第205話 星の街ダリアスヒル
「天文学者?星の街『ダリアスヒル』?」
そう言ってティアは首を傾げる。
「星の動きを観察してそれを様々なものの役に立てようとする研究があるんだ。そんな研究を行う者のことを天文学者っていうんだよ。そんな天文学者の中でも希代の天才と謳われたロマナ=ダリアスが丘の上に天文台を建設した後、その麓に師匠であるダリアスを慕って集まった弟子たちが集落を作ったことがあの街の始まりと言われているんだ。結構前…、数百年以上は前の話だと聞いたような気がするな…、そこから星の街と言われているみたいだよ…」
「ほう…。優秀な人族であったのだな…?」
「有名なのは航行術の発展に寄与したってやつかな…?星座ってやつはもっと昔から知られていたんだけどそれを用いることで方角が分かることを初めて示したそうだ。それに常に北に現れる動かない星があることを発見したのもロマナ=ダリアスだったって聞いてる。それによって人々は夜でも方角を間違えることなく旅ができて、外の大陸との交流が始まったのもこの技術の発展があったからだったかな…」
「人はそうやって方角を知るのか…。我は本能的に分かるのだが…」
「この世界には魔力の流れがあるからね…。最近は魔力に関する理解が深まって、その流れを感じ取ることが出来る者は大体の方角を知ることが出来る。だけどティアも知っていると思うけど魔力の流れは時として乱れることがあるからね。大陸間を結ぶ船なんかの航海士は今でも星を参考にしているって話だ」
「なるほどな…」
見事に煮込まれた鶏肉に旺盛な食欲を見せつつも関しながらティアは頷く。
「そんな関係かダリアスヒルは研究都市のような一面があってね…。結構な教育機関や研究機関がある。これは統治の形が変わってもそれほど変わっていないと思うな。今では天文台があったとされる丘の上には何故かダンジョンが出来ているけどね…。それを目指して集まる冒険者も多い。一応レーヴェ神国内だから冒険者の質も高いと言われているよ。そして大きな孤児院がある」
「孤児院?」
「ああ。流行り病に魔物や盗賊…、街にも強盗や犯罪組織が罷り通る場合もある。生きることは常に命の危険が付きまとう。様々な理由で親を失い孤児になった者が真っ当に成長するのは難しい。レーヴェ神国には殆どいなけどそれでもゼロにできる訳じゃない。学問であれば出自の差は関係ない。冒険者になることも出来るがあれは最後の判断でいい…。犯罪紛いの組織に身を置くこともなく、先ずは学問で身を立てることを目指し、環境の整ったこの街で文官や商人、教師や牧師のような職への道を開いてやりたいとの当時の王族たちの願いで造られた筈だよ」
「なるほどな…」
ティアは感心している。
「街に着いたらその孤児院にも寄るつもりでいたんだ。あそこは教会も兼ねていてね…。レーヴェに行くことになったし司教様には挨拶をと思っていたんだ…」
「教会?」
ティアが怪訝な顔をする。クレティアス教のことを思ったのかもしれない。そう感じたプレスが力一杯否定する。
「ティア!違うぞ!ちがーーーーーう!!クレティアス教と一緒にしないでくれ!!司教様はおれも尊敬する立派な人なんだ!!それに祀ってあるのはあのロクでもない女神じゃない!放浪神マルコだ!!」
「それは珍しい。この大陸で人族や亜人は様々な神を祀っている。その殆どが土着の風習や自然現象などを信仰の対象としたものだが、放浪神マルコは我でも知っている実在したと言われる神ではないか…」
「そう!かつてこの世界を作ったとされる神々に幻滅しこの世界で生きることを決めたとされる伝説の神…、だよ…。だから大丈夫!きっと…、大丈夫…」
「主殿…?何か歯切れが悪いが…」
「い、いや…、そんなことはない…。いずれ全てが明らかになったときティアもきっと分かってくれるさ…」
「何を言っている?」
「はは…、ははははははははは…」
「?」
若干の冷や汗をかきながら乾いた笑いを放つプレスをそれ以上は追及しないティアは不思議そうに見つめるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます