第六章 旅する冒険者と星の街ダリアスヒル
第204話 美味しい料理と次の街
『行ったぞ…。主殿!』
「任せてくれ!」
ティアの念話に答えながらプレスは神速をもって高速で移動する魔物の足元へと飛び込んだ。同時にごく普通の長剣を振るう。
ギャッ!
目にも止まらぬ程の二つの斬撃がアイアンバードの両脚を斬り飛ばす。アイアンバードは飛べない鳥の魔物だがその屈強な脚力で地上を高速移動し、その蹴りの威力はミスリル装甲すら貫くといわれる体長四メトル程の巨大な魔物である。この魔物の外皮はかなり固い。プレスの斬撃はアイアンバードを解体する際における脚の解体において最初に刃を当てる部分として知られる最も外皮が薄い個所を的確に捉えていた。
凄まじい轟音と共に木々を巻き込んで横転するアイアンバード。素早く近づいたプレスは外皮をものともしない斬撃で首を落とす。
「ふぅ…」
そう漏らしながら長剣を納めるプレス。
「あいかわらず流石の太刀筋だ」
追い立て役をしていたティアも感服しているようだ。
ここは小国家群と呼ばれる広大な地方。その北東部の森の中。
カシーラスの東側、大陸南東部に位置するこの広大な地域に五年前までは五つの国があった。五つの国はそれぞれに栄え発展を遂げたがレーヴェ神国の豊富な資源やダンジョンを狙い五ヵ国で同盟を組み宣戦を布告した。その結果、最終的には五つの国は滅んだ。現在、ここに国は無く、各街がそれぞれで自治を敷いている状態である。
季節は晩秋。空の色は既に初冬のそれを思わせる。そんな中レーヴェ神国へと歩みを進めていたプレスとティアは最後の秋の味覚を味わうことを決めアイアンバードを狩ることにしたのだった。血抜きは無しで手早く解体を終わらせる。
「以前、狩ったときは塩とたまたま見つけたハーブしかなかったけど今回はしっかり調味料も
「あ、主殿…」
プレスの腕に絡みつくティアが縋るような目で見上げてくる。
「あ、あの…、白狼の街で食したあの鳥料理を食べたいのだが…」
「ああ、鶏肉のマレンゴ風ね…。
笑みを浮かべたプレスはティアの頭を撫でる。嬉しそうなティアの目が輝く。
「それでこそ主殿だ!我は一生ついてゆくぞ!」
「美味しい料理でドラゴンを釣るって感じに…」
「ふふふふふ…。そう!我は釣られたドラゴンなのだ!ちゃんと懐くから美味しい料理を所望するのだ!」
「わかったわかった。準備をしようか…。火を起こしてくれるかな?」
ティアとじゃれ合いながらもマジックボックスから必要な材料と調理器具を取り出すプレス。
小麦粉、ネギ、ニンニク、バター、塩、胡椒、ドライトマトに白
「こ、この香りは…」
ティアが放心し、辺りにはえもいわれぬ素晴らしい薫りが立ち込める。簡易のテーブルには赤
「アイアンバードのマレンゴ風。完成だ!」
「主殿、見事だ!」
皿に盛り付けグラスに
「それでは…」
「うむ…」
「「頂きます!」」
仲良く食事を楽しむ二人であった。
「美味い!美味すぎる!やはり人の姿をとってとよかった。料理というものがこんなに素晴らしいと知っていたらもっと昔から人族に紛れて暮らしていたものを…」
そんなことを言いながら旺盛な食欲を見せるティア。
「それにしても主殿?この料理…。文句なしに美味しいが、このマレンゴという名前の由来は何なのだ?」
「確か…、大昔にこの大陸で起こったマレンゴの戦いってやつから取ってきているとかいないとか…。だったかな…」
そんなとりとめもない話から話題は次の街の話となる。
「主殿、レーヴェ神国まではあとどのくらいかかるのだろう?」
「えっと、もう少しで次の街に着くけど、そこが飛び地の扱いではあるのだけれど一応レーヴェ神国ってことになるのかな…。神国の王都まではさらに一週間ってところだね」
「飛び地?」
「ああ。地理的に分離されている領土って意味だよ。以前はここにあった五つの国と共同統治ってことになっていたけど、その国々が無くなって今はレーヴェ神国のみが統治ってことになっていたはずだ…」
「どういう街なのだ?」
「あそこは偉大な天文学者を輩出した街でね…。こう呼ばれている。星の街『ダリアスヒル』ってね…」
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