ』
そう考えつつ結界を維持したままのプレスは攻撃を捌いて高速で移動を始める。
「時間稼ぎにしかならないかもしれないけど、とりあえず何ができるか考えながらやってみよう…」
可能な限り狂戦士化した人々を傷つけないよう飛び回りながらもプレスは事態の打開策を考えるのであった。
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