第206話 冒険者ギルドへ
「あの街がダリアスヒルか…、あの中心が…、……………丘…?」
「丘というよりは岩山だね…。なんであんなところに岩山があったのかは分かっていないけど、天文台を造るなら森を切り開くより岩山の方が簡単だったとか…、確かそんな感じで伝わっていたような気がするな…」
ティアが美しい金髪を風に靡かせながらそう呟く。ちょっとした峠のようになっている高台の山道を抜けたプレスとティアの眼前に飛び込んできた光景は丘というより巨大な岩山を囲むように造られた街の姿だった。岩山の標高は結構高い。そして二人は歩みを進める。
「主殿…、街に着いたら孤児院へと行くのか?」
「いや…、この感じだと到着は夕方だろうからね。晩飯時に訪ねるのは気が進まないよ。今日は冒険者ギルドに行って街の現状を聞いて宿を紹介してもらおう。出されている依頼も見ておきたいしね」
「主殿の御心のままに!」
太陽が山々の端にかかりオレンジの陽光が岩山と街を染める頃、プレスとティアはダリアスヒルへと到着した。のだが…、
「主殿…?随分と冒険者証の確認に時間が掛かっていると思うのだが…」
「そうだね…。何かあったのかな…?」
大概の街と同様に冒険者証を身分証明のために提出した二人であったが、二人揃って街の門前で待ちぼうけを食らってしまっていた。いやプレスとティアだけではない複数ある街への門前で多くの者達が待たされているのが視界に入ってきた。
「ふむ…」
そうプレスが口の中で呟きながら辺りを見回していると、
「待たせてしまって申し訳ありません」
そんな言葉と共に衛兵が姿を現した。
「C級冒険者のプレストンとE級冒険者のティアですね?身元の確認が終了しました。通って頂いて構いません」
丁寧に対応してくれる衛兵に感謝しつつプレスは疑問をぶつけてみる。
「ありがとうございます。随分と時間が掛かっていたようですが何かあったのですか?」
丁寧に接してくれた衛兵はその問いにバツの悪い表情を浮かべ、小声でプレスに耳打ちする。
「すみません。その問いに答えることは禁止されているんです…。冒険者の方であればギルドに行けば詳細が分かる筈です」
そう言い残してそそくさとその場を後にする衛兵。プレスは衛兵に向かって無言で一礼し、ティアを連れてダリアスヒルの街に入った。
「先ずはギルドだな?主殿…」
「ああ。食事でもと思ったけどあんなことを言われたらね…」
当然、プレスの眷属としてグレイトドラゴンを超越した存在であるティアの耳にも先ほどの衛兵の言葉は届いている。二人は大通りを冒険者ギルド目指して歩みを進める。
「でも、安心した…」
安堵した様子でプレスは息を吐く。
「主殿?」
「あんな感じで丁寧に対応してくれる衛兵がいるってことはこの街の統治がきちんとなされていることだと思うんだ。あそこの衛兵ってダリアスヒルへ入ることに関しての決定権を与えられているから、かつての共同統治時代は横柄な態度をとる者も結構いたのだけどレーヴェ神国の統治はなんとかうまくやっているらしい…。もちろん完全ではないとは思うけれどもね…。それとおれの顔を知らなかったから騒ぎにならなくてよかった…」
「やはり主殿を知っている者もこの街にはいるのだな?」
「この街に来たのは随分と前だからね…。聖印騎士団の団長であるレイノルズって名前は知られているけど顔と一致させられる人は殆どいないと思いたい。でも何人かはいるかもしれないな…。冒険者ギルドのマスターとかね…。ま、マスターに会う予定はないから特に問題はないだろう…」
「人気があるのはいいことではないのか?」
「ま、今はC級冒険者だよ。それにしても…、ちょっと街の雰囲気が…?」
「何か違和感でも?」
「おれが知っていたころよりかは人通りが少ないような気がするんだよね…。まあいい…、冒険者ギルドに行けば何が起こっているのか教えて貰えるだろう…」
そんな会話をしながら大通りを進む二人の前に剣と薬草があしらわれた紋章を掲げる大きな石造りの建物が現れるのだった。
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