第233話 C級冒険者は壁を斬り裂く
一見すると何もない壁に向かってプレスが金色の長剣を構える。途端に先程まで何の変哲もない壁が漆黒へと色を変える…、と同時に生き物のように激しく
「この剣が警戒すべき存在って分かったようだね…、いくぞ!」
ギイィィィィィィィィィィィィィィィィ!!
本来、生き物ではない筈の壁から凄まじい叫び声が響く。すると先程まで波打つ布のように
「前にも似たようなことを言った気がするな…。こんなものでこの世に生きる我々をどうにかできると思うなよ…」
そんな言葉と同時に一歩下がったプレス無数の斬撃をもって全ての触手を斬り払う。斬り払われた触手は金色の光を纏って霧散する。そして再度、壁との間合いを詰めたプレスが金色の長剣を振るう。
ガアァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
更なる断末魔の如き絶叫が響き渡ると同時に壁がさらなる動きを見せる。膜状のそれが壁から剥がれ落ちたかと思うと液体のように形状を変化させた漆黒の物質がプレスを包み込もうとした。
「せい!」
プレスが気合をこめた言葉を漏らす…、プレスを覆い隠そうとした闇は粉々に切り裂かれた。切り裂かれた闇は光の粒子となって霧散する。
「ふう…。動きはティアを拘束していた漆黒の杭と同じだったな…。魔道具だけど本当に嫌な感じのするものだった」
そう言いつつ紙に魔法陣を描いて唱える。
「
長剣が木箱に収納され部屋は中央にミイラ化した遺体が寝かされているベッドのみの殺風景な空間にもどった。しかし一つだけ異なるのは壁に大きな扉が出現していることだった。
「さてと…、何が隠されているのか…」
『主殿!』
扉に手を掛けようとした瞬間、ティアからの念話が届く。
『ティア?何かあったかい?』
『うむ。現在、街中からいくつもの気配が高速でそちらに向かっている!恐らく黒い魔物達だ』
『やっぱり目立ったかな…』
『なかなかの魔力反応であったからな…。恐らくあと数分で魔物達が到着するぞ!』
『転移持ちはいないってことか…。やっぱり孤児院で黒い魔物が使った転移の魔道具は貴重品だったってことだよね…。よし…、ここは戦闘を避けよう。あいつらにはギリギリまでこっちの情報は隠しておくってことで…。その方があいつらも混乱するだろう。もうすぐしたら窓でも破って外に出る。おれの合図で…』
プレスは脱出の計画をティアへと説明する。それはおよそ計画と呼べない程の荒っぽい内容だった。
「心得た…。だがそれは戦闘を避けていると言えるのか?それに主殿は大丈夫なのか?」
「ああ。上手くやってみせる。ここに人族や亜人がいないことは確実だ。あいつらにはこれ位が相応しいのさ…」
そう信頼する相棒に告げるプレス。
「さて…、何があるかな…」
そう呟くと扉の奥へと足を踏み入れるのだった。
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