第三章 旅する冒険者と国境の街ロンドルギア

第71話 次の街

 ここはエルニサエル公国から西のガーランド帝国へと続く街道。よく晴れたこの日は多くの人々が街道を行き来している。今日の日差しは随分と強い。本格的な夏まであと少しと言ったところだろう。


 そこに旅をする二人組の姿を見つけることができる。


 一人は冒険者らしい服装とマントの男性。腰には長剣を携えている。細身で一.八メトルほどの背丈。整った顔立ちとこの辺りには珍しい黒い髪と瞳。そして目を引く背負っている大きな木箱。プレスことC級冒険者のプレストンである。


 もう一人は魔導士風のローブを纏った女性。背丈は一.七メトル程。金髪に金の瞳を湛えたそれは絶世の傾城のと呼ばれるほどの美女であり、その肢体は細くしなやかながらも女性の魅力を最大限に伝える量感を湛えている。プレストンと従魔のティアであった。ティアはグレイトドラゴンであったのだが神々を滅するものロード・オブ・ラグナロクの従魔となることでグレイトドラゴンすら超越する高位の何かへと存在を変えていた。彼女にとってはドラゴンの姿が真の姿と言えるのだがプレスの助言で今は人の姿となっている。ドラゴンを連れていると目立つとのことで今の姿になったティアであるが、結局その美しさは目を惹く。


「主殿…。これは目立つというのではないか?」


 そうこぼすティアにプレスは笑顔で答える。


「ま、しょうがないよ。ティアが一番楽な姿じゃないとおれも嫌だしね…」


「その気遣いには感謝する…」


 今のティアは人よりもはるかに高位の存在である。どのような姿にもなることができたが一番楽な姿がこの絶世の傾城のと呼ばれるほどの姿であった。プレスもそれは仕方ないとしてくれたのでこの姿で歩くのだが結構目立つ。そんなやり取りがあった後、今は魔導士のフードを被って歩いている。


 あのダンジョンから転送されて後、プレスはティアに西へ行くことを提案した。


「西へ行けばガーランド帝国との国境を担う大河オーティスにぶつかる筈だ。エルニサエル公国とガーランド帝国は一応の同盟を結んでいる。国境の街ロンドルギアでティアの冒険者登録をしよう。そして大河オーティスを下って海を目指そうと思う」


「主殿?して目的地は?」


「これから夏になる。大河オーティス下流の東側。海にも面した港湾国家カシーラスに行こうと思うんだ」


「港湾国家?」


「ああ。西の国境に大河オーティス、東の国境に大河ミネルバを持ち南が海に面している国だよ。二つの大河と海を要し、物流によって莫大な富を生みだす商業国家。とても大きく発展している豊かな国さ。夏は美味い食べ物も多いし大陸でも難関として知られているダンジョンもあって冒険者にとっても住みよい街が造られている」


「良き国らしいな。それが主殿の旅の目的に適うと…?」


「ああ。おれの目的は神殿を探すことと静かな旅で世界を楽しむことだからね。滞在する街はまだ決めていないけど今年の夏は港湾国家カシーラスで過ごすことにしようと思う。どうかな?ティア?」


「美味い食べ物は我も興味がある。問題ないぞ!主殿!」


 そして二人は船での移動手段を手に入れる為、国境の街ロンドルギアを目指すのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る