一方その頃…

第67話 闇に蠢く2

 そこは漆黒の空間…。


 周囲は完全な闇に覆われている。この世界のどこか…。最早、人も亜人も動植物も既に生きることを諦めた場所…。


「報告します!」


 皆が一堂に会する場所に震えた声が響く。下の者が報告に来たのだ。


「騒がしいぞ!我が君の御前である!控えぬか!!」


 厳しい声が飛ぶ。通常この者はこの部屋には入ることを許されていない。下手をすれば命を失う。


「緊急の用件です!どうしてもお伝えしなければ…」


「くどい!!」


 さらなる叱責から彼の者を消し去ろうと一人が魔力弾を飛ばそうとしたその時、


「待て…」


 広間の奥の闇から声が聞こえてくる。いやこの空間に会している一同の頭に直接響いたという方が正しいだろう。その瞬間に集まっていた者たちが体を凍り付かせる。


「報告とやらを聞かせてみよ…」


 声を聴いた報告に来た者は全身を汗に濡らしならやっとのことで口を開く。


「エルニサエル公国ハプスクラインのダンジョンで異常発生とのことです。ドラゴンの姿はどこにもなく最下層に強力な結界が張られ侵入不可能であると…」


 その報告を聞きざわつく一同。


「バカな…」


「何が起こっているのだ…」


「ファウムはどうしたのだ?あの街のことは全てあの者に一任していた。グレイトドラゴンを捕え、無限増殖機構を持つリビングアーマー起動まであと少しであったと聞いていたが?」


「そ、それが…あ、ああ、あ」


 報告者が口を開くその瞬間、空間の雰囲気が変わった。全員が存在を握りつぶされたかのようなプレッシャーを感じる。すると報告に来た者の躰が無残にも砕け散った。彼の力ではこの空間に存在することが許されなかったのだろう。


「確かに…彼の地ハプスクラインに大きな力の揺らぎを感じる…。ファウムの反応が弱くなったとき違和感があったが…。討伐されたのであろうな…」


 その言葉は全ての闇を凝縮したかのような迫力があり恐怖を全員に与えた。


「わ、我が君…。我らはその力の揺らぎを感じませんでした…。これは…?そしてハプスクラインの兵器は…?」


 忠誠心と微かな勇気を振り絞って一同の中でも力のある者が問う。


「力は通常の魔力ではない。何らかの力…。神の力…?ファウムが神獣の怒りを買ったか…。フィルゼガノンとともに造ったあの杭は…怒りを買う可能性はある。兵器は…最早…手に入るまい…。ふむ…」


 凄まじいプレッシャーと共に呟きが彼らの頭に響く。


「聞け!!!」


 響いた声に全員が跪く。


「我らが悲願を目指すことに何ら変わりはない!しかし何者かが我らの邪魔をしているというなら滅ぼすまで!何者が関わっているか秘かに調べよ。聖教国は?」


「は!順調との報告を受けています!」


「ならば我らの成すことに変わりはない!!各自任務を続行せよ!!」


「「「我が君のお心のままに!!!」」」


 全員がその場から消える。そこには闇だけが残っていた…。

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