第99話 銀の鎖
「ま、まだだ!我らの崇高なる目的のため、この街は
喚き散らしながらニコライが唱えた詠唱により多数の電撃がプレスに襲いかかる。
しかしどれ一つとしてプレスには届かない。プレスが無詠唱で張った魔力の結界に尽く遮られる。
「ふむ…。司祭だけあってなかなかの魔導士っぷりだけど、まあ、こんなものだよね…。生け捕りにするから大人しくしてくれないかな?」
全く意に介さないプレスを見てニコライは改めて青ざめる。
「き、貴様は一体何者だ?なぜこの結界内で魔法が使える?」
「何者って…。ただのC級の冒険者さ。お前達だって調べたんだろう?魔法は単にお前たちが張った結界が弱すぎておれの魔力行使を止められないだけだよ?」
「ふざけるな!!C級冒険者にそんなことができてたまるか!!」
「どう受け取ってもらっても構わない。お前たちはここまでってことに変わりはないからね」
「く…」
プレスの言葉に歯噛みするニコライは首下から何かを取り出す。それは燻んだ銀色のペンダントに見えた。それを目にした途端、プレスは表情を変える。
「それはまさか…?」
プレスの呟きにニヤリと表情を歪めたニコライはペンダントトップを握り締め、魔力を注ぐ。
「我が命を我らが信じる
「やはり慟哭の銀鎖か!司祭として下賜されたな?よせ!!人としての形を失うぞ!!」
プレスの声に耳を貸すことなくニコライの言葉は続く。
「願わくばこの街の愚かなる背信者どもに我が命をもって…」
「ちっ!!」
プレスは神速でニコライに斬りかかる。狙いはペンダントトップ。握っている手ごと斬り落とそうと長剣を振るった。
がきんっ!!
強烈な金属音と共に長剣が刀身から砕ける。
「くっ!」
突如ニコライの体から突風が巻き起こりプレスは弾き飛ばされた。見ればニコライの顔や体からボロボロと皮膚が落ち始める。その下にはどす黒い肉塊が覗き、張り付いた血管がドクドクと脈を打つのが見てとれた。
「ふはははは!貴様いくら凄腕の冒険者であってもこの神の御業の前では無力!潔く神の前に跪くのだ!!」
狂ったように笑いこの世のものではない変容を遂げつつあるニコライをプレスは静かに見つめながら背中の木箱を下ろす。その瞳はどこか悲しみと哀れみを帯びていた。
「神の御業?笑わせないでくれ…。そんなものは神でもなんでもない。命を触媒に持ち主を魔獣に近い存在へと変化させるただの魔道具だ…。そしてその変化は不可逆…二度と人には戻れない…。まだお前たちはそんなことをしていたのか…」
プレスは懐から紙を取り出す。そして右手の人差し指と中指の腹を噛み、流れる血で魔法陣を描く。完成した魔法陣を箱の側面に押し当てた。
「いつかお前たちの野望は潰える!だが今はお前だ!悪いがおれはお前を滅ぼす!
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